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【十二の星の華】ヒラニプラ南部戦記(第2回)

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【十二の星の華】ヒラニプラ南部戦記(第2回)
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白百合の園

 これまで、戦いに参加せず、またその旅のルートもあって戦いに巻き込まれることもなく、南部を転々歩き続けることになっていた七瀬 歩(ななせ・あゆむ)
 ときどき、この旅そのものが夢のように感じることもあった。得体の知れない種族や生きものたちの姿をときおり、見かけながら……
 そんな七瀬にも、南部諸国と呼ばれるところに近付いてようやく転機が訪れることになる。
 そこでは、戦争で強行軍してきた者等から略奪を受けた村や、それに、付近を流れる南部地方の最も大きな河東河上流の方から戦乱を避けてやってきたという難民たち。傷付き、飢えた人々、その中には、子どもの姿もある。七瀬はそんな子どもを見て、ふと大切なパートナー七瀬 巡(ななせ・めぐる)のことを思い出す。
 東河からは、今までに七瀬が出会ったような名もない種族や生きものたちも、居場所をなくして流れてきたりしていた。
「大丈夫ですか? 今、手当てしますね」
 七瀬は更に、上流にあたる東の谷での戦いに思いがけず同じ百合園のロザリンド・セリナの名前を聞くことになる。
 こうして徐々に、七瀬の旅は現実味を帯びてきた。
 各地で起きている戦争、そしてこうやって行き場をなくしたり、傷付いた人たちがいる。
 七瀬は、この状況で各地を行き来している行商たちにも会い、声をかけることとなる。
「日用品?
 うむぅ、こんなときにねえ。武器や医療品なら売り歩いているんだけど……まあ、もっとも日用品に使える物もなくはないだろうが」
 七瀬は、少しくらい高くてもそういった物を買い集め、戦争に困っている人たちがここへ来れば、当面は大丈夫……そういう場所を作るんだ、と思って行動を始めた。
 七瀬は自らが持っていた宝石や価値のある物を売り払いお金に換えていく。食費も切り詰めていかなきゃ……
 東の谷から、南部諸国に入ってくる入り口付近の河辺の丘に、家をなくした人たちや、流れてきた生きものたちが少しずつ集まるようになる。最初はキャンプみたいなものに過ぎなかったが……
 七瀬は日用品を買い集め、その商人たちにもしお願いできるようなら、困っている人たちを見かけたらこの活動を伝えてほしいと、お願いした。それからそのときには、"白百合の園"という名前を……と。そうすれば、同じ百合園の生徒なら気付いてくれるだろうし、離れていても、彼女たちなら同じように誰かを助けるために行動しているだろうから、これを聞くことで支え合うことになれば……と思った。
 復興を支援する地域の者たちもここを訪れるようになる。
 戦争に困っている人たちは、ここへ……そして、来たいけど大切な人が軍隊にいて来れないっていう人は手紙をください。そう七瀬は呼びかけを広めていく。今はまだ力がなくて無理だけど、その人があなたの元へ帰れるよう、働きかけていきたいから、と。