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【蒼空ジャンボリー】 春のSSシナリオ

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【蒼空ジャンボリー】 春のSSシナリオ
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リアクション


「きみとぼくとの一夜漬け!」


 これは夢……。
 それは……、私立シャンバラ教導団中学校に通う平凡な男の子、ルース・マキャフリー(るーす・まきゃふりー)(実年齢:38歳)が26年生になった初夏の夜のことでした。
 どうして中学生なのかって、先生に勉強を教えてもらうためです。
大人になると誰も何も教えてくれません。それどころか、ルースの場合国軍の大尉様です。大尉って結構偉いんですよ、教える側の人間なわけです。
 そんな彼が、『GW明けにテストだ〜、一夜漬けしなきゃ!』なんて話に混じっていこうとすると中学生になるのが適していると思われたからです。幸いなことに、彼はまだ心も身体も15歳のつもりです。まだまだいけます、いや今夜こそ「全力で行く!」のです。
『先生……ボクの答えは間違ってましたか……?』
 数学の教科書の開かれた勉強机の前で、中学26年生のルース中年は家庭教師のナナ・マキャフリー(なな・まきゃふりー)先生から魅惑のプライベイトレッスンを受けていました。一生懸命勉強しているのに、数学の答えがいつまでたっても合わないのです。
 ビキビキと見開かれた目が、血走った瞳が、すぐ隣のナナ先生の胸の谷間をまじまじと確認します。清潔な白いブラウスの奥に男を魅了するような黒いセクシーな下着が透けて見えておりまする!
『だって、そのたわわな半球が、さっきよりも明らかに弾力を増しており体積があわないです! 再計測させてください!』
 勉強熱心なルース中年は、両手をわきゃわきゃと動かしながらナナ先生に飛びかかろうとしますが、あっさりとかわされてしまいます。そのむちむちぷりぷりなけしからんナイスバディの動きを見れただけでも眼福でございますが。
『だ、め、です。だって今日は、球の体積の求め方のお勉強じゃなく、円柱の体積の求め方をお勉強なんですもの。……図面だけではイメージできないですわよね。どこかに円柱のものはないでしょうかぁ? ……おや、これは……?』
 普段の彼女からは考えられない色っぽい声使いと共に、ナナ先生は円柱の実物を探します。まさぐるその手が、ちょうどよい大きさの円柱物体を、えいと掴みます。ルースの下半身から突起しているそれは……?
 おおうっ!? とそのチョイスにうめき声を上げるルース中年。
『せ、先生……その円柱はダメですぅ。それは俺の自慢のジャンボ! しょっちゅう体積が変わって参考になりませぬぅぅぅっっ!』


「ぐふふふ……、俺は中学生……将来の夢はパイロット! 俺のジャンボがナナ先生をフライトさせるぅぅぅぅ……むにゃむにゃ……ハッ……!」
 意味不明な寝言を呟いてから、ルースは目を覚まします。
 どうやら夢を見ていたようです。
「あれ……いけない、ナナ先生は……?」
 倒れていたルースは半身を起こして辺りを見回します。そして、思い出したのです。
 ここは、明日のテストに備えて勉強したい子達が集まっていた合宿所。といっても、近所の民宿の一室を借りただけだったのですが。
 そこで、人妻眼鏡メイド教師として、全力で生徒たちを指導していきたいとやってきていた、ナナ先生。
 彼女の夫であり、最近コミュニケーションに飢えていたルースが彼女を見つけて近づいていったのです。
「そんなにツンツンしていないで、つんつんしようぜ!」
 愛情をたっぷりとこめたルースのラブ・フィンガーがナナの胸の膨らみの先につんつんと触れようとした瞬間。ナナと一緒にいたミス・ブシドー音羽 逢(おとわ・あい)に床に叩きつけられ、しばし気絶していたのでありました。
