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【蒼空のフロンティア秋祭】秋のSSシナリオ

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【蒼空のフロンティア秋祭】秋のSSシナリオ
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リアクション


【近くて遠い、あの人へ−− 解答編】 〜 日下部 社&響 未来+東雲 秋日子&キルティス・フェリーノ 〜

「そうか〜。日下部君が、五月葉君のコトを好きだったとはね〜」
「確かに終夏さんとは前々から、『仲がいいな』とは思ってましたけど……」

 そう言って、顔を見合わせる御上 真之介(みかみ・しんのすけ)五十鈴宮 円華(いすずのみや・まどか)

 の相談とは他でもない、恋の悩みなのであった。
 社の想い人の名は、五月葉 終夏(さつきば・おりが)
 音楽と、人の笑顔をこよなく愛する女生徒で、ヴァイオリン奏者としても中々の腕前である。
 御上と円華は、今年の春頃から良く二人が一緒に行動しているのを目にしており、昨日のオラコンにも他の仲間たちと共に参加して、見事グランプリに輝いていた。

「ま、まぁ自分でも、ついこの間まで『いや〜、なんでコイツと一緒にいると、こんなに楽しいんやろな〜』とか思ってたくらいですから……。オリバーの恋の応援なんかもしてましたし……」
「え!終夏さん、好きな方いらっしゃるんですか?」
「いえ、それはもう終わったと言うか、心の整理がついたと言うか……そんなカンジみたいです」
「そ、そうなんだ。そっちはもう、心配しなくていいんだね」

 苦笑いを浮かべる御上。

「俺、前にも友達だったコを好きになったことがあって、でもその時は、結局言い出せなくて……。今度は、絶対に後悔したく無いんです!だから、お二人から、年上としての意見を聞かせてもらいたくて……。お願いします!」

 テーブルに額をつけんばかりの勢いで、頭を下げる社。

「そ、そんな!頭を上げて下さい、社さん!」
「もちろん、ボクたちに出来ることなら、喜んで協力させてもらうよ」
「私なんかの意見が参考になるか分かりませんけど……」
「トンデモありません、ホント、有難うございます!」

 社は、もう一度頭を下げた。

「それで、どんなコトが聞きたいんだい?」
「は、ハイ!まずは、年のコトなんですけど……」
「年……?もしかして、日下部君年下か!」
「そうなんですか!?」
「えぇ。俺が18で、オリバーが19ですから」
「あ、でも1歳だけなんですね」

 ホッとしたような顔をする円華。

「や、やっぱり、お嬢も年上がタイプなんか?」
「う、うーん。私は、特に年上とか年下とかにこだわりはないですけど、今の自分の年齢を考えると、あんまり下は困りますよね……」
「それは……まぁそうやな」
「よく『年上が好き』とか『年下が好き』とかいうけれど、実際に年齢そのものが条件になってる人っていうのは、滅多にいないよ。それは年齢が条件なんじゃなくて、年上や年下の人に一般に見られる性格や傾向を重視しているだけなんだ」
「『年上は、しっかりしてる』とか、『年下はカワイイ』とかですか?」
「そうだね。要は、五月葉君の好みのタイプに、日下部君がどの程度当てはまるかってってコトなんだけど……」
「ど、どうですか!」

 ガバッと身を乗り出す社。

「うーん……。ボクも、彼女の好みを知ってる訳じゃないからなぁ……」
「私は、結構お似合いだと思いますよ。社さんと終夏さん」
「そ、そうですか!?」

 パッと顔を輝かせる社。

「そうだなぁ。確かに2人とも好きな事はだいぶ被ってるみたいだし、その点はボクも評価するけど……。『友人同士の時はスゴく仲がいいのに、イザ付き合ってみると、上手くいかない』ってカップルも、良くいるからなぁ」
「やっぱり、そういうのってあるんですか!?」
「『一緒に遊んでいる時は楽しいけど、イザ付き合ってみると物足りない』とか、『価値観とか金銭感覚、生理的感覚が合わない』とか良くあるよ。後は、『ずっと一緒にいると鬱陶しい』とか」
「『う、鬱陶しい』ですか……。俺、テンション高いからなぁ……」

 途端に不安そうな顔をする社。

「あぁゴメン、今言ったようなコトは、取り敢えず付き合ってから心配すべきコトだね。今はまだ、付き合ってもらえるかどうかっていう話だからなぁ」
「確かに、まずは『異性として見てもらえるかどうか』が問題ですよね……」
「じ、実は悩んでるんですよね……それ。『本当に、好きんなっていいんかな』って」
「あ〜、大変なんですよね〜、その壁を越えるの〜。わかるわかる〜」
なずな!」

