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第5章 悪魔の宴

 館の玄関ホールでのすさまじい闘いの音と衝撃は、館の中にごうごうと響きわたり、食堂のテーブルについた招待客たちにも明瞭に伝わってきた。
 ざわざわざわ
 招待客たちの何人かは顔を見合わせ、不安そうに肩を震わせる。
 食堂のテーブルには、ぜいたくな料理が並べられ、鎖につながれたメイドたちが給仕をしていて、酒も大量にふるまわれていた。
 食堂の中央はステージになっていて、何本か立てられている柱に、目隠しをされた数人の女子生徒たちが、下着姿ではりつけにされている。
「招待客のみなさん、我が館へようこそ。館の中で闘いが起きているようだが、心配はいらない。今宵、この館で起きることは全て、宴の余興なのだから。この空間で流される血と汗と涙とその他の液体の全てが、邪神召還の儀式の一部である! 今宵は是非、こころゆくまで料理と酒、そして生け贄がもがき苦しむ様を鑑賞し、儀式の承認となって欲しい! これより、宴を開催する。乾杯!」
 サッドはそう宣言して、たかだかと掲げたグラスの酒を飲み干した。
 サッドの挨拶とともに起立していた招待客も、それぞれの酒(ソフトドリンクをついでもらった人もいた)を飲み干す。
「サッド様。今宵の宴のディナーショーのプロデュースを、是非やらせて頂きたいのですが」
 志方綾乃(しかた・あやの)が進み出て、サッドに酒をつぎながらいった。
「うむ。同志がいるのは心強い。玄関ホールでの闘いにシビトとグルルが行ってしまって、宴のスタッフは不足しているのだ。こころゆくまでやるがよい」
 そういって、サッドは酒を飲み干す。
「ありがとうございます。それでは、メインディッシュの泉美緒さんの前座として、何人かを公開拷問にかけたく思います」
「うむ。前座については、既に決まっている者もいるが、好きなだけやるがよい。ああ、そうだ。宴の司会はもう決まっているから、打ち合わせをするとよい」
 サッドの言葉に、志方は首をかしげる。
「司会が? 誰でしょうか?」
 そのとき、 食堂中央のステージに立った女子生徒が、朗々とした声で宴の参加者に呼びかけ始めた。
「はーい! それでは、これから、ディナーショーを進めていきます。みなさま、お食事をしながら、ご鑑賞下さい。あっ、申し遅れました。あたし、じゃなかった、わたくしは、司会を務めさせて頂きます、シャローン・レッドアイ(しゃろーん・れっどあい)と申します。わたくしもサッド様と同じ、吸血鬼の一族でございます。同じ一族として、サッド様のご活躍には大変感心させられておりました。どうかよろしくお願いいたします」
「シャローン? ま、まさか!」
 志方は、自分のパートナーの存在にやっと気がついた。
 パチパチパチ
 既に酒がまわり始めている招待客の間から、拍手がわき起こる。
「さて、本日は、わたくしの発案で、ショーに参加する女の子たちに目隠しをさせて頂いています。女の子たちは視界を塞がれて、恐怖が強められ、興奮度もあがることでしょう。また、参加者のみなさんには、次に誰が出てくるかという楽しみも出てくることかと思います。司会が視界を塞ぐって、何だか面白いですよね。キャハハハハハ!」
 シャローンは自分がいった冗談に自分で受けて、一人で笑い始める。
 聞いていた志方はガクッとなってしまう。
「もう。せっかくプロデュースできることになったのに! 志方ありませんね。シャローン!」
 すぐに姿勢を直すと、志方はステージのシャローンに走り寄って、何事か囁く。
「綾乃! 久しぶりね。もうショーが始まるわよ。プロデュース? いいわね。一緒にやろうじゃないの」
 シャローンは笑って、志方に片目をつぶってみせる。
「さあ、まずは、はりつけにされている子をご紹介! 下着丸見え、抜群スタイルのこの子は?」
 シャローンは宴の参加者たちに顔を向けてしゃべりながら、柱にはりつけにされている女子生徒の一人の目隠しを剥ぎ取った。
「ほら、自己紹介して!」
 シャローンの呼びかけに、その女子生徒、ルル・フィーア(るる・ふぃーあ)は口を開いた。
「葦原明倫館のルル・フィーアですわ」
 既にサッドによって何度も拷問を受けていたルルだが、はりつけにされても、気丈な瞳で宴の招待客たちを睨みつける。
