空京大学へ

天御柱学院

校長室

蒼空学園へ

寂れたホラーハウスを盛り上げよう!!

リアクション公開中!

寂れたホラーハウスを盛り上げよう!!
寂れたホラーハウスを盛り上げよう!! 寂れたホラーハウスを盛り上げよう!!

リアクション

 一階、音楽家を目指す次女の練習部屋。

「まずは演奏する楽器から決めよう。私はフルートを選びたいんだけど」
 アデリーヌ・シャントルイユ(あでりーぬ・しゃんとるいゆ)と共に来た綾原 さゆみ(あやはら・さゆみ)が他の四人に訊ねた。手にはしっかりとフルートがあった。
「……あたしはチェロを」
 斑目 カンナ(まだらめ・かんな)はそう言って近くのチェロに移動し、練習を始めた。
「……私はピアノ」
 アメリ・ジェンキンス(あめり・じぇんきんす)はちらりとピアノに視線を向けた。
「私はフランとピアノを弾こうかな」
 オデット・オディール(おでっと・おでぃーる)は隣に立つフランソワ・ショパン(ふらんそわ・しょぱん)に言葉をかけた。
「そうね。それで誰から演奏するのかしら」
 フランソワは頷き、演奏順の話し合いを切り出した。
「私は少し場違いな穏やかな癒し系や陽気な音楽も演奏するつもりだから中盤がいいんだだけど」
 さゆみは少しばかり実行したい計画があるので最初よりは、他の部屋を訪れた人が多く来るであろう中盤を希望した。
「あたしは何番でも構いません」
 カンナは練習の手を止めてフランソワに答えてから再び手を動かした。
「……私も何番でもいいよ」
 アメリは静かに答えた。

「それじゃ、オデット。私達がトップバッターを務めましょうか」
 他の演奏者の意見を聞いてフランソワは自分達がトップバターを務める事に決めた。
「うん」
 オデットは力強く頷いた。最初に躓いてしまうと他の演奏者達に迷惑がかかるので重大任務である。
 自分達の順番を決めたフランソワは残りの三人の順番も決めていく。

「それであなたが二番」
「分かった。頑張ろう」
「えぇ、頑張りましょう」
 さゆみはフランソワの決めた順番で承諾し、アデリーヌに言葉をかけた。
「ピアノのあなたが三番でチェロのあなたが最後よ。問題はあるかしら」
「……それで問題ありません」
「私も問題無いわ」
 カンナもアメリも不満無く承諾する。
 これで順番は決定した。
 あとはメイクや衣装を整えるだけとなったところでカンナが思わず言葉を洩らした。

「もし時間があれば、最後にみんなで演奏出来れば……」

 この言葉を受けた三人はすぐに反応を示した。

「それは面白そうね」
 とフランソワ。
「せっかく集まったしね」
 集まったみんなを見回すオデット。
「私も賛成よ」
 楽しそうに頷くさゆみ。
「……聴いてみたいですわ」
 興味を示すアデリーヌ。
「……いいと思うよ」
 静かに答えるアメリ。
 これで最高のサプライズが決定した。それぞれ準備を整えるため動き始めた。

 一階食堂の隣にある礼拝堂。

 エリザベータ・ブリュメール(えりざべーた・ぶりゅめーる)が静かに部屋を見回していた。
「……なかなか良い部屋ですね」
 洋館という事で礼拝堂を提案したところ受け入れられ、食堂の隣にある部屋を改装して貰ったのだ。今は、その出来栄えを確認していた。

「衣装も整った事ですし、あとは待つだけ」
 青の修道着に両腕と両足に白銀のアーマーグローブとアーマーブーツ、手にはハルバードと聖鎖剣を手にして聖なる異端審問官に扮していた。
 ちらりとドアの方に目を向けた時、ゆっくりと開いて人が現れた。

「こんにちは〜」
「素敵な施設ですね」
 木枯と稲穂が現れた。
「おかげさまで。この部屋に負けずに客をもてなしますよ」
 負けず嫌いなエリザベータの言葉は、用意されたこの部屋に負けまいと力強かった。
「今日はお互いに頑張ろうねぇ」
「ホラーハウスを盛り上げましょう」
 木枯と稲穂も同じように力強く言った。
「そうですね。無事に営業できるよう務めましょう」
 エリザベータはそう言い、出て行く二人を見送った。

「迷える子羊に神の御加護を……」
 独りになったエリザベータは祈りを捧げながら訪れる客を待つ事にした。

 食堂内、喫茶店に併設されている土産屋。

「営業開始前に店内の掃除をしなきゃ」

 怖がらせるのが苦手なリアトリス・ブルーウォーター(りあとりす・ぶるーうぉーたー)は土産屋の手伝いをする事にした。最高の癒し空間創造の第一歩として掃除をしていた。
 長く休業中だったためか埃がかなり舞い上がっていた。

