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寂れたホラーハウスを盛り上げよう!!

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寂れたホラーハウスを盛り上げよう!!
寂れたホラーハウスを盛り上げよう!! 寂れたホラーハウスを盛り上げよう!!

リアクション

「では付き添いを付けて別々に行動すれば良かろう」
 ルファンは妥協案を『説得』を用いて言葉にした。別々という所で二人を納得させ、付き添いという所で二人が宝物を同時に発見できるように誘導しようと言う事を兄妹以外に伝えた。

「それがいいですね。ヤエトさんもせっかく来たのですから」
「それなら安心だね」
 二人が思惑に気付く前に稲穂とノーンが言葉を重ねた。

「兄妹揃ったところで宝物について詳しい情報はありませんか」
 舞花がキサラ兄妹に埋もれた情報が無いかと訊ねた。

「……知らないよ。当然、兄さんも知らないよね。お父さんの葬式にも顔を出さなかったし」
 ユルナは首を振り、兄を睨んだ。
「……」
 ヤエトは何も答えず、携帯電話を取り出し、どこかに電話をかけ始めた。
「ヤエトさん?」
 稲穂が訊ねた。
「母さんに電話をかけてみる。何か知っているかもしれない」
 ヤエトは母親に電話をかけていた。もしかしたら何か知っているのではないかと。
 すぐに電話は母親に繋がり、呑気な声で息子を迎えた。
「もしもし、ヤエトだ。宝物について何か聞いていないか?」
 ヤエトはすぐに宝物について訊ねた。
「知らないって、何も聞いていないのか。いや、そんなんじゃない」
 母親は即知らないと答え、笑いながらやっぱり妹の事が心配で助けに行ったのねと言った。当然、意地っ張りヤエトは否定する。
「あのなぁ、母さん。そんな事微塵も思っていない」
 次に母親はヤエトが父親の葬式を遠くから見守っていた事を口にし出した。本当は優しい子でお父さんが好きなのよねと。ますます苛立つヤエト。
「で、本当に何も知らないのか? あぁ、それだけか」
 苛立ち紛れにもう一度訊ねるとようやく母親は何かを思い出したのか夫が口にしていたある言葉を伝えた。

「……何か分かりましたか」
 舞花が電話を終え、携帯電話を片付けたヤエトに訊ねた。

「……死んだとしても自分はこのホラーハウスにいられると少年のように言っていたと」

 ヤエトは母親から聞いた言葉をそのままみんなに伝えた。

「幽霊になって彷徨っているとか。お父さんなら有り得るかも」
 ユルナはぱっと思いついた事を口にした。

「宝物の話自体、壮大な嘘という可能性もあるがな」
 ヤエトがため息をつきながら言った。

「まぁ、それは有り得るけど、とりあえず先にアタシが行くよ」
 兄に横取りされてはいけないとユルナが先に行く事を希望した。

「私達と一緒に行きましょう」
「行こう」
 ユルナの付き添いには、舞花とノーンが付いた。
「お願い」
 ユルナは二人と共に食堂を出て行った。

「……ヤエトさん、やっぱりユルナさんが心配だったんですね。それでお父さんの事も好きなんですよね」
 ユルナが出て行ってすぐ稲穂が笑顔で言った。電話の様子からだいたいの話の内容は分かる。
「電話でその事言われてたんだよね。それに宝物の確認なら電話でもいいのにわざわざここに来てるもんね〜」
 木枯も言った。木枯の言う通り、宝物も確認だけならここに来る必要は無い。来たと言う事は宝物を口実に何か別の用事があるのだろうと。事前にヤエトに会っているのでその用事も見当がつく。
「……それは」
 ズバリな言葉にヤエトは言葉を濁してしまう。
「どうぞ」
 そこにイリアが珈琲を持って来た。
「あぁ、ありがとう」
 イリアに礼を言って受け取り、椅子に座りどす黒い珈琲を一口飲んで心を落ち着かせる。
「これからは意地を張るのもそこそこにのぅ。優しい心を持っておるのにもったいない」
 ルファンも言葉をかける。兄妹の仲を少しでも修復しようと。

