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【新歓】みんなで真・魔法少女大戦!?

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【新歓】みんなで真・魔法少女大戦!?
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stage11 魔法少女の宴


 生徒達は戦いが終わり、甲板で疲れた体を休める。
 じきに戦艦の存在に気づいて調査団がくるだろう。それまではまったりした時間を過ごそうというのだった。

「ああ、もうっ!
 戦いが終わったていうのに全然元に戻らないじゃないのよ!」

 戦いが終わってもなかなか元の姿へ戻れないことに、リカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)は苛立っていた。
 一生自分が嫌いなアライグマの姿のままなのではないかと、リカインは不安に感じてきていた。
 すると、目の前に白い毛玉ケセラン・パサラン(けせらん・ぱさらん)がふよふよ浮きながら移動してきた。

「なにこれ?」
「ワタシは時の旅人……」
「うわっ、しゃべった!?」

 ケセランを突いていたリカインは、突然の声に腰を抜かしていた。

「ワタシは時の流れに逆らうはぐれ者。
 互いの道標となってはみませんか?」

 リカインは首を傾げた。

 どうやら、何か協力を求めているみたい。
 まぁ、暇だったら手伝ってあげてもいいんだけど……。

「ごめんね。今はどうやったら元の姿に戻れるか、それ考えるのに精一杯なの。
 だからあなたを手伝うのは無理。また今度ね」

 立ちさろうとするリカイン。
 するとケセランは落ち着いた声で、リカインの背中に語りかけた。 

「苦悩する者。我と契約せしは、未来を開くことできるでしょう」
「え?」

 リカインはケセランの言葉に慌てて振り返ると、近づいて両手で捕まえた。

「何それ!? それって元に戻れるってこと!?」
「……」
「だんまりか……まぁ、いいや。
 可能性があるなら試すだけよ!
 手伝うわ! 何をすればいい?」

 リカインはそのままケセランの指示通り、パートナーとしての契約を結んだ。
 そして……

「って結局戻んないかい!?」

 リカインが吹き飛ばすとケセランは木にぶつかって跳ね返ってきた。
 転がりながら戻ってきたケセランを見下すリカイン。

「ああ、なんかその毛玉姿むかつくわね。
 サッカーボールにでもしようかしらね」
「しかれば……」

 ケセランの外見が男性の姿に変わる。
 リカインは飛び出さんばかりに目を見開いていた。

「えぇ!? あんた人だったの!?」
「それは触れらても、心が触れられない虚像なのです」
「???」

 それが実体のある立体映像であることを、リカインがケセランの言葉からは理解することができなかった。


「わんこ、もう全然元気だねぇ」

 崎島 奈月(さきしま・なつき)が膝の上にのせた≪ケルベロスの幼体≫を撫でる。
 つるつるした黒く光る体表はひんやりしていて、指を押し込むとまるで赤ん坊の頬のように柔らかかった。
 
「楽しそうだねぇ」

 そこへモモンガ姿のヒメリ・パシュート(ひめり・ぱしゅーと)がやってくる。
 ≪ケルベロスの幼体≫は目の前に座り込んだヒメリを赤い瞳でじっと見つめていた。
 ヒメリも不思議そうにじっと見つめ返す。
 まるで何かの意志疎通をするかのように見えていた。
 そして、≪ケルベロスの幼体≫はふいに大きな口を開いた。

 ――パクリっ

 ヒメリの上半身が飲み込まれる。

「あ、ああ〜」
「だ、だめだよぉ。食べ物じゃないよぉ!?」

 奈月はヒメリを一生懸命救出しようとするが、≪ケルベロスの幼体≫はなかなか銜えたまま離してくれなかった。
 そんな中、奈月のお尻の下から想詠 夢悠(おもなが・ゆめちか)が苦しそうな声をあげる。

「あの、はしゃぐの、は、いいんだけど、できれば、オレ、の上、意外、で」
「あら、いいんじゃない? 今の夢悠は座布団なんだから、使われて当然。
 むしろ使ってもらえないと残念。でしょう?」
「そ、そんなぁ」

 想詠 瑠兎子(おもなが・るうね)の言葉に、夢悠はショックを受ける。
 座布団のマスコットになった夢悠が他人に敷かれ困っている姿を、瑠兎子はなんだか楽しそうに見つめていた。
 すると、瑠兎子は夢悠の身体が光り出したことに気が付いた。

「あれ、なんで夢悠光ってるの?」
「え? オレも?」
「オレもって……うわっ、なになに、何が起きてるの!?」

 周囲を見渡せば生徒達全員の身体が光り輝いていた。
 瑠兎子は慌てて自分の身体を触りながら、光り出す物がなかったか考えた。けどこんな風に身体全体が光る物など思いつかない。
 そんな生徒達が戸惑う中、原因を知っている魔法少女アウストラリス(アイリ・ファンブロウ(あいり・ふぁんぶろう))だけは、冷静にお茶を飲んでいた。

