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第1回魔法勝負大会

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第1回魔法勝負大会

リアクション

 
    ★    ★    ★
 
「第五試合、マリハ・レイスター選手対、ルルール・ルルルルル選手です!」
 名前を呼ばれて、マリハ・レイスターがコタツに乗って、すすすすーっと移動してくる。
「コタツごと落としてあげるわよ」
 ルルール・ルルルルルが、炎と氷で作りだした太極図にイルミンスールの杖を突き立てた。火冷流が左側からマリハ・レイスターを襲うが、バリアに阻まれてしまった。対するマリハ・レイスターが闇の輝石から作りだした闇の塊も、正面で霧散してしまう。
 地味で熱い戦いがその後も黙々と繰り広げられた。ルルール・ルルルルルの背後、左右、頭上でそれぞれ闇の塊が弾き返されて霧散する。
 マリハ・レイスターの周囲でも、正面、右側、上で炎と冷気が複雑に混ざり合いながら消えていった。だが、背後から迫る炎と冷気は、誰にも邪魔されることなくマリハ・レイスターを直撃した。
「きゃあ!」
 コタツがバタンとひっくり返り、マリハ・レイスターと一緒にスライムの上に落ちていった。すっぽんぽんになったマリハ・レイスターが、コタツ板の上でコタツ布団にくるまれてバタンキューする。
「勝者、ルルール・ルルルルル選手!」
 
    ★    ★    ★
 
「第六試合、雪国ベア選手対、クリムゾン・ゼロ(くりむぞん・ぜろ)選手です」
「さあ、白熊最強伝説第二章だぜ」
 勢いに乗った雪国ベアがズンズンと橋を渡って武舞台に達する。
「さあ、イコンの力を見せるでござる」
 クリムゾン・ゼロが、ブースターから派手にジェットを噴き出しながら武舞台へと空中を移動した。両肩には六連ミサイルポッド、右腕にはマジッチェパンツァーという重装備の男性型機晶姫である。
「ゼロったら、外しておけって言ったのに、ミサイルポッドつけたままじゃん」
 銃型ハンドヘルドコンピュータでクリムゾン・ゼロの様子をモニタしながら葉月エリィが言った。
 自分は小型イコンだと言いはるクリムゾン・ゼロの攻撃力は言うだけのことはあるのだが、さすがに魔法戦闘ではスペシャリストというわけにはいかない。だから、マジッチェパンツァーを装備する代わりに、邪魔な装備は外しておけと言っておいたのだが。
「どりゃー、ぶっ飛びやがれ!」(V)
 雪国ベアが、頭上に作りだした巨大な氷塊をクリムゾン・ゼロの右側にぶちあてた。
「バリア正常作動。活動に支障なしでござる」
 腕を組んだまますっくと立っていたクリムゾン・ゼロが、右腕を正面にむけた。
「エネルギーチャージ……マジッチェパンツァー展開……零システム・マジックモード起動……クリムゾンフレア発動」
 複雑な形に展開したマジッチェパンツァーが、送られてきた機晶エネルギーを魔力へと変換する。生まれた火球が、ボンと雪国ベアの左側にむけて発射された。
「むだむだむだあ!」
 バリア前で火球が爆発するのを気にもとめず、雪国ベアが次の氷塊を投げつけた。クリムゾン・ゼロも、次弾を発射する。
 それぞれの右側のバリアで、攻撃が防がれる。
「なら下だあ!」
 雪国ベアが卓袱台返しの要領で下から氷山にも似た氷の塊を持ちあげたが、バリアによって粉々になって周囲へと砕け散っただけであった。
「誘導良好……されど、効果認められずでござる」
 火球を誘導して背後から攻撃をしかけたクリムゾン・ゼロであったが、これもバリアに防がれてしまった。
「だったら上から……」
 奇しくも、二人が同じ方向が攻撃をする。だが、これに焦ったのはクリムゾン・ゼロであった。
「死角よりの攻撃を感知、迎撃ミサイル全弾発射……ちょっと待つでござる、なんで空っぽでござるか!」
 発射命令を送っても何も起こらない六連ミサイルポッドに、クリムゾン・ゼロが焦った。
「あたりまえじゃん。そんな物使ったら即反則負けだよ。弾倉抜いておくに決まってるって」
 少し呆れたように、葉月エリィがつぶやいた。
 ちゅどーんっと、氷塊の直撃を受けてクリムゾン・ゼロがスライムの海に落下する。だが、そこはこれ、安心のフルアーマー型眼精機晶姫である。見た目はまったく変わらない。
「勝者、雪国ベア選手!」
 
    ★    ★    ★
 
「第七試合、ミツキ・ソゥ・ハイラックス選手対、大神御嶽選手です」
「フレー、フレー、ミツキちゃん。頑張れ、頑張れ、ミツキちゃん。見せてね、見せてね、すっぽんぽ……、はっ、いけね。つい本音が……」
 チアガール姿でパンチラもいとわず応援していた銭湯摩抱晶女トコモが、あわてて自分の口を押さえた。
「今、何か不穏な発言が聞こえたような……」
 やっぱり何か企んでいるなと、ミツキ・ソゥ・ハイラックスは、服の下にしっかりと着込んでいるスクール水着をぎゅっと押さえた。
「か、勝てばいいのよ。えいっ」
 ミツキ・ソゥ・ハイラックスが両手を突き出して火球を放ったが、大神御嶽の背後に回り込んだ火球はあっけなくバリアに弾かれてしまった。
「あーん」
「さてさて、アリアス嬢も勝ち残っているようですから、ここは負けられませんね。――我、求むるは聖なる式。天にあっては、明。炎をもって、悪しきを止める!」
 大神御嶽が、呪符をばらまいた。炎の小鳥となった呪符が、ミツキ・ソゥ・ハイラックスの背後に回り込むが、こちらもバリアに阻まれてしまう。
「我、求むるは炎の舞。謡いにあっては、熾。炎風をもって、扇となす。炎扇!」
 間髪入れず、大神御嶽が横薙ぎの炎でミツキ・ソゥ・ハイラックスの左側を狙った。だが、これもまたバリアに阻まれてしまう。
「はあはあ、とにかく、火よ火!」
 慌てふためいて、ミツキ・ソゥ・ハイラックスが火球を放つ。ひょろひょろ〜っと飛んでいった火球が、大神御嶽の右側のバリアにあたってぽよんと消滅した。
「頑張れー、脱げー!」
 銭湯摩抱晶女トコモの声が、ミツキ・ソゥ・ハイラックスの耳に聞こえてきた。
「誰が、脱いでたまるものですかあ!」
 奮起したミツキ・ソゥ・ハイラックスが下から這い上がるように火球を放つ。
「我、求むるは陸なる闇。活殺にあっては、滅。幽明をもって、因果を断つ!」
 大神御嶽も、ミツキ・ソゥ・ハイラックスの足許から闇を湧き起こさせる。
「やったあ、両方吹っ飛んだよね!」
 銭湯摩抱晶女トコモが歓声をあげた。
 二人共、同時に相手の攻撃を受けてスライムの海に落ちたのだ。とはいえ、ちゃんと対策をとっていたので、ミツキ・ソゥ・ハイラックスはスクール水着、大神御嶽は褌姿でぷっかりとスライムの海に浮かぶ。
「さあ、介護にむかわなくちゃ♪」
 銭湯摩抱晶女トコモは、うきうきで救護室へとむかった。
「両者、相討ちです!」