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大空のトレインジャック!

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大空のトレインジャック!

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トレインジャック発生!

「全車両に仲間がいる! 妙な動きをするなよ」

表情も何も見えない覆面の奥からの声は落ち着いていた。テロリストらがサブマシンガンを構えると。一斉に乗客たちから呻くようなため息のような声が上がった。車内に恐怖と不安の気配が満ちる。

 そのころ、空京駅のニュースパネルでは、慌しい様子のアナウンサーが事件発生を告げていた。

「臨時ニュースです!!

 本日14:30分に空京から上野に向かっていた新幹線まほう号がトレインジャックされました。

 犯人は複数、新幹線外部から武力的に侵入した模様です。

 現在列車の運転席付近から煙が上がっているとの情報もあります。

 現在新幹線は空京の都市部上空5千メートルの位置に停止しております。

 犯行グループの人数や乗客、乗員の総数、安否はまだ解かっておりません。

 年末で帰省客も多く、満席に近い予約状況だったことはわかっています。

 犯人グループからは当局にメッセージが届いています。

 ”パラミタの刑務所に留置中の『グール』を1時間以内に開放せよ”というものです。

 『グール』とは複数の強盗事件などに関与したとされる人物です。

 昨月逮捕され、現在取り調べのためにパラミタの刑務所に収監されています。

 通称『グール』として知られていますが、本名そのほかの詳しい経歴等はまだ公表されておりません……」

アナウンサーはグールが過去に関与していたとされる、残虐非道な数々事件を次々と報道し、こういった場合に登場する識者が今回の事件について語っていた。曰く、空中の列車に強い衝撃があれば落下し、乗客乗員のほか落下先の都市部でも多大な被害が出るであろうこと、周囲すべてが空間で見通しがよく隠密行動による外部からの接近が難しいだろう。また、犯人側の要求の1時間以内では、警察や国軍は出動が間に合わないだろう。よく考えられたものである等々。

 現場付近に居合わせたたリネン・エルフト(りねん・えるふと)は、ワイルドペガサスの背でポータブル端末の緊急報道を見て呟いた。

「列車内なら武器は隔離されているから、心得のあるものでもすぐ取り出せないし人質も多い。

 制限時間も短く取っている。なるほどね」

ユーベル・キャリバーン(ゆーべる・きゃりばーん)が表情を曇らせる。

「また列車テロですか……最近、多いですわね」

リネンが髪をさっと後ろに払った。

「ま、テロリスト相手なら気兼ねなくやれるわね。年末は懐も寂しいし、少し稼がせてもらうか」

タシガンで義賊『シャーウッドの森』空賊団の頭目として知られるヘイリー・ウェイク(へいりー・うぇいく)は、4人の中で1人、レッサーワイバーンに騎乗している。

「渡りに船、ったら不謹慎だけど、年末の資金の足しになってもらいましょ!」
 
「チマい戦いは苦手なんだけどな……。ま、四の五の言ってる場合じゃねぇか!」

フェイミィ・オルトリンデ(ふぇいみぃ・おるとりんで)も普段ヘイリーから『エロ鴉』呼ばわりされる不真面目さのかけらもない様子で同意を示した。ヘイリーがはやるメンバーの手綱をとる。

「とはいえ、外部からの接近には警戒しているでしょうから、慎重にいかないと」

 向こうさんの人数もわからないし、死角を探しましょう」

「その武装、もしかして救出にいくつもりか?」

天城 一輝(あまぎ・いっき)が声をかけてきた。

「そうよ」

リネンが短く答える。

「偶然だな。俺もなんだ。協力しないか? こちらのチームにはあと2人いる」

長原 淳二(ながはら・じゅんじ)ミーナ・ナナティア(みーな・ななてぃあ)が、天城の後ろから現れた。長原は小型飛行艇を所持しているので、それが使えないかと考えていたのだが、なにぶん彼は隠密行動というのがニガテである。ミーナとどうしたものかと話していたところ、天城に声をかけられ、渡りに船と同道することにしたのだった。

「テロリストに感付かれないことが最優先だしな……俺たちに出来ることがあれば協力させてもらいたい」

ヘイリーは頷いて同意を示した。

「あのう、提案があるんですが……突入を考えているんですよね?」

ジェニファ・モルガン(じぇにふぁ・もるがん)が声をかけてきた。

「たしか空京新幹線は空間魔法で制御してる空間軌道を通ってるのよね?

 空間魔法の制御をしている魔法使いに頼んで、外部突入用の穴をピンポイントで開けてもらえないかな?

 以前に老魔法使いさんが学生達に協力してくれた事があったと聞いているので」

ジェニファのパートナーマーク・モルガン(まーく・もるがん)が頷いて言う。

「それに空間魔法の制御をしている魔法使いのところもジャックされてるかもしれない。

 様子を見に行ったほうがいいと思うんだ」

それを聞いたヘイリーが言った。

「あそこはセキュリティが何重にもある。一般人がおいそれとは近寄れない場所だよ。

 突然訪ねて行って、1時間以内にたどり着くのはムリだ」

長原も頷く。

「俺も身元確認がすごく厳重だって聞いたことがある。

 空京駅まででも、ここから片道15分。タイムリミット1時間じゃムリだろう」

「時間との勝負ですものね……」

ミーナが言った。

「俺たちは突入を考えている。そのサポートを頼めないか?」

天城が言った。

 「銃型HCを俺は4つ持ってる。

 1つあんたたちに渡しておくから、なにか情報があったら地上から連絡をくれないか?」

「わかりました、お引き受けします」

ジェニファが言い、マークも不承不承頷いた。

 長原らは天城のアルバトロスに乗り、リネンらと二手に分かれて、上空から死角を探し、突入のチャンスを窺って、待機することにした。