「あら。ちょっと険があるわね。ほら、ショーをやるわよ」
 シャローンはルルの肩を叩く。
「みなさん、私はさんざん痛めつけられましたけど、まだ心は屈していませんわ」
 ルルは、表面上はあくまで強気でいってのける。
「違うな。お前の心は、ずっと泣いているぞ。助けて下さいと、男に呼びかけながらな!」
 サッドが、はりつけにされているルルの側に立ち、残忍な口調でいう。
 志方は、サッドに赤ワインの瓶を手渡した。
「ハハハハハハハ! せいぜい恥をみせつけるがいい!」
 サッドは笑いながら、瓶を傾け、ルルの全身に赤ワインを流し込む。
 ルルの下着は真っ赤になり、全身の傷にワインがしみ込んでいく。
「あ、ああ、ああああああああ!」
 ルルは、悲鳴をあげた。
「ほら、下着をとってもわからんぞ!」
 サッドはルルの下着を剥ぎ取るが、全身が真っ赤に染まっているため、ルルの身体の細部を見極めるのは困難だ。
「うん、ふうう。淳二さん!」
 ルルは、招待客の視線が自分の全身に注がれるのを感じて、うめいた。
「そうしてずっと恥をさらしていろ! 男が助けにきたら、私が殺しておいてやろう!」
 サッドは笑い転げていた。

「フフフ。盛り上がってきたな。参加者のみんな、今宵は、我のおもちゃもみてくれ! 面白いぞ」
 悲鳴をあげるルルをみつめる招待客に、キュー・ディスティン(きゅー・でぃすてぃん)が声をかける。
 招待客が振り向くと、キューは席を離れ、四つん這いにさせたリカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)の首輪の鎖を引きまわして、練り歩いているところだった。
「ああ、やめて! いや!」
 リカインは涙を流して悲鳴をあげながら、キューが引く鎖の動きに逆らって、どこかへ逃げようとする。
「無駄だ! おとなしくいうことを聞け!」
 キューはそういって、鎖を思いきり引っ張って、リカインをよろめかせ、床に倒れたところを、踏みにじる。
(こんな感じで大丈夫なのか? いわれてやっているとはいえ、正直後が恐ろしいな)
 キューは内心不安になったが、リカインはノリノリで、背中を踏まれた状態で首を打ち振って、いよいよ激しく泣き叫ぶ。
「いや! 乱暴しないで! うちに帰して下さい!」
 キューはリカインの肩をつかんで身体を起こさせると、再び四つん這いにさせて、そのお尻を平手でぴしゃりとうった。
(あっ、変なところに指が入っちゃった。まずいかな)
 キューはドキッとしたが、表情には出さない。
「ほら! 帰りたかったら、ケダモノになるんだ!」
 キューはそういって、鎖を引く。
「ああ、お願い、みんな、みないで!」
 引かれるまま、リカインは泣きながら、四つん這いで、お尻を振りながら食堂の中をまわり始めた。
 招待客たちは、リカインの様子をじっとみつめていた。
 その瞳に、興奮を宿らせる者もいれば、恐怖や、哀れみ、怒りを宿している者もいた。
 招待客たちの一部は、宴を妨害するチャンスを狙っているようにも思えた。

「おやおや。お客さんも自主的にショーを始めてしまいましたね。こっちはこっちで、続いていきますよ!」
 ショーの司会を務めるシャローンは笑って、ルルの隣の柱にはりつけにされていて、さっきから喘ぎ声をあげている女子生徒の目隠しを剥ぎ取った。
「ああ! 私は、蒼空学園の秋葉つかさ(あきば・つかさ)でございます。みなさま、精一杯お仕えさせて頂きますわ。ああー!」
 招待客たちの視線をいっぱいに浴びて、秋葉は感動のあまり身震いし、喘ぎ声をさらに強める。
 下着姿で喘ぐ秋葉は、非常に色っぽくて、刺激の強いものだった。
「いい感じですね。この子、前座にしましょう」
 志方が、シャローンに耳打ちする。
「はい、それじゃ、一人で興奮しているあなた、ステージにおろしてあげるわ!」
 シャローンはうなずいて、秋葉を柱からおろし、ステージの中央に四つん這いにさせる。
「フハハハハハハハハ! 仕える覚悟は十分とみたぞ!!」
 サッドが笑いながら、秋葉の面前に仁王立ちする。
「はい。サッド様の奴隷になりますわ。なんなりと、いたぶって下さいませ」
 秋葉は、丸い肩を震わせていった。
 ドゴォッ!