「拙者以外の不逞の輩がナナ様に手を出そうものならば、捩じ伏せるのみ。たとえ、現亭主であろうと! 言っておくがこれは体育の授業である」
 逢は、大切な存在であるナナにけしからん真似をしようとするルースをくわっと威嚇するように睨み付けてきます。彼女、目がマジです。
 ナナ先生に指導されるのは自分のみと、目一杯縄張りを主張してきます。
「……俺、亭主なのに……」
 その殺気にちょっぴりビビったルースが、ぶつぶつ言いながら部屋の片隅に膝を抱えて座り込んでしまいました。全身にドンヨリと負のオーラをまといながらも捨てられた子猫みたいな目つきでじっとナナたちを見つめてきます。
「あ、あの、大尉(笑)……、大丈夫ですか……」
 心配そうに声をかけてくれる優しい娘さんがおりました。
 今回、一夜漬けのためにここにやってきた、男装女子にしてシャンバラ教導団第四師団輸送隊に属する国軍兵士の大岡 永谷(おおおか・とと)です。彼女は、ナナ先生たちと机を囲みながらもルースにちらちらを視線を向けて気にした様子です。軍規を重んじる真面目な彼女にとって、例え所属が違えども大尉というのはとても重要な地位を占める現場指揮官の一人です。決してエロにやけた中年男であってはならないはずです。緊張の面持ちで、気を使います。
「隣空いてますから、よろしかったらどうぞ、大尉(笑)」
「今、また『(笑)』って言った……」
「あ、いえそう言うつもりでは……」
 永谷は慌てます。軍の中では大尉に睨まれたらおしまいです。なのに、なぜか彼を見ていると語尾に自然と『(笑)』が付いてしまうのです。
「まあいいし……別に俺そんなこと気にするほど心狭くないし……そもそも俺勉強するためにここに来たんじゃないし……別にかまってほしいわけじゃないし……」
 ルースは膝を抱えナナや永谷をじっとりと見つめながらそんなことを言い始めます。
 この年のオジサンは見た目以上にナイーブなのです。そこそこの地位につき中間管理職として経験を積んできたものの、はたして部下たちから信頼され慕われているのだろうか、上官からの受けは悪くないだろうか、自分はしっかりと仕事はできているだろうか、実は陰で悪口を言われていたり仲間外れにされているんじゃなかろうか……などと、心配のタネは尽きないのです。
「ああ……パイロットになったほうが良かったな……俺のジャンボが離陸寸前だし……。やっぱり嫌われてるんだ、俺……このまま戦死して二階級特進で中佐(笑)になっちゃおうかな……って、自分でも『(笑)』つけてるし……」
「どうして今日に限って面倒くさい人になっているのですか、あなたは……?」
 ナナ先生はちらりとルースに目をやるものの、冷たく突き放します。男の子はあまりちやほやとかまってはいけません。自立するまで長い目で見てやるべきです。よい教育方針です。
「ところで、さっきからチラチラこっちを見ていますけど、どこかわからないところでもあるのですか?」
 ナナ先生は、机を囲んでいる永谷に視線を移します。胸元が少し見え隠れする白ワイシャツにタイトスカート、そしてメガネと、カンペキな教師スタイルの彼女なのですが、その格好に何か言いたいことでもあるのでしょうか。
「私の『密着指導』がご不満でしたか? 確かに私が蓄えている知識はメイドとしてのものです。あまりあなたの期待にこたえられないかもしれませんね……」
 そんなこととを言いながら、ナナ先生は谷間を強調しつつぐいぐいと迫ってきます。
「い、いえあの……一人で自習できますから」
 永谷は困った表情で口ごもります。外見は精悍さを備えた男の子ですが、中身は女の子なのです。特に変な趣味があるわけでもなし、自分も持っているものと同じものをアピールされても困るわけです。それとも大きいほうが偉いとでも言うのでしょうか……。
「他の子たちの様子を見てあげてください。俺は、大丈夫ですから……」
 国軍の上官一家を無下に切って捨てるわけにもいかず、永谷は丁重にお断りします。ぶっちゃけ、こんなところでジャンボを眺めているわけにはいかないのです。.
