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リアクション
第8章 水着で体育祭! 本番
『さあ始まりました『水着で体育祭!』。本日の司会はメイン司会役の人が急病という事で、私アスカが急遽ピンチヒッターを務めさせていただきま〜す! よろしくお願いしまぁす♪』
『コメンテーターのCY@Nです。今日はKKY108の出演ということで、とっても楽しみだね』
急遽依頼され司会進行役を務めることになった師王 アスカ(しおう・あすか)とCY@Nの挨拶で、体育祭は始まった。
綱引き、玉入れなどの定番のプログラムの後、いよいよ本日の花形、KKY108による水着騎馬戦!
『おぉ〜っと、チーム『【M】シリウス』、早くもハチマキをゲット! さすが三姉妹、息がぴったりですねー』
長女、ネフィリムを担いだエクスとディミーアの息の合った騎馬は、会場を縦横無尽に走り回り、次々と敵チームのハチマキを奪っている。
時折勢い余って機材にぶつかったりしているのはご愛嬌だ。
「うわっ、壊れちゃった!? べ、弁償かなぁ……」
「今は気にせずゲームに専念しましょう」
「そうね。後で、穴埋めを頼んだKKY108に請求書を回してもらえるよう手配するわ」
ハチマキを守りながらも冷静に頭の中の算盤をはじくネフィリムだった。
そこに襲い掛かる白い影!
「おっと、余所見してたらあかんで!」
「あなた達には、私達雪だるま王国繁栄の礎になってもらいましょう!」
「……やれるモンなら、やってみなよ!」
雪だるま王国発アイドル『AKB92』の女王美央、奏輝 優奈、そしてプリンの3人だった。
「ほらほらほら、大きな胸が動くのに邪魔じゃありませんか!」
「あなたこそ、そんなに胸を揺らして……重くありません?」
動くたびに美央の大きな胸がゆっさゆっさ揺れる。
明らかに不自然な様子で。
対する三姉妹の胸の揺れ加減はたいへん良好。
「うわあああ、あっちにばっかりカメラが向いてる!」
カメラの前で繰り広げられる戦いを見て焦ったのは、846プロから派遣されてきた琳 鳳明を騎手とする『混成チーム』。
(社長と一緒に挨拶回りしてて楽屋入り遅くなっちゃったけど……いつまでも緊張ばっかりしてらんない! がんばんなくちゃ!)
「よし、ガンガン攻めてくよ! まずはあそこのチームから、お願い!」
「分かりましたわ」
「行きましょう!」
チームを組んでいる小夜子と野々に頼む。
指差した先にいるのは『恥ずかしチーム』。
「うわぁ、こっちに来ましたよ!」
「どどど、どうしましょう、逃げましょうか」
「んっ、面白そうだから受けて立つ!」
大蛇を騎手に担いだ忍と恵美。
「といいますか……」
恵美が不安そうな面持ちで肩の上の大蛇を見る。
「騎手のチョイス、間違ってません?」
「んー?」
大蛇は両手を縛られている。
これでどうやって騎手をやれというのだろう。
「わあ、来ました!」
「かーくーごー! ここは八極拳の必殺技で……はぁあ〜」
「だ、駄目ですそんなの使っちゃ!」
身構える鳳明に慌てる恥ずかしチーム。
と。
ぶっちん。
何かが千切れる音がして、恥ずかしチームの下に黒いベルトが落ちた。
大蛇の両手を縛っていたベルトが切れたのだ。
実はハプニングを狙って氷藍が細工をしていたのだ。
「ん〜んっ、す、すりすりしたい……」
「へ?」
戒めが解けた大蛇が、突然対峙していた鳳明に抱き着いた。
頬を摺り寄せ、挙句にその肌に舌を這わそうとする。
「あ、わ、ちょっと……きゃああああ!」
逃げようとするが騎手の悲しさ、即座に逃げられるわけもなく。
大蛇のスキンシップの餌食となっていく。
「あああ、なんだか上で大変なことになってます」
忍もおろおろとなんとか大蛇を引き離そうとするが、動くことができない。
ちなみにその頃、忍のパートナーのリョージュは。
「シャッターチャァアアンス!」
隠し持ったカメラでハプニングを激写しまくっていた。
「た、大変です!」
鳳明の下にいた野々が隠し持っていた金属トレイを高々と放り投げた。
トレイはくるくる回ると、カメラと鳳明の間の絶妙な位置に割って入る。
その裏には『えっちなのはいけないと思います』という張り紙。
「た、大変や! カメラがめちゃめちゃあっちばっか撮ってる!」
騒動に焦ったのは『AKB92』の優菜。
(これは……『あれ』をやるしか!)