 サッドは、そんな秋葉の身体を思いきり蹴り飛ばし、踏みにじる。
「あああー!」
 サッドが強く踏めば踏むほど、秋葉は興奮の度合いを深めていった。
「この、犬が! 反省しろ!」
 サッドはムチを振り下ろし、秋葉を徹底的に痛めつける。
 ビシィッ、ビシィッ!
「ああ、私は、いやしいケダモノです! どうか、許して下さい!」
 ムチを受けた秋葉の身体が真っ赤に腫れあがり、下着がボロボロになって、身体から剥がれ落ちてゆく。
 秋葉が四つん這いになっているステージのその部分が、血や汗などで湿り出していた。
「打たれるのが楽しいのか? まあ、こういうのもなぶり甲斐はあるな!」
 サッドは嬉々として、秋葉をムチうち、その顔をつかんで引き起こすと、思いきり平手打ちで張り飛ばす。
 ぐたっと倒れた秋葉はお尻を高く突き出して、「もっと」といわんばかりにうち振る。
 そのお尻をみて、さらにサッドは興奮して、無造作にお尻をつかむと、恐るべき牙でがぶりと噛みついた。
「あ、あああああああああー!」
 秋葉は、絶頂と見まがう叫びをあげる。
 招待客たちは、その様を、茫然としてみつめていた。

「みなさま、ショー、すごいですね。私のお酒も、どうぞお飲み下さい」
 天津のどか(あまつ・のどか)は、メイドとして招待客に酒をついでまわっていた。
「ふっふっふ。あんたは脱がないのか?」
 酔った招待客の一人が、ニヤニヤ笑いながら天津のお尻を撫であげる。
「ああん! やめて下さいませ」
 天津はおおげさに反応して身をくねらせながら、次の客に酒をつごうとした。
 しかし。
「ああ! ご、ごめんなさい!」
 天津はうっかりして酒をこぼし、招待客の服を汚してしまった。
「こいつめ。ごめんですむか!」
 招待客は怒って、立ち上がると、天津の頬を張り飛ばした。
 ばしーん
 天津は吹っ飛んで、床にうつぶせに倒れる。
「すみません、本当に、許して下さい」
 涙を流して謝る天津。
 その様子をみた志方は、ひらめいた。
「本当に反省しているなら、その身体で償って下さい」
 そういって、志方は、天津を押して、ステージに出させる。
「あああー!」
 サッドの横に倒れ込む天津。
「うん? 貴様、メイドのくせに酒をこぼすというミスをやったな! 一緒にお仕置きしてやる!」
 秋葉を虐めまくってテンションが上がっているサッドは、天津にも容赦しなかった。
 ビシッ、ビシッ!
