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All I Need Is Kill

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 十六章 空京を救うたった一つの方法

 十八時三十分。空京、郊外。
 空京の街外れに現れた化け物を見上げながら、ミルゼア・フィシス(みるぜあ・ふぃしす)は笑っていた。

「くく……くくく……あははははははは!!」

 ミルゼアの笑顔は嬉しくてうれしくて堪らないというものだった。

「あはは! <イナンナの加護>が私に危険を告げているわ。それもとびっきりのやつを」

 ミルゼアはそう呟くとディザスター・オリジンを鞘から引き抜く。
 大きな黒い刀身は、弱々しくなった太陽光を浴びて、妖艶に輝いた。

「どれだけ強いのかしら? あの人外の化け物は」

 ミルゼアはそう呟き、これから起こるであろう化け物との戦いに思いを馳せた。
 悲鳴と断末魔。血液と肉片。考えればかんがえるほど、その戦いは素晴らしいものになる予感がする。

「ああ……考えただけで、楽しくなって来たわ」

 ミルゼアは恍惚な笑みを浮かべて、化け物を見た。
 その化け物は街外れから空京に向けて進み始めている。

「さあ、戦いに赴きましょうか」

 ミルゼアはそう呟き、地を蹴った。
 行き先はもちろん、あの化け物のところだ。

「今日はこんなにも晴れてるんだもの。楽しいたのしい夜になりそうね」

 膝を超えるストレートの黒髪。
 漆黒のドレスに漆黒の鎧、漆黒の大剣。
 黒一色に染まった大剣士は、口元を吊り上げながら、駆けていった。

 ――――――――――

 同時刻。空京、街外れの廃倉庫。
 その場にいた者全てが、化け物を見上げていた。
 未来の部隊はトラウマを見て恐怖に立ち竦み、現代の部隊には見たことのない化け物に驚愕で目を見開ける。

「ああ……失敗した……」

 ホープが両膝を力なく地面に落として、自らの頭を両手で抱えた。

「失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した」

 ホープの瞳はもはや焦点が合わず、錯乱状態に陥っていた。
 その傍に傷だらけの紫月 唯斗(しづき・ゆいと)が近寄り、問いかけた。

「一つ、聞きたい」
「……え?」
「まだ惨劇は起きていない、これに間違いはないな?」

 ホープは顔を見上げて、小さく頷く。
 頷いた彼女を見て、唯斗がタフな笑顔を浮かべながら口を開いた。

「よし。なら、それで全ての前提を崩すぜ。化け物は召喚されたが、惨劇は起きなかった。
 超カッコ良い正義の味方達がフルボッコにしました。どーよ? 悪くないシナリオだろ?」
「……そんなの夢物語です」
「そうでもねぇぜ? そもそも既にお前等の過去からは状況が違うんだからな」

 唯斗は周りの契約者達を見た。
 自分が一緒に戦った現代の部隊と、相手をしていた未来の部隊。
 その面々を見回してから、うずくまるホープに視線を移し、言葉を発する。

「お前等がいる、俺達がいる。
 それに仇が討てて大事な奴を護れるんだぜ? なんの不満があるよ?」
「だって――」

 唯斗は、また文句を言ようとしたホープの胸倉を掴み、無理やり立ち上がらせる。

「文句は聞かん、黙って従え。
 これでも俺は結構怒ってるんだ。既に被害者が出てる時点でな」
「……無理、です。もう、みんな死にます。なにもかもが無駄に――」
「無駄だと……? 巫山戯るな!」

 唯斗が声を荒げて、叫ぶ。

「死んでいったすべての者を思い出せ!」

 唯斗にそう言われて、ホープの脳裏に今回の戦いのことが蘇る。
 
「あいつらは諦めたのか!? 死を前にして逃げ出したか!? 答えろ、ホープ!」

 敵も味方も死んでいった者はみな、それぞれの信念のもとに戦っていた。

「……いいえ」

 ホープは首を左右に振る。それを見た唯斗は胸倉を離し、彼女を見つめながら問いかける。

「なら、もう一度質問するぞ。――おまえは諦めるのか?」
「諦めません」
「よーし、いい返事だ。なら――」

 唯斗も、ホープも、他の契約者達も、その場にいた者の全てが空京に進撃しようとする盲目白痴の暴君を睨んだ。

「あの化け物から、俺達の居場所を守りぬくぞ。
 これから起こすのは――大逆転のハッピーエンドだ!」

担当マスターより

▼担当マスター

小川大流

▼マスターコメント

 最後まで読んで頂きありがとうございます。マスターの小川大流と申します。
 この度は「All I Need Is Kill」にご参加頂きありがとうございました。

 今回の物語は如何でしたでしたでしょうか。
 少しでも楽しんで頂けたなら幸いです。

 それでは、続編にて皆様にお会いできる日を楽しみにしております。

 ※また、今回は特殊な状況ゆえ、アクションを送っていただいた皆様全員に招待を行いました。