リアクション
* 王子ら一行がいよいよオークスバレーへと入っていき、南部諸国にはもと反教導団派の諸侯らそれぞれと、独立三国が残っていることになる。 教導団は無論、これをそのまま置いておくことには懸念が残る。 しかしここには皇甫 伽羅(こうほ・きゃら)が残りパートナーらと引き続き活動を展開する。 南部諸国での教導団イメージアップ・キャンペーンである。 皇甫 嵩(こうほ・すう)がまず、伽羅を補佐して諸国の上流階級(諸侯に次ぐ貴族)・中産階級(兵士・商人や地主)・貧困層(小作人・日雇い労働者にあたる者等)ごとに、教導団/ひらにぷらみなみおみ120万石のどちらにどれだけの支持が集まっているかの状況を整理し、キャンペーンの内容によりきめ細かな修正を加えていった。 うんちょう タン(うんちょう・たん)は皇甫崇の情報収集と分析の結果に従い、また吟遊詩人として諸国を回った。また、前回に加えて、いずれ誕生する南部を統べる国家への期待感や、教導団からの技術提供等の経済振興によって市民生活が向上し豊かになっていくという将来像を、高らかに謳いあげた。 皇甫崇はこの調査のなかで幾つかのことを見つけ出していく。――諸侯らの下にある貴族等は諸侯が教導団に傾くとそれに従った。治安の悪い国によっては諸侯に反感を持つ商人や下層の民がみなみおみ120万石を支持した。また、一部の兵や、食い詰め・ならず者の類が、兵を集めているという噂を聞いてみなみおみのもとへ流れていっているという。 「むう。何と。伽羅に……知らせねば」 皇甫伽羅(こうほ・きゃら)は独立三国への働きかけを強めていた。 その時々の都合でコロコロと所属学校を変えている南臣は、各学校や組織とのコネと呼べるものを持っていない、という点を伽羅は指摘。長期間に渡ってパートナーシップを築ける相手ではない。関係を見直すべきだ、として伽羅は工作を開始した。 「南臣か」「どう思う?」「あたしはあいつは好きだけどね……はたしてそういうやつかしら?」 独立三国にしてみれば彼らの南部の比較的外野で生きてきた性質から、南臣の反骨的な面に惹かれる部分があった。そんな彼らにとっては他の諸侯のように利益よりも義憤を重んじるという部分が強かったのかもしれない。 「安定した関係をお望みなら、我々教導団と結ぶべきですよぉ。 教導団は、たとえ皆様方との交渉担当者が他校に移ったとしても、皆様方とのお約束した内容は組織として引き継ぎ、守り続けますからぁ」 なので、伽羅の頭脳による交渉が多少いつものように運ばなかった面もあった。 そして……その当の男、 「教導団から俺様に挨拶こねえのは、用済みだから?」南臣 光一郎(みなみおみ・こういちろう)。「なら、乱世の華とばかりに!」豪快に笑った。 南臣は、独立三国を率いて川を遡上したのである。 皇甫崇は伽羅にみなみおみ120万石が兵を集めていると伝令を送ってきたが、こういったならず者らも南臣の反乱軍に加わって続いた。 オットー・ハーマン(おっとー・はーまん)は治安維持と補給を名目に南部に残り、反教導派800を掌握にかかったが、こちらは伽羅たちの存在によって事が思い通りに運ばず、南臣の交戦のタイミングに呼応することができなかった。 オットーは、青 ノニ・十八号(せい・のにじゅうはちごう)がその無害そうな外見をフル活用し独立三国や反教導団派諸侯と仲良くし、その実彼らを出入りし南部王家がまとまるよう仕向けていたのを見つけ出すと、せめてもと十八号に挑みかかり、刺し違えた。 「バチバチ、バチバチ(十八号は、そんな裏の狙いはつゆ知らず)バチバチ、バチバチ(一つにまとまることの喜びの感情を下から高め)バチバチ、バチバチ(よと言われただけなんですがあああー)バチバチ、バチバチ……」 「お、おうう……光一郎。あとは任せた……存分に、華と散ってくれい。おう、おううぅぅぅ」 バチバチ……ビカッ。チュドーン |
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