First Previous |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
Next Last
リアクション
「うぉおおおおおおっ!」
四谷 大助(しや・だいすけ)の乱射するピストルの音が響く。
弾はすぐに切れ、大助は慌ててパートナーの手を引き物陰に隠れる。
「はい」
雅羅・サンダース3世が手渡す弾を手早く充填させる。
その間にも容赦なく足音が近づいてくる。
「雅羅ぁ、オレ、約束する」
大助は跪くようにして雅羅の手を握る。
「絶対お前を守って、二人でここを出るって」
「大助……」
彼女の瞳を見て、誓う。
そう、絶対に守る。
その為なら、たとえ誰であろうと殺す。
この島に来てから何度も繰り返した決意を、再び心に誓う。
「いいえ」
「え?」
意外な彼女の返答に、一瞬身体の力が抜ける大助。
その瞬間、大助の手から、ピストルが消える。
雅羅の手に。
「大助を守るのは、私。あらゆる災厄から、あなたを守り切ってみせる」
「まて、雅羅。これは『命令』だ! 隠れているんだ!」
「嫌よ」
まるで氷のような彼女の言葉。
それに反論しようとした大助の口は、次の瞬間塞がれた。
「……っ」
「あなたが、隠れてて」
ピストルを持って敵の前に躍り出る雅羅。
雅羅に向かい、日本刀が煌く。
まるで踊るようにそれを避ける雅羅。
「死ね死ね死ねえええっ! セレンを殺そうとする奴は、死ねいや殺してやるうっ!」
セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)を後ろに庇うように立つ、セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)だ。
「死ぬのはあなたよっ!」
日本刀の間をぬって、ピストルをセレアナに向ける雅羅。
「セレアナあっ!」
雅羅の身体が揺らぐ。
恋人の危機に、セレンフィリティが石を投げたのだ。
「死ね死ね死ねっ!」
「雅羅ああああっ!」
セレアナが振り上げた日本刀は、雅羅には当たらなかった。
雅羅を抱きしめるようにして庇った大助が、全て受け止めたから。
背中で。
「大助……大助、いやあああああっ!」
雅羅の顔が自分のチョコレートで汚れるのを見ながら、大助はほっと息をつく。
雅羅を汚すチョコが、全て自分のものであることに安心して。
「ごめん、雅羅……約束、守れそうにない……」
「いいえ、ごめん、ごめんなさい! 最初に約束を破ったのは、私だもの。やっぱり、私には幸せになる資格なんてなかった! ごめんなさい……っ!」
涙を流す少女を前にして、大助は顔を曇らせる。
切られたことより、この次に雅羅に襲い掛かる運命より、彼女の涙を見るのが辛い。
「雅……」
そこで大助の言葉は途切れた。
雅羅の涙も。
大助の背中から雅羅の胸へ、日本刀が1本、串のように刺さったから。
セレアナの日本刀だった。
雅羅と大助から流れ出るチョコレートが、セレアナの身体を汚す。
セレアナは、それを嫌がるでもなくただただ立って浴び続ける。
どこかうっとりとした様子で。
「セレアナ……」
セレンフィリティが声をかけると、セレアナは自分の身体にかかったチョコを舐めた。
「……甘い」
「そう」
「……セレンと、した時と同じ味がするわ……」
「ん……」
恋人の胸に、子供のようにもたれかかるセレアナ。
それを静かに受け止めるセレンフィリティ。
「セレン。私、好き?」
「ええ」
「大好き?」
「ええ」
「……」
次にセレアナが何を言おうとしたのかは、誰にも分からなかった。
永遠に。
セレアナの背中に鉈が突き刺さったから。
セレアナに致命傷を与えた鉈は、すぐさまセレンフィリティの息の根も止める。
皮肉にも、それは彼女が大助と雅羅を殺害したのと全く同じ構図だった。
「ははははは! ねえねえリリィ。邪魔者を片づけたよ! 早く先に行こう」
「うん。マリィの言う通りだよ。リリィのためなら、あたし達何でもするからね」
「ありがとう。あぁ、マリィ、こんなに傷だらけになって、痛々しい……」
リリィ・クロウ(りりぃ・くろう)とそのパートナーの ナカヤノフ ウィキチェリカ(なかやのふ・うきちぇりか)、マリィ・ファナ・ホームグロウ(まりぃ・ふぁなほーむぐろう)だった。
マリィが鉈を持って、血路を開いている最中らしい。
「さあ行くよ!」
「待って、マリィ」
先を促すマリィをリリィが引き止める。
マリィの右腕をじっと見つめる。
そこには小さくない傷口があり、チョコレートがだくだくと流れていた。
リリィは黙って自分の服を裂き、マリィの右腕を止血する。
「リリィ」
「……わたくしにできることが、これ位しかなくてすみません……」
「リリィ……」
目を丸くして、黙ってリリィを見ていたマリィだが、やがてその唇がにやりと歪む。
「……いいや、あったよ。やって欲しいことが」
「何でしょう?」
「死んで」
「え?」
「あたいは……あたいはずっとリリィをぶっ殺したかったんだよぉおお!」
「いやぁああっ!」
リリィは目を瞑る。
しかし、いくら待っても衝撃は来ない。
不思議に思ってそっと瞳を開けてみると……
そこには、ウィキチェリカの頭を潰すマリィの姿が映った。
「え、あら……?」
「まずは邪魔者を殺る! 次に、あんただリリィ!」
マリィの鉈が閃く。
まるで野菜のようにあっさりと、リリィの頭は潰れた。
「あはははははっ! やった、やった……」
からからと笑うマリィ。
その瞳からは水分が流れ続けている。
「あはははは……ん?」
マリィの足元に、何かが流れてきている。
茶色い物体……つい先程までウィキチェリカだったチョコレートだった。
「ちょ、邪魔だよ」
チョコレートは、まるでマリィを飲み込もうとするかのように足に絡みつき動かない。
マリィの動きが封じられた、その時。
マリィの身体は、鋭いもので貫かれた。
竹槍だった。
「ったくもー空気読んでよねっ! いちゃつくカップルを殺すのはボクらの仕事なんだからっ」
ぷんすかと膨れるミリー・朱沈の後方で、フラットが笑いながら次の竹槍を構えていた。
四谷 大助:死亡
雅羅・サンダース3世:死亡
セレンフィリティ・シャーレット:死亡
セレアナ・ミアキス:死亡
リリィ・クロウ:死亡
ナカヤノフ ウィキチェリカ:死亡
マリィ・ファナ・ホームグロウ:死亡
First Previous |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
Next Last