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リアクション
「私は(生温かく)見ているから、あなた達だけでなんとかしてみなさい」
リカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)は、パートナー3人のするがままに任せた。
勢い良く飛び出して行ったのは、守護天使のアレックス・キャッツアイ(あれっくす・きゃっつあい)。「覚悟っス」と刀を振り回して、ゴーレムに向かっていく。
同じく守護天使のサンドラ・キャッツアイ(さんどら・きゃっつあい)は、スキルライトニングブラストをいつでも使えるようにしながら待機する。
「フィスはパスさせてもらえないかなー」
3人目のパートナーでヴァルキリーのシルフィスティ・ロスヴァイセ(しるふぃすてぃ・ろすう゛ぁいせ)は、少し浮かない顔をしている。
「どうして?」
「あんまりいい思い出ないし、第一今更訓練なんて必要ないんじゃないかな? 駄目?」
「てっきりライトニングブラストが苦手なのかと思ったけど」
リカインが微笑むと、シルフィスティは「意地悪」と不機嫌な表情をした。
「くらえっ!」
アレックスがスキル乱撃ソニックブレードを繰り出すと、ゴーレムはあっけなくバラバラになる。それどころか普通の斬撃でも、ゴーレムには大きなダメージを与えた。
「これじゃあ訓練にならないわね」
リカインは周囲を見るが、他でも多くの相手がゴーレムを圧倒していた。
「まさしくp(ピアノ)か。フィス、知ってたら教えてくれれば良いのに」
「さぁ、どうだったか……はっきり覚えてなくて」
シルフィスティは空とぼけた。
リカインが「意地悪ね」とつぶやくと、シルフィスティが「お互い様です」と返す。2人は互いを横目で見ながら笑った。
「ねぇサンドラ、アレックスに素手で戦うように伝えて。もしくは苦戦している人を助けるようにって」
リカインに言われて、サンドラは走っていく。ちょうどアレックスが3体目のゴーレムを倒したところだった。
「なんつーか、あっけねーな」
クリストファー・モーガン(くりすとふぁー・もーがん)は当初こそ、ディフェンスシフトなどでガードを固めた戦いを心がけていたが、ゴーレムがあまりにあっけなく倒れるのを見て、すぐに攻撃一辺倒に切り替えた。それはパートナーのクリスティー・モーガン(くりすてぃー・もーがん)も同じで、早々にガードを解いている。
「これじゃあ、訓練にならないよ」
「もうちょい上手く飛び回れば、同士討ちにだってできそうだぜ」
少し離れたところを飛んでいる九条 風天(くじょう・ふうてん)に手を振る。既に剣を鞘に収めた風空は、体術のみで戦っていた。
「どうしました?」
「いやー、あまりにあっけないんでさ」
「ボクもそう思いました。訓練施設の中でも、初心者向けなのでしょう」
空中で話し込む3人に、ゴーレムが巨大なこぶしを打ち込んでくる。しかしあっさりかわした風空がかかと落としを決めると、ゴーレムの腕が粉々になった。
「お見事!」
「ボクは危なそうな人を助けに行きます」
「おう!」
風天を見送ったクリストファーはクリスティーにささやいた。
「……男だったんだな」
「気付かなかった? 最初からボクって言ってたよね」
「そ、そうだったか? きゃしゃで可愛い顔してたから、てっきりな」
「もしかしてあんなのが好み? それとも新たな運命でも感じた?」
クリストファーはパートナーの銀髪を軽く引っ張った。
「つまんねぇコト言うな」
「……ゴメン」
四谷 大助(しや・だいすけ)は、早くも4体のゴーレムを倒していた。
「後ろから押し寄せてきます! 右に飛んで迂回を!」
コートと化した四谷 七乃(しや・ななの)の指示は的確だった。ゴーレムの攻撃を飛んでかわした大助は、グラップラーとしての速度を活かしながら、振り向きざまに魔拳を打ち込んだ。同時に2体のゴーレムが崩れ落ちる。
「案外あっけなかったな」
「マスターと七乃が組めば、これくらいどうってことないですー」
「このまま戦っててもなぁ」
「それなら他の人を助けに行くですー」
「俺は見てるから、2人で頑張ってくれ」
レイナ・ライトフィード(れいな・らいとふぃーど)が見直した閃崎 静麻(せんざき・しずま)の姿は、早くもどこかに消え去っていた。
しかし襲い掛かってくるゴーレムには容赦しなかった。スキル光術で撃退すると、両手に持ったデュエ・スパデで一遍になぎ倒す。
「よーし、あたいも行くぜ!」
もう一人のパートナー、獅子神 刹那(ししがみ・せつな)も刀を振りかぶって飛び掛かるものの、こちらはゴーレム相手に苦戦していた。
「やられる前にやれだ! と思ったけど、ちょっときっついな」
踏みつけてきたゴーレムの足を、転がって間一髪避ける。全力で切りつけるが、半ばまで食い込んだところで、刃が止まった。
「あっ、ちっくしょー」
ゴーレムが拳を振りかざす。素早く刀を手放したが、かわし切れないと悟ると、防御の姿勢をとる。
「……?」
何の衝撃も感じないので、恐る恐る目を開けると、レイナの背中が見えた。先ほどのゴーレムは粉砕されている。
レイナは刹那に刀を返す。
「少し厳しいかな。でもこのくらいで弱音を吐くわけじゃないでしょ」
「あったり前だ!」
刹那は立ち上がると刀を構えて、ゴーレムに向かっていく。レイナが振り返ると、静馬は「頑張れよ」とばかりに手を振っていた。