 ですが、逢には効果があったようです。
「くっ……! このブシドーの集中力を持ってしても、その御身を眼に焼き付けて置く事が出来ぬのならば……」
 ナナ先生をまじまじと見つめていた彼女は、ハァハァと息遣いを荒くしながら迫ってきます。ナナ様の女教師姿も麗しく……拙者、ナナ様に指導されるならばどのようなことでも、成し遂げて見せるで御座る!! と息巻いていた彼女、忍耐力が意外と残念です。いや、ナナ先生がそれほど魅力的ということでしょうか。
「ナナ様! もとい、先生! 身体の仕組みについて実演願いたく!」
「教育的指導!」
 体罰ではありません。保健体育を通じての身体の仕組みをその身をもって教えてくれているのです。
「……ああ、ああ……っ!」
 痛くされた逢は、その場に正座しつつも恍惚とした表情を浮かべます。
 まあそれはさておき。
「……」
 永谷は見てみぬフリをしながら勉強を続けることにしました。
 前途有望な彼女は、テストを落とすわけにはいきません。他のことを学ぶ機会が失われては大変と、今夜のうちに決めてしまう覚悟です。まずは基礎を反復して復習する方向から……。
「……」
 しばらく教本に向かっていた永谷は顔をあげます。まだ膝を抱えて座り込んだままのルースに対して、意を決して声をかけます。
「大尉(笑)、もとい……大尉、お願いがあります!」
「……なんだ?」
 やる気のなさそうな声のルースに、永谷は立ち上がり、ビシリと敬礼します。
「教本のこの部分、わからないので教えていただけないでしょうか!」
 ああ、なんというソツのないことでしょうか。真面目な永谷は上官の面子を潰したままではいけないと、敢えて質問をしたのです。
 上官は部下に教え答えてやることで面子も立ちますし、また偉そうに説教をすることによって、上下関係をはっきりとさせることが出来ます。
『全くバカだなぁ、お前は。こんなこともわからないのか、そもそも俺がお前くらいの年齢の頃には……云々……』
 などとクドクドと説教をするのが好きなのです、この年頃の男は。そしてそれを黙って聞いてあげることで気も晴れます。なかなかの処世術です。
「……うむ、そうか仕方がないな……」
 案の定、気を取り直したルースが重い腰を上げて傍までやってきました。永谷が使っていた教本をひったくるように手に取り、説教を始めます。
「全く、こんなこともわからないのか。今回は特別に教えてやるが、軍隊はそんなに甘くは……」
「……?」
 説教を黙って聴こうとしていた永谷は、不意にルースの言葉が止まったので恐る恐る様子を伺います。
「……くっ」
 あろうことか、ルースは教本に目を落としたままじっとりと汗をかいておりました。敵に取り囲まれたような窮地の表情です。
「なんて……こった! ……十年前に戦場で受けた古傷が、今になって疼いてきやがったぜ……!」
 がっくりと膝をつき、脇腹の辺りを押さえて苦しげにうめくルース。
「要するにわからなかったのですね、ルースさん(笑)」
 傍で見ていたナナ先生が半眼で突っ込んできます。
「なっ、ち、違……っ! これは、お前その……あれだ! こういうのはあくまで、形式的なものであって、実践では教科書どおりにいくことなど稀だから、戦場で学ぶことが重要なわけであってだな……!」
「ルースさん(笑)」
「くっ……」
 ルースはもう一度うめきます。永谷がめちゃくちゃ気まずそうに見ています。
「話しかける時は前と後ろにサーをつけろ!」
「サー、イエスサー!」
 八つ当たり気味のルースに忠実に従い、びしりと敬礼する永谷。模範的国軍兵士です。上官がカラスは白いといえば、白いのです!
「……よし」
 そのまま直立不動の永谷は置いておいて、ルースは今度は逆切れ気味にナナに向き直ります。全て誤魔化すために襲い掛かっていきました。背景にハートマークの効果を撒き散らしながらジャンボをスクランブル発進させます。
「……ナナ先生! 勉強のしすぎでムラムラしてきました。解消してください!」
「……」
「実技で教えてください、先生。保健体育の実習の時間で〜す! 俺のジャンボがナナ先生のあそこに空中ドッキンg」
 パイロットになったルースは離陸に失敗しました。
 ナナが軽く放った絶対領域に阻まれ、滑走路途中で撃沈したのです。
「さあ、そこに正座して歯を食いしばりなさい」
 ナナ先生は優しく微笑みながら、超賢者の杖を振り上げます。これで叩かれたらきっと大尉(笑)も賢者(笑)になれるでしょう。
「保健体育でしたら、その身をもって痛みと再生を学ぶといいですよ」
 ビシバシとルースが動かなくなるまで教育的指導を行っておきます。
「俺……もう中佐になろう……」
 かすれ声で呟くルースとは裏腹に、真面目な子たちの夜の勉強会は続いていくのです。