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第7章  聖域へ入る者


 裏山を進む生徒達は、朽ちた鳥居を発見した。
 向こう側には、長年のあいだ誰も踏み込んだ様子のない、草花の茂った空間が拡がっている。

「なんだかすごいの出てきたわね。
 こりゃあもう、くぐるっきゃないでしょ!」
「えぇ、私も一緒に行くわ」

 なにか異様な雰囲気を感じとり、足を止める生徒達。
 しかし使命感を持って、セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)が名乗りを上げる。
 恋人のセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)の手を握ると、一歩を踏み出した。

「よくわからないけれど、ワタシも行くよ!」
「わたくしの『一種の異界のような場所に、子どもたちが招かれ滞在しているのではないか』という推測も、あながち間違いではないかも知れませんね」

 つづいてノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)が、なんの恐れもなさそうに鳥居をくぐる。
 言いながらあとを追うエリシア・ボック(えりしあ・ぼっく)は、自身の予想に確信を持ち始めていた。
 ちなみに、ノーンとエリシアのパートナーである御神楽 陽太(みかぐら・ようた)は、ツァンダの自宅にてお留守番中。
 2人によると、久方ぶりのオフ日を愛しい妻とのんびりいちゃいちゃ過ごしているらしい。

「地祇といえば子どもの姿をしていますよね。
 もしかしたら子ども達と波長が合うのかしら。
 となると、いなくなった子ども達もこの森のどこかで地祇と遊んでいるのかもしれないわ」

 騎沙良 詩穂(きさら・しほ)も、期待をこめて鳥居をくぐった。
 つづいてその場にいたすべての生徒達が、その空間へと足を踏み入れる。

「あら、あれは……ノーン。
 行ってみましょうか」

 【殺気看破】と【ディテクトエビル】に【召喚者の知識】とかいうトリプルづかいの結果、エリシアの視界に飛び込んできた風景。
 お着物に身を包んだ子どもと、数人の少年少女達が遊んでいる。

「こんにちは!
 いなくなった子がいっぱいいるんだけど、地祇さんは行方を知らないかな?
 もしてがかりを知ってたら、教えてもらえると嬉しいな!」

 最初から決めつけるのではなく、あくまでも訊ねるかたちをとるノーン。
 気をよくしたのか、お着物の子が近寄ってきた。
 男の子か女の子かは、よく判らないけれども。

『……』

 無言のまま、その子は子ども達を指さした。
 やはり辺りで駆けまわっている少年少女達が、みなの探し人だったのである。

「ところで、あなたは『地祇』なのよね?」

 もうすべての者がそう思っているが、確信がない。
 ゆえに、セレンフィリティの問いかけはとても有効なものとなった。
 ひとつ、首を縦に振り墜とす。

「よし、じゃあみんなに伝えようかな。
 せっかくだから、HCは有効活用しないとねー」

 『銃型HC』をとりだすと、判明した事実だけを送信した。
 セレンフィリティから、情報拡散完了。

「普段、地祇として奉られていてなかなか遊んだりする機会がないから淋しかったのかな?
 けどいささかやり過ぎだし、もう少しほかにやり方ってものがあると思うの。
 いくら淋しいからって、勝手に連れていくのはよくないわよ」

 ちょっとだけ声音を強めて、セレアナが地祇を諭した。
 びっくりしつつ、しょぼんと表情を暗くする。

「ぁ、千歳飴、の袋。
 いなくなった子ども達は千歳飴を持っていたとか、なにかしら共通点があるのでしょうか」

 なにかを蹴飛ばして、詩穂は足元を覗いた。
 拾い上げ、自身の考えと照らし合わせてみる……ぽんっと両手を軽く打った。

「地祇さんに、子ども達も、疲れたでしょうからおやつにしませんか?」

 いいことを思いついたと、【貴賓への対応】をもって話しかける詩穂。
 『花柄ティーポット』と『メイド向け高級ティーセット』を並べたら、お茶を準備して。
 さらに【ティータイム】でお菓子を出して、【晩餐の準備】にてフィニッシュ。
 最高のおもてなしを、地祇と子ども達へ。

「ね、地祇ちゃん……って呼んでもいいかな?」
『む……』
 詩穂ね、地祇ちゃんにお友達になってほしいの〜」
『むぃ……』
「そういえば、実体を持ったままこの鳥居からは出られないの?」
『ふみゅ……少しなら、出られる、かも』
「じゃあ一緒に、麓のお宮さんへいきましょう!
 詩穂達の仲間がまだいると思から、会っていってよ」

 突然の誘いに、地祇の表情がぱっと明るくなった。
 詩穂や子ども達とともに、るんるん気分で山を下っていく。