 いつの間にか、間仕切りの向こうから顔を出したなずなが、ウンウンと頷いている。

「あぁ、そうか。そういうコトは、なずな君に相談するがいいかもね」
「い、いつからいたんですか?」
「え?『やっしーが、オリバーを好き』ってトコロから?」
「めっちゃ最初からやないですか!!」
「なずな、未来さんはどうしたの?」
「あ、何か『急用を思いついた』とか何とかで、出かけられましたよ」
「急用……?なんや、余計なコトしてへんやろな、アイツ」


「へくちっ!……またマスターが、悪口言ってるわね〜」

 観覧車の影からカップルを盗み見ながら、呟く未来。


「ま、私から一言だけ助言するとすれば、『とにかく告白してみないと始まらない』ってコトですかね〜」

 自分の、幼馴染の神狩 討魔(かがり・とうま)への恋の話(目下、絶賛片思い中)を一通り話し終えた後で、なずなはそう締めくくった。

「それじゃ、なずなも言ったんか。討魔に『好きだ』って」
「言いましたよ〜。それはもう、何回も〜」
「それで、討魔は?」
「その度に『今の俺には、恋などにうつつを抜かしているヒマはない!』って。けんもほろろですよ〜」

 ケロッとした顔でいうなずな。
 断られた本当の理由が、『討魔が円華に想いを寄せているから』なのは、なずなもとうに気づいているが、それについては、なずなは口にしなかった。

「あ〜、いかにもアイツの言いそうなコトや〜」

 うへぇという顔をする社。

「でも、言ってよかったですよ。お陰でワタシ、『幼馴染』から卒業できましたし〜」
「そうなんか?」
「そうです〜。いくら自分がそうだからって、今まで友達とか幼馴染だった人に、何もしないで恋人に見てもらうのはムリですよ〜」
「で、でも、怖くなかったんか?その……『告白したせいで、仲が悪くなったらどうしよう』って」
「ぜ〜んぜん。そりゃ、一時期に気まずくなるコトはあるでしょうけど、それは仕方ないですよ〜。でも、自分が気にしさえしなければ、いずれ元に戻ります〜」
「そ、そうなんか?」
「そりゃそうですよ〜。だって、その人が『大切な人』なのは、変わらないですもの」

 さも当然という顔でいうなずな。
 なずなのその言葉に、御上が一瞬暗い表情(かお)をした事には、誰も気づかなかった。

「そっか……。そりゃ、そうやな……」
「です〜♪怖がらずに、言ってみるコトです。全ては、そこからですよ〜」
「さすがに、経験者の言葉には重みがあるね」
 
『さすが』という顔をする御上。

「なずなは、大人ですから」

 円華も、自分のコトでもないのに、どこか誇らしげな顔をしている。

『ピンポ〜ン♪』
「あ、お客さんみたいですね。ちょっと、行ってきます〜」

 そそくさと席を外すなずな。


「さて。他には、どんなコトが聞きたいんだい?」
「あ……と。ホラ、これから年末にかけてイベント事が目白押しやないですか?そこで、女性の意見としてどんな事が嬉しいかとか、教えてもらえればと思いまして……」

「そういうコトなら、協力しますよ!」
「ゴメンなさい、立ち聞きする気は無かったんだけど……」
キルティス!、東雲君!」
「御上クン、コレ!ケーキ作ってみたの!食べてみて!!」
「あ、有難う。それじゃ、皆で頂こうか」
「みんな……?ボクが食べて欲しいのは、御上クンだけだよ?」

 凄みのある目で御上を睨むキルティス。

「う、ウン。分かってるって……。ど、どうしたんだい、キルティス?今日はまた、一段と気合が入ってるけど……」
「あ、それなんですけど−−イタッ!」

(あの小娘の話は、言わないで!)

 小声で、秋日子に口止めするキルティス。
 なぎさが、御上獲得競争に名乗りを挙げたコトは、御上は知らないのだ。

「ど、どうしたの、東雲君?」
「いえ、ちょっと足ぶつけちゃって……」
「それじゃ私、お茶入れますね」

 などとひと頻り慌ただしくなり−−。


「さて、それでは改めて」
「しかし、やっしーが終夏さんを好きとはね〜」

 キルティスが感心したように言う。

「どんなコトが嬉しいって……やっしーも、終夏さんの好みはよく分かってるでしょ?」 
「それじゃ、今までと変わんないじゃないですか。やっぱり、イザ恋人となるからには、なんか変化をつけたいですよ」
「そ、そうですか?私は、基本的には、いつも通りでいいと思いますけど……」

 意外そうな顔をする円華。

「じゃ、応用的には?」
「お、応用……ですか?ロマンティックなトコロに行くとか……?」
「そうですね〜。ま、二人っきりでさえあれば、後は二人が楽しいコトすればいいんじゃないですか〜」
「二人とも、元々好きなコトは一緒だし、仲もいいしね。後はムードの問題なんじゃないかな?」

