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至高のカキ氷が食べたい!

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至高のカキ氷が食べたい!
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リアクション

「囲まれましたね……」
 東雲いちる(しののめ・いちる)があたりを見回してそう言った。
「引っかかってくれて幸いだな」
 ヤジロアイリ(やじろ・あいり)が肩にかけていたクーラーボックスを地面に置いた。
「そうですねー」
 いちるはそう言って、戦闘体勢を取る。
 悪党どもはぐへへと卑しい笑みを浮かべながら、囲んでいる輪を一回り小さくした。
「さあ、そこのクーラーボックスを置いていきな。お前たちが氷精から氷を手に入れてるのはわかってんだよ」
「……なんというか、テンプレだなぁ」
 アイリがあきれたようにため息をついた。
 脱力と同時に行動を開始する。
 毒虫の群れで、前方から武器を構え迫ってくる5人に向かって猛毒を浴びせる。
「ぐっ、毒、だと!」
 武器で毒の霧を払い、じりじりと距離をつめる。
「本命はこっちですー!」
 いちるが、ブリザードを唱えた。
 氷の嵐が5人の悪党を包み込む。
 魔法によって作られた冷気が、この照りつける太陽の下、一時の清涼感をアイリといちるにもたらす。
 だが、氷の嵐に包まれている悪党たちは氷の飛礫に文字通り身を削られ、気絶していた。
「っと、やっぱうまいもの食べる前には運動しないとなっと」
 長曽我部元親(ちょうそかべ・もとちか)が剛刀を振り回しながら言う。
 その一振りで後方の1人を気絶させた。
「うむ、そうだの……」
 石田三成(いしだ・みつなり)も同じように大鎌の柄を器用使い、迫り来る悪党を1人昏倒させた。
「我が君には当然ですが……アイリさんたちにも無様な真似は見せられませんね」
 クー・フーリン(くー・ふーりん)は気を引き締めそう言った。
「ふふ、貴方のお手並みを拝見するにはいい機会ですね」
 澄ましたように、ネイジャス・ジャスティー(ねいじゃす・じゃすてぃー)はクー・フーリンに言う。
「ご心配には及びませんよ、ネイジャス」
 愛槍を呼び出し、己が手足の延長のように振るう。
 薙ぎは突風を起こし、石突での突きは目にも留まらぬ速さで一撃で悪党どもの意識を奪っていく。
(言うだけのことはさすがにありますね……、動きに無駄が無い)
 ネイジャスはクー・フーリンの動きを追いかけ素直に感心する。
「終わったみたいですねー」
「これで全部か」
 アイリといちるはあたりを見回して、動いている悪党がいないことを確認する。
 全員不殺で、気絶させるだけにとどめた。
「ネイジャス、こいつら縛ってもらっていいか?」
「ええ」
 アイリの頼みをネイジャスは二つ返事で引き受け、持っていた20メートルのロープとワイヤークローのワイヤーを使って縛り上げた。

    †――†

「あっつ……」
 場所選びを誤ったと、保冷車の屋根を陣取った閃崎静麻(せんざき・しずま)は後悔した。
 どうやって取り付けたのかわからないが、傍にはビーチパラソルが立てられている。
「冷気上がってこねー……」
 折角涼が取れると思いこの場所を占拠したのに、まさかの完全断熱仕様の保冷車だったのだ。
「全く、そうやって楽をしようとするから! ちゃんと見張りはやってるんですか!?」
 レイナ・ライトフィード(れいな・らいとふぃーど)が頭を抱えながら、注意する。
「そんなビーチパラソルなんて立てたら視界がふさがったり、警戒する方向をすぐ振り返れませんよ!」
 レイナが注意する。
「そういうなって、どの道もう遅い」
 しかしすでに、保冷車は悪党どもに囲まれていた。
 どこから沸いてきたのかわからないが、護衛が散開してしまったせいだろう。
「はあ……」
 レイナはため息を吐き空から悪党の一人に向かって急襲し、速度をつけた蹴りを頭に叩き込んだ。
 振り返りざまに、頭を蹴り付けた悪党を別の悪党に向かって蹴り飛ばす。
 悪党たちは悲鳴を上げる間もなく昏倒していく。
「やるか」
 寝そべっている体を起こして、保冷車の上に静麻は立つ。360度見渡して自分の役割を決める。
(さすがに射程的にあたるかわからないな……それなら)
 怯懦のカーマインを手にし、保冷車へと近寄ろうとする悪党の足元へ銃弾を放つ。
「まあ、ほかにも護衛はいるからな。俺はこうやって威嚇しておくかね」
「いや、撃退に協力しなさいよ!」
「いやだって、暑いし……暑さで照準ずれて味方にあたってもしらんよ?」
 威嚇射撃を続けながらも、静麻はレイナに答える。
「そっち、任せたぞー」
 静麻は背中越しに、ジャック・メイルホッパー(じやっく・めいるほっぱー)へ声をかけた。
「……お前たちが来なければ、こんなことにならなかったのに!」
 ジャックは恨みや妬みのこもったヤクザキックを見舞い、それどころか、ロー、ミドル、ハイと三段蹴りまで鋭く叩き込む。
 それは妬みによるものだろうか、蹴りは徐々に鋭さを増しその怒涛の勢いはとどまることを知らない。
 1人を蹴り飛ばし、2人を蹴り飛ばし、3人を蹴り飛ばした。
「全く、お約束のように出てこなくていいんだよ!」
 最後の4人目に放ったソバットが綺麗に相手の腹に決まった。
「前方はどうだー?」
 静麻が屋根の上から、前方を見る。
「半人前が魔法で作った氷ですから、食べたら、多分イッタイ頭痛がしますよっ☆」
 朱宮満夜(あけみや・まよ)は氷術の氷自体の粒を小さく、そして量を増やし、鋭利な凶器に見たてる。
 その氷は、悪党の顔面を狙う。
 むしろ食べさせる。大声を上げて迫り来る、開いている口に向かってジャストで入るようにだ。
「まっずいジュースでも持ってこれたらよかったんですけどね……」
 ふう、と嘆息した。
「このアマ、何してくれやがる……!」
 べっと口の中に入り込んだ氷を吐き出しながら悪党は満夜に詰め寄ろうとしたところ、
「何って、こんな面倒ごと起こした責任取ってもらうんだから!」
 悪党の後ろから、不意打ち気味に寿司(ことぶき・つかさ)がとてつもなく重い一撃を見舞った。
「ぐ……がっ……」
 どさりと、一撃で悪党の意識を奪い取った司。
「ありがとうございます」
 にこりと笑い、満夜は司に礼を言う。
「氷の護衛は依頼だし。仲間のピンチは助けないとね」
 司はふうっと晴れ渡った表情で満夜に答えた。
「元気が無いみたいだったけど、吹っ切れたかね?」
 キルティ・アサッド(きるてぃ・あさっど)が司に問いかけた。
「うん。やっぱり剣が全てだから。強い人に負けたからってくよくよしてちゃダメだね。強くなることよりも、自分の剣でできることをきちんと見据えないと……」
「それはよかったわ。それじゃあ、後はこいつらを縛ってと」
 キルティは他の皆と一緒に気絶している悪党どもを縛り上げる。
「これで、全部倒せたかな?」
「これでこっちは全部みたいだな」
 静麻は満夜の問いに答えた。
 取り囲んでいる敵たちは全員制圧することができた。
 逃げ出した分は深追いすることなく、今気絶している人間たちをぐるぐると簀巻きにするのだった。