「皆さん落ち着いてください。
 それは皆さんに害のある光ではありません。ただ、≪アイリの限定契約書≫の効果がきれようとしているだけなんです」
「え、きれるって……」
「普段の姿に戻るのです。魔法少女の方は服が元に戻ります。マスコットになっている方は……ポッ」

 アウストラリスが頬を赤く染めていた。
 マスコットになった生徒達は事情を理解し、慌てて人目のつかない所へ散っていく。

「みこと、みこと、一緒について来て!
 着替えている間に誰か来たら大変だから!」
「あ、はい。わかりました」

 早乙女 蘭丸(さおとめ・らんまる)も退魔少女バサラプリンセス(姫宮 みこと(ひめみや・みこと))を連れて艦内に入っていく。

 そんな中、布だけになっている月詠 司(つくよみ・つかさ)が、シオン・エヴァンジェリウス(しおん・えう゛ぁんじぇりうす)に掴まれながら不安そうにつぶやく。

「あの、シオンくん。僕はちゃんと元に戻れるのでしょうか?
 戻ってみたら内臓とか飛び出してたり、顔が裂けたりとかしてないでしょうか?」
「あはは、そんなことになってたらツカサ死んじゃうよ♪」

 司の不安を余所に可笑しそうに笑うシオン。
 身体から発する光が激しく点滅を始め、まもなく契約が解除されることがわかった。
 不安が高まり、鼓動が速くなる。
 最悪の結末を想像したら目の前が真っ白になりかけた。
 
 元に戻る瞬間、司は起こりうる惨状を目にしたくなくて瞼を閉じた。

 ≪アイリの限定契約書≫の効果が切れる。

「…………」

 ――足の裏に感触があった。
 冷たい鉄の感触だ。
 司は不安を感じながら自分の顔を触ってみた。
 頬があり、鼻があり、口も目もある。どこにも問題はなさそうだ。
 次に身体を触って確認した。
 中身が飛び出しているということはない。
 どこも問題はなさそうだった。
 痛い所もないし、ちゃんと身体は動いてくれている。

「ぶ、無事……」

 ゆっくりと目を開けると、目の前に立つシオンがじっと見つめていた。
 身体が無事だったことで瞳が涙で潤む。
 
 次の瞬間、思わずシオンに抱きついてしまった。
 
「やった! やりましたよ! 見てくださいシオンくん!」
「何を?」

 きょとんとした表情のシオン。
 司はシオンから離れて両手を広げて見せた。

「私の身体をですよ! ほら、全然問題ないでしょう!
 まさに健全な状態ですよ!」

 一回転してアピールしてみせた司。
 すると、シオンの視線が顔から段々と下がり、股間に注がれる。

「ふふ〜ん。そうみたいね〜」

 司もその視線を追いかけるように首を傾けた。

 そこには、すっぽんぽんな司の身体があった。
 周囲からどよめきと叫び声が聞こえる。
 そして司は――

「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! ごめんなさぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 涙を流して走り出した。みんなの痛い物を見るような、蔑むような視線から逃げるように……
 司は称号『公然的の健康体』を手に入れた。

 
 戦艦の一室で、みことはドアの前に見張りをしていた。
 すると、室内から蘭丸の声が聞えてくる

「み・こ・と♪」
「大丈夫です。誰も来ていませんから」
「そうじゃなくてぇ〜。こっちに来て……」

 みことはドアの隙間から伸びた蘭丸の手に引っ張られ、室内に強引に連れ込まれた。
 
「な、なんですかいきな――!?」

 言葉がそれ以上喉から先に行かなかった。
 一糸纏わぬ蘭丸が肌をみことに密着させてきた。

「ねぇねぇ、いいでしょう?」

 何が? と問いかけたくなるみことだったが、室内を見渡してその意味をすぐに理解した。

 部屋の中央になぜかダブルベッドが用意されていた……。
 どうしてもここで着替えると言い張ったのか、理由が今分かった。

 顔を真っ赤にしたみことが、蘭丸の細い肩を掴んで引き離す。
 みことはしどろもどろになりながら蘭丸を説得しようとする。

「あ、あのね。こういうのはちゃんとした順序というものがあって……それに、ボクには代々神社の家系で……」
「いいじゃない。ちょっとくらい、ねっ。
 ほら、キスしよう……」
「あの、その……すいません!」
「あっ……」

 みことは目を瞑ってキスを迫る蘭丸から逃げ出していった。
 その背中を見つめ、蘭丸は頬を膨らませていた。