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Cf205―アリストレイン―

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9.殺戮者たちの邂逅
――、豪華寝台車


「こちらは危険です。セレモニー車両には近づかないでください!」
 車掌が必死に訴える。ドアの向こうでは、未だにパラミタ十字教団との交渉がなされていた。
 ロックされたドアから入ることはできなく、何人かのセレモニー参加者は立ち往生を食らっていた。
「トレインジャックとは間の悪い」
 鉄心はため息をついた。現状がどのようなものかはαネットワークを通じてわかっている。
 セレモニー車両へと戻ろうとしていたローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)
エシク・ジョーザ・ボルチェ(えしくじょーざ・ぼるちぇ)も窓から中を覗き見、聞き耳を立て、十字教団の目的は知っている。
「アリスなんてありふれた名前」
 エシクの意見も尤もで、この名前は英語圏内では珍しくもなんともない。日本人女性にも付けられるし、氏名両方にアリスとつく人もいる。
 サツキが言う。燕馬のもとに戻れないならしかたがないと。
「ひとまず、そのアリスという人を探してみます」
 鉄心もアリスを探すことにする。アリサとは別の人物を検討する。
「まさか、アリサのことを言っているいるわけじゃないだろう。俺らはA太郎に何かしらないか聞いてみる」
「一口A太郎……まさか、彼の実名がAlice太郎なんてことはないよね?
 エシクの冗談に、「まさか」をローザマリアも重ねる。
「でも、そいつに聞いて見る必要はありそうね色々と。確かここの3号室に入るのを見たわ」
 ローザマリアはA太郎とすれ違った時の記憶を頼りにそう言った。
「では、彼の部屋におじゃまするとしよう」
 鉄心とローザマリアたちは3号室へと入る。
 廊下には、サツキとフィーアが残った。
「私たちは他をあたりましょう。さて、どうやって探す?」
「フフーフ、クライヴェイヴィー、フィーアに任せるですぅ!」
 得意げに答える。何をするのやら。


「開けて! 開けてですうぅ! フィーアのアリスちゃんどこですかぁ!!」
 泣き叫び、客室のドアを叩きまくるフィーア。本当に泣いているわけじゃない、つまりは、
「嘘泣きして、乗客を泣き脅すってこと……」
 しかも当てずっぽにだ。サツキはため息を吐いた。
「お客さん! 他の乗客の迷惑になりますから! どうかやめてください!」
 車掌さんにも苦労をかけるとサツキの心は痛んだが、非常事態だからしかたないと納得するしかなかった。
「……っち、反応しやがらないですぅ」
 舌打ちしたら、次の部屋の前で演技開始。
「アリスちゃんどこですかぁ〜!! ふおぁ……!?」
 突如と叩いていた扉が開き、勢い余ったフィーアの体が前のめりになった。出てきた女性の膝下に激突した。
「大丈夫!? 怪我はない?」
 女性はしゃがみ込み、グズるフィーアを優しく心配する。
「フィーアのアリスちゃん……どこぉ……」
「アリスちゃん?」
 こんな人まで騙さないといけないのかと思うと、更にサツキの心が痛くなった。
「ええっと……そいつの人形なんですけど……どこかで落としたみたいで……」
「まあ、そうなの? かわいそうに……わたしも一緒に探してあげます。だから泣かないで」
 女性はフィーアの頭を撫でる。
「そこまでしなくていいです! 自分たちで探しますから!」
 あまりに献身なものだから、サツキは慌てて協力を断った。しかし、女性は首を横に振り言う。
「いいえ、これも神のお導きのような気がします。わたしも名前が”アリス”なんですよ?」
「――え?」
「――え?」
 サツキとフィーアが驚く。
 女性が自己紹介を述べる。