    †――†

「クソ、あのガキ共、人をコケにしやがって!」
 洞窟から逃げ出したいかにも窃盗団の頭ですといわんばかりの男が、これも盗品であろうと思えるバイクに跨り停車している保冷車へと向かう。
「こうなったら、実力行使で奪い取って……!」
 保冷車の搬出口を護っている者はだれもいなかった。
 ニヤリと卑しい笑みを浮かべ、頭の男は搬入口の取っ手に手をかける。
「お、お頭〜!」
 男に遅れて、ひょろながの男が後ろからやってきた。
「遅いぞ!」
「す、すいやせん……」
「まあいい。うまく戦闘に持ち込んでいる間に氷はいただいてしまうぞ!」
「へい!」
 二人の男はそういって、保冷車の中へと乗り込んだ。
 しかし、
「ぐべっ!」
「ゲフゥ!」
 乗り込みすぐさま、外へ放り出された。
「丸聞こえだ」
 ロア・ドゥーエ(ろあ・どぅーえ)が気だるそうに弓を構えて言った。
「丸聞こえアル」
 チムチム・リー(ちむちむ・りー)も野生の蹂躙を使用した後の体勢で馬鹿にしたように言った。
「中に人がいることを考えなかったアルか?」
 放り出された頭の男に向かってチムチムは言う。
「ぐぬぬ……」
「うるさい輩だな……」
 ゆらりとレヴィシュタール・グランマイア(れびしゅたーる・ぐらんまいあ)が立ち上がり、頭の男ところへと移動する。
「こんな下種の血など口にはしたくないが」
 そう前置きし、吸精幻夜を使う。
「や、やめろ、うわああああ!」
 絶叫を上げ頭の男は気絶した。
「イルベルリ、飲み物入れてくれ」
 ロアはパートナーのイルベルリ・イルシュ(いるべるり・いるしゅ)を呼んだ。
「レヴィシュタールは氷な。ドアが開いたせいで熱気が入り込んで暑い」
 淡々とロアは指示を出す。
「あー、そこのゆる族と、女も飲むか?」
 チムチムとクーラーボックスに絶えず氷術をかけていた和泉絵梨奈(いずみ・えりな)にもロアは声をかけた。
「チムチムももらっていいアルか?」
「それじゃあ、もらおうかな」
 絵梨奈はクーラーボックスの山に氷術をかける手を止めた。
「は〜……折角涼しい車内だったのに、扉開いちゃうと一気に暑くなるね〜」
「いや、ちょっと肌寒いくらいアルよ!」
 すかさず、チムチムが突っ込む。
「気ぐるみ着てるやつが言うことじゃないよな」
「ほんとほんと」
 ロアの逆突っ込み、絵梨奈は肯定した。
 そこで、保冷車のエンジンがかかる音がした。
 どうやら外も終わったようで、動き出すみたいだ。
「こいつら、暴れないように見ておいてくれ」
 静麻がそういって、投げ込まれる目を回して簀巻きにされている悪党たち。
 数が異常だ。
「しょうがないよね。正面から来た50人弱が散開して攻めてきたんだもん。そのうち半分が逃げ出して、さらにその半分は水場で伸びてるから放置してきて、残りがこれだけだもん」
 ミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)が補足した。呆れたようにため息をついている。
「氷のためにここまで必死になるって、ある意味すごいね」
 絵梨奈が素直な感想を漏らす。
 自分たちもある意味そうなのだが、それはおいておくとしたのだった。