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ブラッドレイ海賊団2~その男、ワイバーンを駆る者なり~

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ブラッドレイ海賊団2~その男、ワイバーンを駆る者なり~

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●第3章 ブラッドレイ海賊団船に乗り込め

「んー、速度的には蹂躙飛行艇で上回れるけど……ま、毎回大暴れしても仕方ないし、今回はフォローに回るかな」
 “黒髭”海賊団の船で雇われてどれくらいの期間が経ったか。
 ジャガイモの皮むきにも大分慣れてきた伏見 明子(ふしみ・めいこ)は、ブラッドレイ海賊団の船へと近付いた旨の報告を受けると、己の蹂躙飛空艇を停めた場所へと向かった。
 相手側のレッサーワイバーン乗りたちの相手をする仲間たちと共に、飛び立つ。
 その途中で、夢野 久(ゆめの・ひさし)が船へと直接乗り込んで、甲板に出てきている海賊たちと対峙しているのが見えた。
「がんばれー、地球の姉妹が仕送り待ってるわよー」
 騒ぎで聞こえていないかもしれないが、そう声を掛けて、仲間たちの後方から、出てきたレッサーワイバーン乗りたちに向けて、いつでもレーザーを撃ち込めるよう梟雄剣ヴァルザドーンを構えた。



(光術で撃ち落とすことが出来るでしょうか? こちらに隙も出来てしまいますし、避けられる可能性も……)
 “黒髭”の海賊船の甲板に立ちながら、リリィ・クロウ(りりぃ・くろう)は飛び立ち始めた、ブラッドレイ海賊団のレッサーワイバーン乗りたちのことを見て思う。
 船上の敵だけでなく、空にまで敵が居るのはやっかいだ。
(……ひとつ、良い事を思いつきました)
 うん、と1つ頷いたリリィは、軽身功の力を使いながら、床を蹴った。
 軽々とした足取りで、マストを登ると、その勢いのまま、近付いてきた敵のレッサーワイバーンに向かって、飛び移った。
「うおぅっ!?」
 飛び移られた海賊が驚きの声を上げる。
「お前、どっから!?」
「存じても無駄なことですわ」
 応えるなり、リリィは拳を相手の腹部へと打ち込んだ。
「ぐあっ!」
 続けざまにもう1発。
 乗り手からの指示のないレッサーワイバーンが、揺れるように飛び回るけれど、リリィは振り落とされないよう、脚に力を入れた。
「……こンのっ!」
 咳を繰り返した後、海賊は片手で手綱を握り締め直し、レッサーワイバーンへと指示を送ると、反対の手に持っていた槍を握り直して、リリィへと突き出してくる。
 受けるように、ヘキサハンマーを繰り出した彼女は、そのまま鉄槌で海賊の身へと打ち付けた。
 その一撃が決め手となり、海賊は気を失う。
 手綱からも手が離れ、レッサーワイバーンの背を滑って宙へと落ちた。
 気付いたレッサーワイバーンが旋回し、降下していく。
「ここに留まるのは危険ですわね。次はどこへ行きましょうか……」
 脚に力を入れて振り落とされないようにしつつも辺りをざっと見回したリリィは一度マストへと飛び移り、それを挟んで対照的な場所に居た、別のレッサーワイバーンへと飛び移る。



