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「うわーっ!! アニス、俺から離れろっ!」
「ふえっ? 何のさわ――きゃっ!?」
 佐野 和輝(さの・かずき)ルーシェリア・クレセント(るーしぇりあ・くれせんと)アルトリア・セイバー(あるとりあ・せいばー)、パートナーのアニス・パラス(あにす・ぱらす)と一緒に専門店街を買い物にきていた。
 穏やかに服屋などを見て回り終え、通路を歩いていたころ。
 突然和輝は叫び、アニスを突き放したのだった。
 
 和輝の異変に気がつき、アルトリアは【破邪の刃】をこっそり手元に忍ばせた。
 だが、自体はアルトリアの予想を裏切る者だった。
 慌てて、アルトリアはアニスの目を両手でふさいだ。
「あ、アルトリアお姉ちゃんどうしたのっ!?」
「何でもないですよ。ちょっと目に毒なものが」
 目隠しをされ、さらに混乱に陥ったアニスにアルトリアは優しく語った。
 
 ルーシェリアの目の前では、和輝の体がこちらに倒れ込み、顔が一メートルという所まで来ていた。
 俗に言う、押し倒された状態であった。
 心臓の高鳴りと、顔が火照っていくのを感じだルーシェリアはうれしかった。
(ちょっと乱暴ですけど……ようやく甘えてきてくれてこんな――っ!)
 ルーシェリアは、倒れてくる和輝を優しく抱きとめた。

               §

 一方で、異変にいち早くアルトリアは気がついた。
 背後に、ぼーっと突っ立っている男が居た。
「ヴァアア……」
「む……邪魔する輩……」
 それが、明らかに人ではないと分かったアルトリアは、忍ばせていた刃を片手に持ち直した。
 アルトリアはアニスの目をふさいだまま、【ローゾンビ】へとどめを刺した。
 ローゾンビの首が綺麗に孤を描き地面に転がっていった。
「なっ、何!? 何が起きてるの、真っ暗で何もわからないよぉ〜」
 アニスは目をふさがれたままじたばたしていた。
「別の意味でお見せできないものが……」

               §
「あっ……」
 和輝の顔が、ルーシェリアの胸に押し当てられ、何度もほおずりされる。
(アニスさんまでいるのにこんな……)
 ルーシェリアと体を密着させて、和輝は何度も猫のようにほおずりした。
 ルーシェリアの顔は真っ赤になり、頭はぼーっとしており、なされるがままだった。
「ヴァアアアアアアッ!」             
 だが、それは突然邪魔された。
 ルーシェリアは横を見ると、顔が一気に青ざめた。そこには腕のない人間が立っていた。
「……」
 和輝は無言で立ち上がると、近づいてくる声の主をおもいっきり脚で振り払った。

「なっ、何!? もしかしてゾンビっ!?」
 和輝がルーシェリアから離れるのを確認すると、アルトリアはアニスの目隠しを解いていた。
「そのようですね」
 アルトリアは平然としていた。
「せっかく良いところだったんですが……」
「えっ、アルトリアお姉ちゃん、何の事?」
「いいえ、こちらの話です」
 アルトリアはそう言うと、数人見えたローゾンビへと刃を構えて向かっていった。
 ローゾンビ達に囲まれた、ルーシェリアと和輝を救出するために。