客席にいる仮面の男……クロセル・ラインツァートの方を見る。
クロセルは重々しい様子で頷くと、携帯を取り出して何事か操作する。
あらかじめ交渉しておいたスタッフに、連絡を入れているのだ。
クロセルの連絡を受けたスタッフは、音響と照明効果を変化させる。
それが、合図。
大音響と煌く照明に紛れ、優奈とそして衛はブリザードを発動させる!
吹き荒れた氷の嵐に、会場を一気に真冬と化す。
「さぁあむぅううっ!」
「ひっ、これは……」
「なんてこと……」
ブリザードの効果を真正面から受け、思わず足が止まるネフィリム三姉妹。
「さ、寒いです……胡桃ちゃんのもふもふが恋しいぃ……」
客席で応援している胡桃のふわふわ尻尾を愛おしそうに眺める恵美。
「なるほど、クロセルたちが言っていた防寒準備って、この事だったんですね。寒いのは好きなので、寒いに越したことないんですが」
あらかじめ連絡を受けていた美央は白くなった周囲を見渡す。
たまらず上着を探すアイドルもちらほら。
「これなら、誰よりも目立って雪だるま王国アピールを……ん?」
「ううう……寒いー、ね、む、く、な、るぅう……」
寒さに凍えた大蛇が、美央にすり寄ってきた。
ぐりぐりぐりぐりぐり。
「ちょ、ちょっと、そんなにぐりぐりされると、あっ、と、取れちゃう……っ」
ぽろり。
美央の水着が、ずれた。
そこから転げ落ちる大きなスイカ、2個。
会場中の注目の中、胸から滑り落ちたスイカが割れる。
べしゃ、べしゃん。
「あ、わ、わわわわわ、これは、これはっ、違うんです!」
『うわー、何が違うんでしょう、AKB92リーダー美央の胸が、落ちたー!』
アスカの絶叫を聞きながら、ぺったんこになった胸を押えて真っ赤になって叫ぶ美央。
(そろそろ、頃合いじゃな)
事態を見守っていた衛が、騒ぎに紛れ今度はファイヤーストームを発動する。
「あれ……」
「あったかい……」
じわじわと温められていく会場。
一人、また一人と上着を脱いで再び水着になるアイドルたち。
(よしよし、また水着が拝めたぞ。宣伝もいいが、水着もええのう!)
カッカッカと、一人満足気に笑う衛だった。
『さあ、色々ハプニングもありましたが、騎馬戦の再開です〜!』
アスカが宣言する。
『ところで、今更なんですがCY@Nさん』
『はい、何です?』
『今日のKKY108、何か何時もと違ってる気がしません〜?』
アスカの言葉に、ぎくりと動きが止まるアイドルたち数名。
『そう? 皆、いつも以上に元気でやってるよ?』
『んー、そうですね。今日も皆さんのがんばりに期待しましょう!』
「おーい、さっきのブリザード。あんな魔法を使う許可、誰が出した?」
「俺が許した!」
舞台裏では、スタッフたちが騒動の始末のために慌ただしく動いていた。
名乗り出たのは、先程クロセルから連絡を受け、音響や照明を変化させていたスタッフ。
その、やたらと尊大な態度にどこか大御所のプロデューサーかマネージャーかと、スタッフの間に警戒が走る。
「えー、貴方は……?」
「瀬山 裕輝(せやま・ひろき)! ただの一介のバイトや!」
「バイトか!」
スタッフ全員の声が揃った。
「バイトでしたか……」
携帯で楽屋裏の様子を伺っていたクロセルも、呆れた様子で呟いた。
「てっきりマネージャーか何かかと思っていました」
連絡を取って、おまけに袖の下まで渡していた相手だった。
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