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学園祭に火をつけろ!

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学園祭に火をつけろ!
学園祭に火をつけろ! 学園祭に火をつけろ!

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     ◆

 時刻は丁度昼食時。その頃スカイホリディの店番をしている面々は、と言うと――
「ちょ、待て待て! 全部でヨーグルトの注文何個なんだ!」
「誰か、このコーヒーあのテーブルに運んでくれないかな」
「ネーお姉ちゃん、これ盛り付けお願いなのですよぉ!」
「北都、コンロの火が怖いです……!」
 と、まぁ、こんな感じ。正しく『猫の手も借りたい』状況が続いていた。
「そう言えば、午前中はあと四人協力してくれる人がくるんですよね?」
 ネージュが、ウォウルから渡されたメモ書きを見て誰にともなく尋ねた。が、全員余裕がないのでその言葉に返事はなく、代わりに今まで聞こえなかった声がネージュに返事を返した。
「悪い! 人が多すぎてくるのに手間取っちまった!」
「道も、その……ちょっと難しくて迷っちゃいましたしね……」
 急遽ウォウルに呼び出された(本人に話が伝わる前から頭数に勝手に挙げられていただろう)黒崎 竜斗(くろさき・りゅうと)ユリナ・エメリー(ゆりな・えめりー)ミリーネ・セレスティア(みりーね・せれすてぃあ)リゼルヴィア・アーネスト(りぜるゔぃあ・あーねすと)が調理場にやって来ている。
「お待ちしてましたっ!」
 ネージュが『助かった』とばかりに呟く。竜斗、ユリナ、ミリーネ、リゼルヴィアは直ぐ様持参したエプロンを掛けながら、調理場の一同に軽く挨拶をして、早速何処に入れば良いかを尋ねた。
「調理に三人割いて貰えると助かりますわ、あ、樹様、それはまだ固まっていないのでその奥にあるやつをお出しくださりやがれですわ!」
「お、おう!」
 ジーナが竜斗にそう伝え、樹に指示を出す。樹も簡単に四人に挨拶を交わすと、ジーナの指示に頷いた。
「よし、俺とユリナ、ルヴィはこっちだな」
「あ、主殿! 私はどうすればよいのだ?」
「ミリーネは――」
「あ、ごめん。ミリーネさん。コーヒー注いでリオンに渡してくれるかな? 竜斗さん、ミリーネさん借りるよ」
「わ、わかった。これを注いでリオン殿に渡せば良いのだな! 心得た!」
「しっかりな! よろしく頼むぜ、北都! うっし、俺たちはユリナたちの補助に回るぞ! ルビぃ」
「うんっ! 頑張るよ!」
「リゼルヴィアちゃん、この台使うと良いよ! ボク外行けるから使わないの!」
「うん、借りるね。結衣奈ちゃん」
「ネージュさん、ジーナさん、舞衣奈さん。私はその……何を手伝えば――」
「これで人数は揃いやがったですわっ! ユリナ様、カレールゥとヨーグルトの補充分をワタシと共に作って下さいませ」
「が……頑張ります…!」
 と、まぁ――忙しなく動く調理場内。会話は全て用務内容だけの忙しさを見せる状態だったりする。外は外で、入れ替わりの激しさがあった。
「コタローちゃん、このカレー、あそこに宜しくね!」
「あいっ!」
 料理を頼まれたコタローは、懸命に大きな皿をお盆にのせて料理を運び、お客へと届ける。
「おまたしぇしました…かえーらいしゅ、れすっ」
「お、ありがとうな。可愛い店員さん」
「あー、ホントだぁ! 可愛いー! 頑張ってね」
「あ、あいっ、おにーしゃ、おねーしゃ、ゆっくいしれっれくらしゃい!」
「北都殿! これは何処に運べば良いのだろうか…」
「そのコーヒーはあそこに座ってる三人さんへお願いね」
「心得た、あぁ! それと、リオン殿、結衣奈殿! 先のカフェラテとミントティーは何とか出来た…筈だ! あすこに置いておいた」
「ありがとうございます、いただきますよ」
「わぁ、ホントだ! ミリーネさん凄いね!」
 ミリーネがちゃっかり準備していた注文の品物を二人がそれぞれお盆の上におき、運んでいく。
「なんだ、ミリーネ。がんばってるじゃんか。心配、要らなかったみたいだな」
 調理場でその活躍を耳にしていた竜斗がうっすらと笑みを浮かべた時、フロアから何か、嫌な音が聞こえた。
「ミリーネさん、大丈夫!?」
 北都の声が聞こえた。それを聞いた竜斗とユリナ、リゼルヴィアは思わず苦笑し、ため息を漏らしていたりする。
「す、すみませぬ! その……」
「大丈夫だよ。服とかにはかかってないし。それよりお姉さん、怪我とかない?」
「……大丈夫です。只今新しいものをお持ちします故――」
 豪快に転んでしまったミリーネが肩を落とし、再び調理場へと踵を返す。
「大丈夫? 怪我はないかい?」
「すまぬ……北都殿。何と申し開きして良いやら……」
「大丈夫だよ。それより怪我が無くて良かった」
「私が代わりにそ、注いで……北都、駄目です。やはり火が……」
「いいよ、リオン。僕がやるから。大丈夫」
 ミリーネと共にしょんぼりとするリオン。が、長いことそうこうも出来ず、二人は客の声に呼ばれ、直ぐ様注文を取りに行った。