「いや、意地はというか優しいって」
 ヤエトは思わず、珈琲にむせてしまった。

「……今回の事を期に目を向けるべき事には目を向け耳を傾けるべき事には耳を傾けるようにのぅ」
 ルファンは、まだむせた珈琲に咳き込んでいるヤエトに言った。兄妹が同じ問題を抱えていると感じたルファンは何か助けになればとちょっとした言葉をかけた。

「……間に合うか?」
 ヤエトは真面目な顔でルファンに訊ねた。ユルナと違って賢いヤエトは原因について少しは分かっていた。ただ自分の意地もあって目を向けないようにしていただけ。
「……まだ大丈夫じゃ」
 ルファンはそう一言だけ言った。
「……そうか」
 そう言い、ヤエトは黙って珈琲を飲み干した。その顔からは何を考えているかは分からなかったが、宝物探しには行くだろうという事は読み取れた。

「ヤエトさん、私達も行きましょう。ユルナさんは行きましたから」
「行くよ〜」
 頃合いだろうと見計らった稲穂と木枯がヤエトに声をかけた。

「……あぁ」
 ヤエトは椅子から立ち上がり、木枯と稲穂について行った。

「俺も行くか。もしかしたら宝物が何か見られるかもしれないな。まぁ、見られなくても別に構わないが」
 甘い物で力を回復した九十九も動き始めた。宝物は気にはなりつつも幸せは与えられる物ではないと思っているのでそれほど執着はしていない。

 ヤエトが出発する前、地下室出入り口。

「ユルナさん、行きましょう」
「宝物、見つけるよ」
「……う、うん」
 元気なノーンと舞花に比べて震え声のユルナ。
 やはり、怖いものは苦手らしい。だから、ハウスに来てからずっと喫茶店にいたのだ。
「……やっぱり、アタシ待ってる」
 地下室の出入り口で心が折れてしまったユルナ。
「行こうよ」
「ユルナさんが見つけるから意味があるんですよ。大丈夫です。私達がいますから」
 何とか説得するノーンと舞花。
「……でも」
 説得されても動こうとしないユルナ。

「心配ありませんよ。私達も一緒です」
「……部屋を台無しにしたお詫びをさせてくれないか」
 零と優が現れ、

「優に零も無事だったんですね」
「四人揃ったな」
 陰陽の書と聖夜も合流。

 最後に合流したのは

「……ユルナさんも行くのね」
「結構な人数だな」
 望美と剛太郎だった。

「これだけいっぱいいたら大丈夫だよ」
 ノーンが笑顔でユルナに言った。
「……うん」
 集まった顔ぶれを見回してからユルナは元気の無い声で頷き、ノーンと舞花が集めた中庭を背景にした家族写真で地下室に行った。

 この後、集まった六人も地下室に入った。
 ここでユルナが時間を消費したためすぐにヤエトと合流する事となった。

 地下室への出入り口の壁にある額縁に完成させた家族写真を飾る事で最後の部屋である地下室への道が開かれる。
 しかし、写真を持っていなければ意味を成さない。

「写真なんぞ、持っていないぞ」
「そうですね。私達も持っていませんね」
「誘導員だもんね〜」
 当然、この三人が写真を持っているはずはない。

「それなら誰かと行ったらいいアルよ。貸してくれないアルか?」
 優しいチムチムが代案を提案し、代わりにたまたま居合わせた九十九に頼んだ。

「構わないよ」
 断る理由は無いため九十九は自分が集めた写真を額縁の前にいるレキに渡した。

「ありがとうございます」
「ありがとう」
 稲穂と木枯は同時に九十九に礼を言った。

 写真を額縁に納めてから地下室のドアをゆっくりと開けた。
 地下室から風が吹き上がって来て髪が前に垂れ下がってしまうレキ。
 直す事はせず、
「では、いってらっしゃいませぇ〜」
 と声変わり飴で変化させたホラーな声で四人を見送った。
 一瞬だけヤエトの肩がびくついていた。ちなみにユルナはきっちり驚いていた。

「ヤっちん、無事に帰って来るんやで」
 裕輝は元気に見送った。
 その後、
「メシエ、ここで最後よ」
「ようやく稚拙なゲームが終わるんだね」
「……何とか辿り着けたな」
 浮かれるリリアと興味なさ気のメシエと写真回収を頑張ったエースがやって来た。