 サッドのムチが、天津のメイド服を引き裂き、肌を露にさせる。
「貴様、下着姿になっていないのでおかしいと思ったら!」
 サッドはうめいた。
 天津は、メイド服の下に何も着ていなかったのだ。
「ああ、本当にすみませんでした。どうぞ私に罰をお与えください」
 天津は大の字になって、全てをさらしながらいった。
 実は天津は、わざとミスをしたのだった。
「うらー! 余計な肉つけやがって!」
 サッドは、天津の胸を踏みにじった。
「きゃ、きゃああ!」
 激痛が走り、天津は叫び声をあげる。
「どうやってお詫びする? ええ?」
 いいながら、サッドは天津を引き起こし、頬を平手で打ってから、突き飛ばして、再びムチで打つ。
「やめて。助けて! ああ、ああー!」
 天津は涙を流して、歓喜の叫びをあげていた。
「あははははは! 可愛い子を2人まとめて虐めるなんて、愉快やなー!」
 招待客の一人、穂波妙子(ほなみ・たえこ)が笑いながらステージに上がってきた。
「おやおや。お客さんが飛び入り参加ですか。大歓迎ですよ!」
 司会のシャローンはテンションを上げる。
 志方も、うんうんとうなずいている。
「おお、その服は! いい趣味しているではないか」
 サッドは、穂波の美しいボンテージ姿に目を細めた。
「たまには、きわどい衣装もええと思うてな! さっ、遊び尽くすで!」
 穂波は、天津に覆いかぶさると、ムチで打たれた傷をペロペロと舐め始めた。
「ああ、そこ、そこはー!」
 天津は、穂波の絶妙な舌さばきに悶え、うち震えた。
「フハハハハハ! 客も参加して、どんどん宴を盛り上げようではないか!」
 サッドは笑いながら、秋葉と天津の2人を四つん這いにして横に並ばせ、2人のお尻を自分に向けさせると、2つのお尻をまとめて、狂ったようにムチで打ち始めた。
「ああ、光栄ですわ。ありがとうございます!」
「ううー! ありがとうございます!」
 2人は、激痛に悲鳴をあげながら、御礼をいう。
「へー。ええわね。ほんまに、可愛い子たちやなー」
 穂波はニコニコ笑いながら、ムチ打たれる2人の耳を噛んだり、腫れあがったお尻を舐めあげたりした。

 このように、宴の場では、一般人からみれば悪夢としかいいようのない光景が続いていたが、招待客の一部も、そろそろ「見過ごせない」という雰囲気になりつつあった。
「サッド、許せませんわ!」
 ついに、招待客の一人、佐倉留美(さくら・るみ)が立ち上がって、ステージに向かい始めた。
「うん? 何だ、お前は? ショーを楽しみにきたのではないのか?」
 サッドは、ステージにあがった佐倉を睨む。
 だが、その視線は、佐倉の目から、魅力的な身体の細部にゆきわたり始めた。
 すらりと伸びた脚と、たわわに実った巨乳。
 いつも股下ゼロセンチの超マイクロミニスカートをはいている佐倉は、歩くお色気かと見まがう姿だった。
 大股で歩いても、なぜかミニスカートの中身は確認できない。
 パンツをはいていないようにもみえるが、謎である。
「いたいけな美少女たちをすぐに解放しなさい! 自分の楽しみのために弱い者を虐めるなんて、最低です!」
 佐倉は、サッドにつかみかかろうとした。
 だが、その腕は吸血鬼の恐るべき腕につかまれていた。
「えっ!? あっ、ああああ!」
 腕をひねりあげられ、佐倉は悲鳴をあげる。
 サッドの怪力は、すさまじいものだった。
「その姿、なかなかの見物だ!」
 サッドは、つかんでない方の手を佐倉のスカートの中に差し入れる。
「ちょ、ちょっと、やめ! ああーん!」
 佐倉は、肩をぶるっと震わせ、サッドの胸に頭を預けていた。
「ハハハハハ! お前も征服してやる!」
 サッドは佐倉の衣に手をかけ、ビリビリに引き裂き始める。
「は、はあ、みえちゃう!」
 佐倉はうめいて、露出度の増した身体を手で隠そうともがく。
「そうか、みられるのが嫌か! では、はりつけにされて、みなに徹底的にみられるがよい!」
 サッドは意地悪な笑みを浮かべて、半裸の状態の佐倉を、柱に鎖で縛りつけられる。
「やめて! 身体が動かない! ああ、み、みないでー!」
 佐倉は、涙を流して悲鳴をあげた。
「ハハハハハハハハハハハ、苦しめ、苦しめー!」
 サッドは笑いながら、はりつけ状態の佐倉をムチで打つ。
「い、痛いです。ああ! 触らないで! ダ、ダメー!」
 全身傷だらけになった佐倉は、サッドに胸をわしづかみにされ、さらに悲鳴をあげたが、その目にはどこか恍惚とした表情が浮かび、口からは少しよだれが垂れていた。