 と、此処で店の入り口前。店の様子をただただ見ていたのは司、サクラコ、美羽、ベアトリーチェである。
「何か凄いな。この賑わいは……」
「何か入りづらいですよねー」
「んー、ちょっと待ってようか」
「でも席は空いてますし、此処で待ってるとお客さん、満員だと勘違いしちゃいませんか?」
 入るか入るまいか悩んでいた四人の後ろから、突然ウォウルが声をかけた。
「おやおや? どうしました? そんなところで立ち止まって。カレーライス、美味しいと評判みたいですよ」
 突然の声に驚く四人。
「やっぱりかぁ……その話し方はウォウルさんだと思ったけど、ビックリするからもっと普通に出てきてよ」
 安堵のため息か、はたまた呆れのため息か、美羽が大きく息を吐いた。
「細かい事は気にせず、ささ。中にどうぞ」
 半ば強引に背中を押された四人は、キョロキョロと辺りを見回しながら席に着いた。
「やっと帰ってきたの」
「えぇ、お客さん、結構来たんじゃないですか」
「来てるよ。ウォウルさんがんばりすぎ。人手が足りなくて大変だよ」
 帰ってきたウォウルと簡単に会話を交わした北都が、ウォウルと入れ替わるようにして四人の元へとやって来る。
「いらっしゃい。お昼御飯かな?」
「うん! ちょっとウォウルさんに相談事あったし、皆も頑張るって聞いたからさ。来ちゃったよ」
「大盛況ですね」
「まぁね。カレー、美味しいよ。って、あれ? そちらのお二人は?」
 北都、ベアトリーチェと話していた北都が、不思議そうな顔で司とサクラコを見た。
「あぁ、俺たちは――」
「あのね、空大生でね、先輩のツカサンせんぱいとさぁちゃん先輩だよっ!」
 司の言葉を遮った美羽。二人を満足そうにに紹介するのを、隣のベアトリーチェが苦笑しながらに聞いていた。
「………つ、ツカサンです。よろしく」
「あはは、もう司君、『ツカサン』で固定ですねー。どもども、さぁちゃん先輩ですよー」
 がっくり項垂れる司と、そんな彼の方をバンバン叩きながら面白がっているサクラコ。北都は笑顔で会釈し、四人にメニューを渡した。
「言わなくてもわかるとは思うけど、エプロンかけてるのが店員さんだから、決まったら呼び止めてねぇ」
「ありがと! 頑張ってね」
 言い終わり、四人に手を降りながら奥へと向かっていく北都に美羽が声をかけ、四人はメニューに目を落とした。
「へぇ、カレーって一品かと思っていましたけど、辛さが選べるんですか。本格的ですね」
「ほう、これは味に期待できそうな感じだな!」
「私、なに食べよーかな。あぁ、そうだ、今日は司君の奢りでお願いしまーす」
「いっ!?」
「あはは、さぁちゃん先輩良いなぁ!」
 すっかり打ち解けている四人は、客席で盛り上がっていたりする。