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【サルヴィン川花火大会】東西シャンバラ花火戦争!?

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【サルヴィン川花火大会】東西シャンバラ花火戦争!?
【サルヴィン川花火大会】東西シャンバラ花火戦争!? 【サルヴィン川花火大会】東西シャンバラ花火戦争!?

リアクション

 最後にまるで大爆発のような花火の奔流が起きた後、会場は一瞬静まり返った。

 『ただいま! サルヴィン川ロケット花火戦争終了いたしました!』

 突然のそのアナウンスに呆然と辺りを見回すもの、パートナーと抱き合って喜ぶもの、最後の爆発で手を離してしまったものは残念がり、無事なものは力尽きたものに肩を貸す。
 『これより! 生き延びた方々を称え、表彰いたします! この会場にいらっしゃるみなさんが、このカップル達の永遠の証人となるでしょう! もう手を離してもかまいませんよ』
 最後まで生き残ったカップルは、おそらく会場の皆の予想よりも多くいた。
 『最後の一組のみ』とはレギュレーションにはない。
 あちこちから拍手がぱらぱらと上がり、次第にその音が大きく高まっていく。

 ルース・メルヴィン(るーす・めるう゛ぃん)ナナ・マキャフリー(なな・まきゃふりー)
 遠野 歌菜(とおの・かな)月崎 羽純(つきざき・はすみ)
 椎堂 紗月(しどう・さつき)鬼崎 朔(きざき・さく)
 芦原 郁乃(あはら・いくの)秋月 桃花(あきづき・とうか)

 この4組が、花火のカラが散らばる中洲の中心、その場でやぐらが組まれ、対岸やあちこちから視線を受ける中で表彰された。
「ぃやったぁ!」
 紗月が朔に抱きついて喜びを示すが、浴衣が本格的に崩れそうになって抱き返せないし、人の視線に晒されすぎていた。
「ま…まって…」
「…横から申し訳ありません」
 郁乃がそれに助け舟を出し、桃花は彼女の手を引いてやぐらの下に下り、歌菜とナナの簡単な人垣をつくって浴衣を直す。
「ありがとう、ございます…」
「彼女を恥ずかしい目にあわせちゃー、恋人がすたるなあ」
 紗月はルースと羽純のつっこみやジト目にさらされてちょっと縮こまる。
「うっ…朔、悪かった…」

 郁乃はインタビューをうけ、高々と叫んだ。
「わたしは倒れません! だって桃花が好きだから!」
 あは、昔のドラマみたい? と笑ってウケをとる。
「桃花は誓います 100年経っても今と変わらず愛しています」
 桃花は静かにそう返し、二人は手をつないで会場に示した。

 紗月はまたも朔に抱きついた。
「ずーっと一緒にいようなっ!」
「あ、ああ!」
 そのまま朔を抱き上げてぐるぐると回る。微笑ましさに拍手が起きるのだが…
「ああっ、また浴衣崩れちゃうよ!」
 周りからよってたかって静止されてしまうのだった。

 歌菜もインタビューをうけ、言いたいことがあったが、照れくさくて中々言うことができない。
「…羽純くん…あ、あのね…!」
 その時突然彼女に向けられたマイクを奪い、羽純は声を発した。
「俺は歌菜が好きだ! 歌菜は?」
「は、はいっ! 私も好き!」
 まさかの公開逆告白に歌菜は驚き、会場は沸いた。

「俺らは、互いに一緒にいるためには、どんな手段も選ばないのです」
「そうなのです」
 そういうルースの服はさりげなくあちことが焦げ、ナナはまったくの無傷だ。しかし。
「ナナ!」
「ルースさん!」
 がっしりと手を握り合い、見つめ合って幸せそうなふたりは、それでいいのだろう。


