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第三章 調査

 機晶都市ヒラニプラ、機晶姫の関係を多く扱う技術者や職人が多い。一方で不要となった中古品を取り扱う商人もいる事が事実だった。
「先ずは、中古商をしらみ潰しに当たってみよう」
 宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)は『名声』を纏い、何件かの店を回っていた。
「ほう、あんたか……。何の様だい?」
 祥子の顔を見ると、大概の商人は快く話をしてくれた。
「ああ、何でもキマクの方で小型飛空挺を頻繁に売りに来る若造がいるらしい」
「詳細は分かりますか?」
「いやあ、申し訳ないがそこまでは。其処で商売をしてりゃ、別なんだけどな」
(『嘘感知』でも白か……)
 祥子は『威圧』や聞き方を変えて商人にそれとなく聞いたが、他の商人からもそれ以上の情報は得られなかった。
「マーゼン達にも応援を頼もう」
 マーゼン・クロッシュナー(まーぜん・くろっしゅなー)達調査隊は祥子からの情報提供を受けキマクに来ていた。ここには武器弾薬、果ては強化ドラッグまで売られる最大の規模を誇る盗品市が開かれていた。
「機晶都市ヒラニプラとの予測もありましたが、キマクにて盗難された小型飛行艇がそのまま売られていると祥子君から連絡があったのです」
「ここなら叩けば幾らでも埃が出て来る筈です。犯人の手掛かりを見つけましょう」
 ティー・ティー(てぃー・てぃー)はあからさまな盗品店に目星を付け始めていた。
「そうですな。では行きましょう」
 ティーとマーゼンが先ず最初に入った店はティーが目星を付けた店だった。
「ここからですね」
 店の雰囲気とは似つかわしくない2人組みに、店主は眉を顰める。ティーはニコッと笑うと堂々と宣言する。
「盗品の売買が行われているという情報がありました。検めさせて頂きます!」
「っ……」
 店主は悪党の常套手段であるテーブルの下から、銃を取り出す。
「う、失せろ! ぶち殺すぞ」
 震える声でマーゼン達を脅そうとする。
「飛鳥さん」
 本能寺 飛鳥(ほんのうじ・あすか)が『隠形の術』で店主の背後に現れ、上から拳銃を手刀で叩き落とす。既に飛鳥が店内に居たとは店主も気付きようが無かった。拳銃は飛鳥が既に遠くに蹴り飛ばしていた。
「あんた、残念だったね」
「く、くそ」
 逃げようとする店主をマーゼンが『逮捕術』で取り押さえる。
「じゃ、あたしは消えるよ。表に別の客が来たら知らせるから」
「また、御願いしますね」
 飛鳥は『隠形の術』で再び気配を消し去る。瞬時に気配が消え、飛鳥が其処に居たとは誰も思わない。
「では、お話を聞かせてくれますね?」
 ティーの笑顔が店主にとっては悪魔の笑みに見えたに違いない。店主は矢継ぎ早に盗品の話を始めた。
「なるほど、パラ実生ですな」
「ああ、そうだよ。あいつが最近やけに良いもんを持ってくるんで買ったんだ。あいつも少し安くても構わないって言うしよ」
「では、そのパラ実生の素性をアム君に頼むとしますかな」
「了解したよ」
 アム・ブランド(あむ・ぶらんど)は店を出て、更なる調査に向かった。
「飛鳥君には、アム君の護衛を御願いします」
「任されよう」
 飛鳥は声だけ残して、アムの後を追っていく。
 アムが単独で調査を行うと犯人が見えてきていた。
「パラ実生で、実行犯(ゴブリンを操っている人物)との接点はまだ見えず。ただ、容姿は判明した。」
 アムは聞き込みをした資料を淡々と纏めていく。
「今回は、オウ殺寺院なんかの地球とシャンバラとの友好を快く思わない勢力とは関係無し。友人、知人も白と――」
 アムは調査資料を見るが、実行犯との関係は何も見えてこなかった。
「もう少し広範囲を調べてみるか」
 踵を返すとアムは再び盗品市へと足を運んだ。
 「さあ、ゴブリンの生態調査に行きましょう♪」
 葉月 可憐(はづき・かれん)アリス・テスタイン(ありす・てすたいん)と共に宮殿飛行翼を使い、ゴブリンの生態を調査に来ていた。生態系の変化を防ぐためにも、調査をする事でゴブリンを征伐した際の影響を最小限にする事が出来る。
「あ、あそこがゴブリン達の巣窟の様だねぇ」
 ゴブリンの巣窟は幾つもあり、集落の様な規模になっていた。可憐とアリスは『光学モザイク』等の効果により、姿を消しゆっくりと巣に近づいていく。
「最初は食事ね。何を食べてるのかしら?」
 可憐の視線を追うとゴブリンが自ら捕まえたのだろうが、何かの肉を火で焙っていた。
「肉を食べてるねぇ」
「あれ、あっちはスナック菓子を食べてるわ」
 ちょっと違うところでは、少し土に汚れたスナック菓子を食べているゴブリンが居た。味が良かったのか、袋を舐めるようにしゃぶっている。
「雑食っていうのかなぁ?」
「そんなところでしょ」
 アリスはスラスラとゴブリンの生態調査レポートを記入していく。他にも調査をした内容が追加されていく。
「で、最後は数でしょ」
「どうやって数えるの?」
「……地道に」
「大変だねぇ」
 それから、可憐とアリスは一つの巣窟にぴったりと張り付き数の調査を行った。動き回るゴブリンを追いかけつつ、ただひたすらに数を数え続けた。
「多いねぇ」
「多いわね」
 まる1日かけて、数を数えたが明らかに数が多かった。むしろ今回の街道の襲撃で更に数が増えたのではないかと思われるくらいだった。
「これ、減らさないと逆に生態系に悪影響を及ぼすわね」
「そうだねぇ」
 後日、作戦前に可憐達のレポートが提出されたが、レポートにはゴブリンの数をしっかり減らすべし! と書かれていた。