「なるほど……。ロマンティックにムード、と……。それじゃ、プレゼントなんかどうですか?」

 メモを取りながら、社が訊ねる。

「なずなは、若様から貰えればなんでもいいです〜」
「私は、心のこもったモノであれば……」
「また、『ミヤマヒメユキソウ』を取りに行っちゃうとか?」
「あれは、年が開けてからでないと……」
「終夏さんだから、楽器、と言いたいところだけど……」
「いや〜。楽器は考えたんですけど−−」
「却って、迂闊なモノはあげられないよね。かと言って、イイ物は高いし」
「そうなんですわ〜」

「それなら、絶対洋服よ、洋服!マスターが、オリバーと一緒にブティック行って、選んであげればいいのよ!」
「うわっ!ど、どっから入って来た、オマエ!」

 イキナリ話に割り込んで来た未来に、ツッコむ社。

「それで、夕日のベンチに並んで座って、キスするの!これで二人がいい『音』を奏でるコト間違いなし!カンペキよ!!」
「な、なんや?妙に具体的やな……。あ!さてはオマエ、また出歯亀して来よったんか!」
「い、一体何のコトかしら〜。それより『また』とは何よ『また』とは!失礼ね!」

「あ!でも洋服はともかく、二人でウィンドウショッピングするのは悪くないんじゃない?」
「『鉄板』ですよね〜。事前に終夏さんの好きなモノをリサーチしておいて、クリスマスに用意しておくとか」
「あ〜、アレって、自分からは『どんなのがスキ?』とか絶対聞かないで、彼女が『カワイイ〜』とか言ったのをさり気なくチェックしておいて、後でサプライズを狙うのがコツなんですよね〜」
「確かに、基本テクニックではあるよね」

 御上が頷く。

「な、ナルホド!参考になります〜」

「そ、そうなんですか?そんなテクニックが……」
「お嬢様も〜、少しは気にした方がいいですよ、そういうコト〜」
「わ、私は別に……」

 なずなの指摘にたじろぐ円華。



「御上く〜ん、ボクも、何かプレゼント欲し〜い!」

 突然、御上にしなだれかかるキルティス。

「ど、どうしたキルティスいきなり……。ん!この匂い……。ブランデーか!」
「ピンポ〜ン♪さすが御上クン!」
「い、一体ドコに……」
「あ、コレです。私の作ったパウンドケーキ。コレ、ブランデー入りです」

 秋日子が、皿に取り分けられたパウンドケーキを示す。

「え!パウンドケーキのブランデーで!?でも普通パウンドケーキって、どんなに入れてもせいぜい小さじ一杯くらいじゃ−−」
「そうなんですか?でも本には、『適量』って書いてありましたよ?」
「適量って、どのくらい入れたんですか?」

 真面目な顔で聞く円華。

「ボトルに残ってた分全部入れたから……半分くらい?」
「半分!?」
「それはちょっといくら何でも……うわ!酒臭さ!」
「あら、マスターダメ?ワタシ結構好きだけど、この味」
「ご、ゴメン!美味しくない?」

 秋日子は、すっかり真っ青な顔になっている。

「まぁ、コレはコレで〜」
「『美味しくない』というコトもないですよ」
「やっぱり、私は『うまずい料理人』なのね……」

 なずなや円華のフォローも虚しく、ガックリと肩を落とす秋日子。

(にしても、パウンドケーキだろ?加熱もしてあるのに……)

 必死にキルティスを押しのけながら、様子を伺う御上。
 確かにブランデー臭いが、だからと言ってこんなになるものだろうか?

「ねぇ〜、御上ク〜ン♪」
「わ、分かった!分かったから!」
「え!プレゼントくれるの!?」
「ウィンドウショッピングには付き合うよ。キミには、色々と世話になってるしね。でもプレゼントするとは約束しないよ。いいね?」
「え!デートしてくれるの!嬉しい、御上クン!」

 力いっぱい御上に抱きつくキルティス。

「分かったから、取り敢えず離れて!」

 −−などとすっかりグダグダになってしまい、うやむやのウチに社の悩み相談室は終わりを告げた。

「どうだい、日下部君。少しはさんこうになった?」

 半ばやつれた顔で言う御上。

「は、ハイ!色々勉強になりました!」
「頑張って下さいね」
「私も応援してるから!」
「また、何時でも相談に乗りますよ」
「安心して、突撃してくださいね〜♪なずなが、何時でも見守ってますから〜♪」
「あ、ワタシも〜♪」
「オマエらは、少し自重せんかい!」

 全力でツッコミを入れつつも、改めて、『絆』の有り難さを実感する社。

(これだけみんなが協力してくれたんや。絶対、無駄には出来へんで−−)

 社の心は、早くも想い人の元へと飛んでいた。