「キュフッ!!」
 舞い上がる埃にレジ付近にいたソプラニスタ・アコーディオン(そぷらにすた・あこーでぃおん)が可愛くくしゃみをした。
「あ、ごめんねソプラニスタ」
 くしゃみに気付いたリアトリスは、ソプラニスタに謝ってこれ以上くしゃみをしないように布で口と鼻を保護した。
 そして、リアトリスは宙を漂いながら眠っているジョヴァンナ・ダンデライオン(じょばんな・だんでらいおん)と邪魔にならないように高めに飛んでいるサフラン・ポインセチア(さふらん・ぽいんせちあ)の様子を確認した。
「……ジョヴァンナとサフランは大丈夫そうだね。早く掃除を終わらせないと」
 彼らの寛いでいる様子を見て大丈夫である事を確認し、掃除を続けた。掃除を終えてから自身の準備をする予定なので急がなければならない。

 その掃除の最中、

「大丈夫?」
「手伝いますよ」
 ハウス内見回りを終えた木枯と稲穂が土産屋に現れた。

「それは嬉しいけど、衣装が汚れるよ」
 手伝いはとてもありがたいが、すっかり衣装を整えている二人に申し訳なかった。
「大丈夫だよ〜、私達は裏方だから」
「そうです。人数が多い方が早く終わります」
 そう言って二人は、土産屋の掃除に加わった。
「ありがとう」
 リアトリスは二人に礼を言って掃除を続けた。
 掃除の最中、二人は可愛らしい店員さん達に気付いた。
「木枯さん、木枯さん、可愛いですよ」
「本当だねぇ、これは綺麗にしないとだめだねぇ」
 ソプラニスタ、ジョヴァンナやサフランの愛くるしさに頑張り度が高まる。
 掃除はあっという間に終わった。

「本当にありがとう。みんなもありがとうって言ってるよ」
 ソプラニスタに付けた布を外しながら木枯と稲穂に礼を言った。
「今日はここを一緒に盛り上げる仲間なんですから手伝うのは当然ですよ」
「そうだよ〜」
 稲穂と木枯は嬉しそうに言った。

「きゅ〜きゅ〜(おなかすいた〜!)」
「キュル〜キュ〜ウ♪(遊ぼうよ!)」

 掃除の間ずっと大人しくしていたソプラニスタは空腹をサフランは遊んで欲しいと訴えた。
「お腹が空いたんだね。すぐにミルクコーヒー用意するね。サフラン、遊ぶのは少し待ってね」
 またほんの少し忙しくするリアトリス。

「……飲ませたいなぁ」
「サフランさんと遊びたいです」
 動物を見ると放っておけない木枯と稲穂は言った。掃除の間中、気になって仕方が無かったのだ。

「いいよ。ね、ソプラニスタ、サフラン」
 そうリアトリスに名前を呼ばれたソプラニスタは嬉しそうに鳴き、サフランはリアトリスの所にやって来た。

「これを飲ませてあげて。まだ赤ちゃんで自分でゲップが出来ないから飲ませたら背中を軽くトントンしてあげてね」
 リアトリスは紙パックのミルクコーヒーを木枯に渡して説明した。
「分かった。ミルクだよ〜」
 説明を聞いた後、木枯は優しくソプラニスタを抱っこしてミルクコーヒーを飲ませ、背中をトントンしてゲップをさせた。
「クオ〜オー♪」
 お腹がいっぱいになったソプラニスタは嬉しそうに木枯の顔にスリスリした。
「お腹いっぱいになったんだねぇ」
 木枯は嬉しそうにしていた。
「これで遊んであげて」
 次にビーチボールを稲穂に渡した。
「はい。行きますよ」
 稲穂はボールを受け取り、サフランとボール遊びをした。
「キュ〜オー♪」
 と嬉しそうに遊んでくれた稲穂をハグした。
「私も嬉しいです」
 ソプラニスタにハグされた稲穂はとても嬉しそうだった。
「もうそろそろ営業開始だけど大丈夫?」
 木枯は空腹が満たされて眠ってしまったソプラニスタをリアトリスに委ねながら訊ねた。
「みんながいるから大丈夫だよ。ありがとう」
 リアトリスは礼を言って抱っこしているソプラニスタを撫でた。
「どういたしまして」
 木枯はそうリアトリスに言った。
「何かお手伝いが必要になれば声をかけて下さい」
 稲穂は、そう言いつつ右の胸びれでバイバイするサフランに手を振った。手伝いのため適当に置いていたプラカードや鬼火を手に二人は食堂を出た。

 この後、リアトリスは営業に向けて衣装を整えることにした。
 リアトリスは『超感覚』で白い犬耳と尻尾を出し、巫女服を着用し、サフランには表が赤で裏が青い生地のマントを羽織らせ、ジョヴァンナには魚の骨で作ったドクロマーク付きの海賊帽子を被せた。眠っていたソプラニスタも営業が開始してからしばらくして目を覚まし黒いマントと鋭いように見える紙製の牙を付けて元気にマスコットを務めた。