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男子生徒全滅!?

リアクション公開中!

男子生徒全滅!?
男子生徒全滅!? 男子生徒全滅!?

リアクション

 サーバー室での決着がついた頃、池の周囲では河童を倒そうとする光と加夜が率いる生徒達と、美央と唯乃の率いる防衛組が「胸の有る無し」の議論の末、ついに衝突状態に陥っていた。
 唯乃が、遠距離から放たれる加夜の魔法攻撃を交わしながら赤羽を探す。
「どこ行ったのよ? こんな時に!」

 一方、見張り小屋の中、ウィングは芦原郁乃と蒼天の書マビノギオンから、河童の皿の話を聞いていた。
 郁乃の話を最初は疑問に思いながら聞いていたウィングであったが、この少女の言う事は信じるに値するという奇妙な確信を次第に得ていた。
「……それで? 続けてください?」
 ウィングの言葉に、本郷の淹れたお茶で喉を潤した郁乃が続ける。
「真夜中になってひと気が無くなってやっと河童が現れたの。河童はかなり警戒してるみたいで、武装していないことが分かるよう学校指定水着姿でゆっくり河童のほうに近づき「話がしたいの」って声をかけたの」
「それは、河童に言葉が伝わったという事でしょうか?」
 郁乃が首を振る。
「私は違うと思う。言葉じゃなくて……気持ちかな?」
「気持ち、ですか?」
「そう。河童は一瞬逃げるそぶりも見せたんだけど、武装してないのを見て安心したのかな。一対一で周囲に人がいなければしてもいいって。だからゆっくりお話することができたのよ。河童も喜んでくれて、お前とは友人になろう 好きだって言ってくれたんだよ」
ウィングが郁乃の目を見て口を開く。
「そこで、告げられたんですね?」 
「うん。あの皿がないと彼女に振られるんだってさ。河童のモテアイテムはあの皿なんだって。それで毎日磨いていたら、ある日人間が来て……」
「なるほど……ですがおかしいですね? 河童はその気になれば人の腕を簡単に引きちぎるくらいの怪力を持っていると聞きます」
「あんまりピカピカに磨いたものだから自慢したくて、人間に見せたんだって……」
「……それは言いにくい理由ですね」

 二人が話すその横では先程「ちょっと失礼」と言い小屋へと入ってきた美央が、何やら不気味なマスクやマントを独り言を呟きながら装備していた。
「私はあなたを許しません……宇宙の塵に変えてくれます」
 やがてその呟きは、不気味なマスクを被った瞬間から、「コー、ホー……」という呼吸音に変わっていき、用意を整えた美央は静かに小屋を去って行った。
 だが、美央を止める者は小屋にはいなかった。もう一人の出撃を止めることに忙しかったためである。
 その舞台は作戦会議室であった。
「みんなー、喧嘩を止めてー!! 私のために争わないでぇぇ!!」
 そう叫ぶのは愛美であり、今にも屋外へ飛び出して行きそうな彼女を
ファイリアと未沙が必死になって止めていた。
「今出ていくのは絶対無しだから!!」

愛美ちゃん! 落ち着こう、ね? ね?」
 どうやら愛美の中では、戦闘に悲劇のヒロイン役として参加を試みて、運命の人に助けてもらおうという魂胆があるみたいなのだ。
 その事をいち早く察知し、愛美を止めるよう二人に指示を出したのは本郷であった。
「離して! 私は学園のジャンヌダルクになるの!!」
「マナ、落ち着いて! その人バッドエンドだったじゃない!?」
 本郷は愛美の双眼鏡を取り、蒼空学園の校舎を見ていたが、突然、
「愛美様!!」
と、叫ぶ。
 愛美が本郷の方を振り向く。
「何?」
「今、蒼空学園の校舎に、愛美様の運命の人が!!」
 ちょっと声色を変えて叫んだ本郷に反応する愛美。
「え!? 見せて!!」
 バッと双眼鏡を覗く愛美。
「見えないよ?」
「いえ、確かにアレは運命の人でございました。ですから……探しに行かれてはいかがでしょうか?」
「……うん、そうする! ここは美央さん達に任せましょう」
 そう言って愛美が駆けていき、未沙が後に続いて出て行く。
「ふぅ……」
と、大きく息をつく本郷。
 ファイリアがティーカップに注いだお茶を出す。
「ありがとうございます」
「こちらこそ、愛美ちゃんが争いに飛び出して行かなくて、本当に良かった」
 和やかに笑う二人であったが、その窓の外ではオカマが竜巻のように上空へと舞い上げられていた。

「ストップ! 美央ちゃん、ストップだって!!」
 そう叫ぶのは唯乃であり、その声は黒いマスクとマント姿で赤いライトブレードを振るうミオベイダーと化した美央に向けられていた。
 美央が一太刀振るう度に、十数人単位で襲い来るオカマが空中へと打ち上げられていく。
 第一号は南臣とオットーの率いたチア集団であった。
 栄えある打ち上げ一号に選ばれた理由は諸説あるが、胸のラインを強調する衣装が美央の琴線に触れたとの説が有力である。
 先程まで上空で高見の見物を決め込んでいたミハエルも、今は下から打ち上げられてくるオカマ達を回避することで必死だ。
「コー、シュコー」
「でやあアァァァっ!!」
 空中からその美央に飛びかかったのは光である。
「ボクが相手だ!」
「コー、ホー!」
 光と美央の剣戟が激しく火花を散らす。
「頑張れ! 腕切り落とされるなよ!!」
と、無責任なコメントが飛ぶ。
 先程まで水面に頭を出していた河童も今はすっかり引っ込んでしまっていた。