「仕方ないですね」
レイナは深くため息をつくと、刹那の後を追った。
「クロちゃーん、なかなか良い感じだよー」
切り落としたゴーレムの頭に腰掛けた小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)がレティーシア・クロカス(れてぃーしあ・くろかす)に声をかける。
『クロちゃんってのは勘弁なんですが……』
それでも美羽から教わったカウンターは効果絶大だった。もちろんこの程度のゴーレムなら、普通に戦ったとしてもレティーシアは苦戦はしないだろう。しかし美羽から教わった柳生新陰流の奥義水月を使うと、確実にゴーレムを破壊していた。
「クロちゃんも、あっと言う間に覚えちゃったねぇ。やっぱり教え方が良いのよね」
最初にわざと隙を見せることで、ゴーレムの打ち込みを誘う。最初の一回は美羽が実際に見せたが、その後は簡単なアドバイスだけでレティーシアは習得した。
ここに来てようやく蒼空学園生徒会の副会長らしい行動ができた美羽は、心から満足していた。
「でもちょっと退屈だなぁ。他に苦戦している人は……」
「美緒、その調子!」
泉 美緒(いずみ・みお)はシリウス達のフォローを受けながら懸命に戦っていた。戦う前こそ、ラナ・リゼット(らな・りぜっと)の変化した純白のビキニアーマー姿を恥らっていたものの、今では目の前のゴーレムに集中していた。
時折、危なくなることがあったが、リーブラ・オルタナティヴ(りーぶら・おるたなてぃぶ)とサビク・オルタナティヴ(さびく・おるたなてぃぶ)が、紙一重でカバー。魔法少女になったシリウスも、遠間から弓でゴーレムの弱点を射抜いていく。
「しっかしシリウスも美緒のこと好きだねぇ。もしかしてラブ?」
サビクが戻ってくると、美緒と彼女をリフレッシュでフォローするリーブラを眺めつつ、シリウスを冷やかした。
「一生懸命頑張ってるのが可愛いんだよな」
美緒の全身は紅潮し、露わな肌の表面を、幾筋も汗が流れる。
「シリウス、百合園に戻りたくなった?」
「戻るなんて面倒しないで、このまま連れて帰りたいくらいだぜ。もっともラナがいなければ、だけどな」
サビクがシリウスの口元を指し示しながらハンカチを渡す。シリウスはあわてて、よだれを拭った。
「今ですわ!」
「はいっ!」
リーブラの掛け声に合わせて、美緒がゴーレムに止めの一撃を加えた。
「フゥ……ハァ……これで…………3つめ」
大きく息を吸い込むと、美緒の豊かな胸が上下する。ここに来るまでは、自分でも思ってもいなかった成果だ。
「次はアレですわ。行けます?」
リーブラの言葉に、呼吸を整えた美緒は「もちろんです」と明るく答えた。
刀を振りかぶると、ゴーレムの右足に切りかかっていった。
「上の攻撃に気をつけろ!」
四谷 大助(しや・だいすけ)の言葉に、美緒が上を見る。振り下ろされるゴーレムの拳を、横っ飛びに避ける。
「正面からじゃなくて、死角に回って攻撃するんだ!」
九条 風天(くじょう・ふうてん)が誘導して、美緒はゴーレムの背後に回りこんだ。
「そこだよ! 力で相手にかなわないなら、相手の力を利用するの!」
体を返すゴーレムに合わせるように刀を向けると、小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)の言う通り、たやすく刃が食い込んだ。
しかしでたらめに振り回されたゴーレムの腕が美緒をかする。
「キャッ!」
避けそこねた美緒が転がると、アレックス・キャッツアイ(あれっくす・きゃっつあい)とサンドラ・キャッツアイ(さんどら・きゃっつあい)が受け止める。
「大丈夫っスか? 僕達が手伝ってもいいっスよ」
アレックスの申し出に、美緒は首を振った。起き上がるとゴーレムに向かっていく。
「兄貴、余計なコトしないの」
「見てるだけってのは辛いっス。でも……」
「でも?」
「随分違うっスね」
アレックスはチラとサンドラの胸元に視線を送るが、次の瞬間、足に猛烈な痛みを感じる。サンドラのかかとが食い込んでいた。
「この方が動きやすいんだから」と、サンドラは更にかかとをねじり込んだ。
「エイッ!」
美緒が全力を込めて刀を振り下ろすと、ゴーレムの肩口に食い込む。そこから斜め下方に切り落とすと、ゴーレムは無残に崩れ落ちた。
「オォーッ!」
部屋中を歓声と拍手が包む。我に返った美緒が周囲を見回すと、一緒に入ったメンバーが美緒の周りを取り囲んでいた。美緒が倒したゴーレムが最後の一体だった。
途端に恥ずかしくなった美緒は、とっさに隠れようとするが、そんな場所はどこにもなかった。
「これで終わりか?」
閃崎 静麻(せんざき・しずま)は、改めて部屋を調べるが、倒れたゴーレム以外には見当たらない。
「あそこ」
シルフィスティ・ロスヴァイセ(しるふぃすてぃ・ろすう゛ぁいせ)が天井を指差した。いつの間にか、天井に穴が開いている。
「何だ?」
九条 風天(くじょう・ふうてん)とクリストファー・モーガン(くりすとふぁー・もーがん)が飛んで調べたものの、「ただの風穴でした」と戻ってきた。
「フィス、何か知ってるの?」
リカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)の問いかけに、シルフィスティは笑みだけを返した。
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