「ケッ、大バカしやがってよう」
 大地にアセトンを売りつけたレポートは、ティエリーティアの手当てをすると、さっさと屋台を冷やかしに戻っていった。
 ちなみにアセトンをいくらで売りつけたのか、どちらも口を噤んでおり、現在の所は不明だ。
 接着剤ではりつけていた手は、皮がめくれて痛々しい有様になっていた。
 包帯をぐるぐると巻いてもらってティエリーティアはしょんぼりとうつむく。
「ごめんなさい、大地さんの手、痛かったですよね…」
「いえ、オレは頑丈ですから、ティエルさんのほうが…」
 結局足を引っ張ってしまった、動けなくなった自分をこれ以上危ない目にあわせないために棄権してしまったのだ。
 すっころんだ、巻き込んだ、おもいっきりほかの人にも迷惑をかけた、しかも。
―おうちに帰りたい、なんてわめいちゃった、はずかしい…
 実はあとからこの花火イベントのうわさの真相を知ったティリーティアは、それでも自分のためにクリアをあきらめた大地にすまない気持ちだった。
 しょんぼりするティエルを励ますように、大地は胸を張る。
「ティエルさんの安全の方が大事ですから!」
 ごつごつした男の手より、彼女の繊細な白魚のような手のほうが、明らかにダメージが大きい。この様子ではスプーンも持てないだろう。幸い左利きだから普段の生活に支障はないのが幸いだ。
「それより、オレはもうちょっとゆっくり、…貴方とデート、したいです」
 ティエルはうなずき、二人は屋台を冷やかしに行った。
 しかし片手しか使えずに、屋台の料理を手に持っての食事はできず、結局は食べさせてもらうことになるのだ。

 パビェーダは菫とともに線香花火を周りの人に配っている。
「みんなでやろうよ」
 受け取った人々は川岸に集まり、水面に火球を映したり、花火の長さを競っている。

「残念だったな」
「ああ、もう少しだったのに」
 ルナティエールとセディは、川べりで線香花火を眺めながら、二人で息をついていた。
 せっかく終盤まで生き延びることができたのに、最後の大爆発で、二人は手を離してしまった。
 だがセディとしては後悔はない、彼女を庇った上でのことなのだ。
「もう、あの約束は無効になってしまったか?」
「ルナ…」
「俺は、少し怖がっていたのかもしれない。区切りなんてものは、自分から乗り越えるものなんだ」
 ルナティエールはセディの手をとった、その手には自分を庇ったときの傷があり、その目はどんなときも自分を見つめていた。
「イベントがどうのとかは関係ない、俺はお前の問いに、イエスと言おう」
 女性のほうにばかり言わせているのは男が廃る、セディははっきりと答えた。
「ああ、幸せにする、結婚してくれ」


 『会場の皆様、今ひととき手を止めて、頭上をご覧下さい』
 その時両岸から大輪の打ち上げ花火が上がった。腹の底を震わせ、空を飾る大玉は迫力満点の一言につきる。
「わあ、綺麗…」
「すごいなあ!」
 ほぼ頭上に光が広がるのだ。圧巻である。
 両岸からはその華を競うように、次々と花火が打ち出される、大玉と思えば枝垂れ柳のような光が振り、ヤシの葉のように光の塊が落ちるものもあれば、千輪といって小さな光が大量にはじけるような、目にも楽しい打ち上げ花火が次々と上がる。
 花火を見上げるその表情や、心躍らせる様、その楽しみに東西の区別はない。
 いつか本当に争いあうことがあっても、最後には武器ではなく、互いに花を差し出しあえるように。

担当マスターより

▼担当マスター

比良沙衛

▼マスターコメント

人を幸せに出来る火薬は、花火だけなんですよねー。
生き延びた方、告白できた方、ちょっと進展(?)した方、皆様お疲れ様でした。
大変長らくお待たせしてすみません、言い訳はしませんが、ちょっと自分に絶望気味です。

今回ガイドにないNPCをリアクションに出していますが、アクションの方向性とこれまでのリアクションの蓄積を参考にした上で問題ないと判断したことと、シナリオの傾向にあわせての判断です。
中にはアクションにはありませんが、ドキドキ(?)する展開をあえて盛り込んでみた方もいます。
中洲を生き延びた方のほか、何人かに称号を付与させていただきました、ご確認下さい。