「……何やってるの?」
 殆どの魔力を使い果たしたため、ミントを連れて傍観者になっていた加夜が振り向くと、小型飛空艇に乗った絢乃とエヴァルトがいる。
「荒れているようだぜ?」
「そんな事、一目瞭然よ。ホラ、エヴァルトさん、その皿をさっさと返してきなさいよ」
「茅薙さんが行かないのか?」
「私、オバケとか苦手なのよね。朱宮さん達は黒服達の後片付けで忙しいみたいだし……」
「オバケじゃなく河童だろう? まぁ、わかったよ」
 そう言うとエヴァルトは河童の皿を持ち、ゆっくりと歩き出す。
 エヴァルトの持つ皿の輝きに、争っていた生徒達が思わず道を作る。
 古代、モーゼが海を割ったように、人の波が池までの一本道を作り出していく。
 池の前まで歩いてきたエヴァルトの前に、突如として現れる河童。
「おい! 俺は取り返してきたのであって、奪った奴とは違うからな!」
 オカマにならにようエヴァルトは細心の注意を払いつつ近づいていく。
 河童はつぶらな瞳で皿を見ている。
と、水面に気泡がいくつもたち、次々と河童が顔を出し始める。
「うおっ!?」
 思わず尻込みするエヴァルトであったが、その前に学校指定水着姿の郁乃が現れる。
「聞いて、この人はお皿を返しに来てくれたの! 悪い人じゃないのよ!」
 郁乃の呼びかけに、頭に皿のない河童がスゥと池から上がってくる。
 郁乃に導かれるようにエヴァルトが河童に皿を渡す。
 河童は郁乃とエヴァルトの顔を何度か見比べた後、皿を受け取り、頭に乗せる。
 水面近くでその様子を見ていた他の河童達が、一斉に水面をたたき出す。
「何だ!? どうしたんだ?」
「喜んでいるのよ」
 やがて、皿を受け取った河童は皆にペコリと頭を下げ、勢い良く水の中へ飛び込んでいった。それに呼応するかのように、他の河童達も水中へと次々と潜っていく。
 争いをやめ、呆然とその様子を見つめていた生徒達から歓声があがる。
「終わったのか……」
「見ろよ! 雨が止んだぜ!」
「やったぁぁー!」

 久しぶりに雨がやみ、皆がホッとしたのもつかの間……。その数十秒後からは河童の術が解けた蒼空学園では、校舎のあちこちで男子生徒の野太い悲鳴と、女子生徒の悲鳴が響きわたることになる。
 最も、神楽坂翡翠と山南桂の両名に関しては、「これはこれで良い」というコアなファンを獲得するに至ったそうであるが、またそれは別のお話である。


―エピローグ―

その後、オカマ化した男子生徒達は皆元に戻り、蒼空学園にも再び平和な日々が訪れた。 
またアパレル系の株を大量購入していた御神楽環菜は、売り逃げでかなりの利益を得、影野陽太の計らいと助言により運動系の部活への経費を少し上乗せすることを決めたようである。
尚、黒服事件に関わった生徒達には、罰として校庭の池掃除が課せられた。他にも、『ニューハーフチア軍団』として、応援活動するという罰も生徒からは出されたが、「学園の沽券に関わるので却下」という校長の一言で一蹴されたそうである。 
尚、愛美達の見張り小屋はその後、オープンなログハウス風に改装され、池の回りでデートを楽しむ恋人たちや友人同士の語らいの場所になっているらしい。……が、『河童ハウス』と名付けられたことを、愛美は今でも「かわいくない!」と、断固抗議している。 

担当マスターより

▼担当マスター

深池豪

▼マスターコメント

 こんにちわ、深池豪(みいけ ごう)と申します。
 今回のお話はいかがだったでしょうか? 面白いアクションがあると、ついついみんな採用したくなり苦悩してしまいます。アクション不採用の方々、本当にごめんなさい。 
 さて、今回のお話は、校庭の池に住み着いた河童の皿が奪われ、背後に蠢く黒服の生徒達を追いつつ、河童を守りつつ、オカマになりつつ、小屋で愛美達と番をしつつ、皿を取り戻すという様々な要素が盛り込まれ、同時進行していくと言う少しややこしい本筋でございましたが、お楽しみ頂けたでしょうか?
 私にとってはコメディというジャンルは初めてなので、とにかく面白く書こうと努力しました。
 ですので、リアクションを読んでいただいてクスリとでも笑って頂ける事が、今回では何よりの成功だなぁと思います。
 今後もコメディでいくつかマスタリングしたいなぁと思っておりますので「お、こいつオモロイやんけ」とチョピっとでも思って頂けた方は、次回もご一緒して下さったら嬉しいです。
 また、予想以上に女性キャラクターの参加が多かったことに驚きました。元来、オカマキャラは女性に人気があるらしいのですが、その影響なのでしょうか? 
 なにわともあれ、今回も私個人としては楽しくリアクションを書くことができました。
 皆さんにも少しでも楽しんでいただけたら幸いです。

 今回の称号はなるたけ多くの方に付けさせて頂きました。
 付いてないよ、と言う方は、私がいいネーミングが浮かばなかっただけです。ごめんなさい! 
 それでは、またお会いできる時を楽しみにしております。