――どうせ邪魔されるくらいなら、海賊退治をデートにしちゃえ。
 そう考えて、“黒髭”海賊団に協力し、雅羅の救出と、ブラッドレイ海賊団2番隊の討伐へと赴いたのは、セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)であった。
 パートナーのセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)とのデート中、ことごとく賊に邪魔されたのがキッカケだ。
「この前は海賊と戦って、今度は海賊と一緒に海賊と戦う……か。妙なことになったわね」
 そんなことを思いつつ、セレンフィリティは女王の加護の力で己の防御力を高めつつ、相手の船に向かって対物ライフルを構えた。
 構えたライフルを帯電させると、引鉄に掛けた指に力を入れる。
 電気を帯びた弾丸が放たれ、船に直接ダメージを与えた。
 船体が揺らぎ、慌てふためく海賊たちに向かって、乗り込んだセレアナが、素早くヴァーチャースピアを振るって攻撃を仕掛ける。
 雷電を帯びた攻撃を続けざまに2発受けた海賊は、腰に佩いた長剣を抜くと、反撃を仕掛けてくるが、ビキニやワンピースの水着の上に上着を羽織っただけの2人の姿を目の当たりにして、一瞬手を止めた。
「戦場で鼻の下伸ばしてると痛い目に遭うどころか命なくすよ!」
 その一瞬の隙を突いて、セレンフィリティが再び、帯電させたライフルから、弾丸を放つ。
「セレンてば、容赦しないのね。それにしても、デートにしては色気ないわね……無駄にあなたの格好だけは色気があり過ぎるけど」
 弾丸を受け、倒れ込む海賊を目に、セレアナが苦笑を漏らしつつ告げる。
「でもスリルはあるでしょ。それにセレアナだって人のこと言える?」
 セレンフィリティは、セレアナの格好を指差しつつ、訊ね返した。
「これはセレンがそうしろっていうからよ。私の趣味じゃないわ」
 返しつつもその姿にセレアナが恥じる様子はなく、鼻の下を伸ばしつつも襲い掛かってくる海賊に向けて、相手の防護服を突き破るほどの突進攻撃を仕掛ける。
「その割にはすっかり様になってるじゃないの」
 セレンフィリティも笑い返しながら、その海賊に向かって、電気を帯びた弾丸を撃ち込んだ。



「今だ!」
 “黒髭”の海賊船や個々に攻撃を仕掛けてきた学生たちへとブラッドレイ海賊団の海賊たちの注目が集まり、レッサーワイバーン乗りたちが5人ほど飛び立ったのを確認したレノアセフィーたちに声を掛ける。
「今回も、一儲けさせて貰うわよ。鋼鉄の白狼騎士団前へ!」
 セフィーの掛け声に、オルフィナエリザベータは頷き、ブラッドレイ海賊団の船の後方から、小型飛空艇を降下させた。
「何だ、貴様ら!?」
 彼女らの読みどおり、正面から来る“黒髭”たちに注目していたらしく、船の後方には数人の人影があるだけだ。
 オルフィナの小型飛空艇から、バーストダッシュを使って飛び降りたレノアは、驚きの声を上げた海賊に向かって、構えたバスターソードを繰り出した。
 勢いがつきすぎて、腕へと突き刺さったソードを力の限り薙いで、斬る。
「腕は鈍ってない様だな……」
 彼女の傍に下りたオルフィナが満足そうに頷いた。
 そして、近付いてくる女海賊に向き合ったかと思うと、彼女の背後に周りこみ、豊かな2つの膨らみを手に収めた。
「ふわぁっ!?」
 驚く女の声に、レノアが目を見張る。
「おまえは何をやっているんだ! 真面目に戦わないか!」
「俺に命令するんじゃねぇ!」
 声を荒げるレノアに対し、オルフィナが言い返す。
 そうしている間にも膨らみを弄んだり、耳朶を甘噛みしたりして、女の力が抜けたところで音速を越えた一撃を振るい、脚を斬って、身動きを取れなくさせた。
「この私を討ち取りたいなら、命懸けで来いっ! このインフェルミーナの姫騎士エリザベータ・ブリュメールが相手をする!」
 高速のダッシュで皆の前に出たエリザベータがブロードソードを構えた。
「女如きが、舐めやがって!」
 その言葉を受け、襲い掛かってくる海賊に向かって、剣圧を纏った攻撃を一度で2回繰り出し、痛みを与える。
 セフィーの構える綾刀から、聖なる光が放たれた。
 光は、エリザベータとレノアが向き合っていた海賊たちを貫き、倒す。
「宝物庫は何処かしら? ……と、それより、雅羅が心配ね。探すわよ?」
 その場に居た海賊たちを倒し切ると、セフィーたちは雅羅を探して、船内を駆け出した。