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動物になって仁義なき勝負?

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動物になって仁義なき勝負?
動物になって仁義なき勝負? 動物になって仁義なき勝負?

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 沙夢と弥狐は、園児捜索に精を出していた。
「なかなか凄い森ね。子供達が無事ならいいのだけど」
「沙夢、急がなきゃね」
 沙夢は『バーストダッシュ』と弥狐は『疾風迅雷』で素早く移動し二人共『殺気看破』で周囲の危険を警戒しつつ『超感覚』で子供の声を探す。
 しかし、未だに空振りに終わっている。
 獣に会う度に沙夢は『適者生存』で大人しくさせ『武術』を持つ弥狐はフロンティアスタッフで戦う。時々道を塞ぐ障害物の排除には、沙夢の『荒ぶる力』を使う。

「……見つからないと言う事は救出が上手く行っている事よね」
 沙夢は今の状況を良い方向に考えようとする。
「……たくさんの人が森に入ってるからね」
 弥狐はそう言って沙夢にうなずいた。

 その時、遠くから
「ねぇ、キーアちゃん、大丈夫。ねぇ」
 泣いている少女の泣き声がした。

「弥狐!」
「うん! 行こう」
 泣き声を耳にした沙夢と弥狐は急いで声を辿った。

「……いるかな。怪我とかしてなきゃいいんだけど」
 さゆみは森の中を慎重に飛び回りながら、未だ見つからない園児達の心配をしていた。
 絶対音感を持つさゆみは泣き声やはしゃぎ声が聞こえないかと耳を澄ましているが、聞こえない。途中、キスミには遭遇したが、園児達はまだだ。
「そうですわね。動物になると人の時と違って風景が恐く見えますから」
 アデリーヌも泣き声を探しながら園児達の心配を口にした。いつもと違う風景に最初は楽しめるかもしれないが、時間経過と共にそれは恐怖に変わるはず。

「ねぇ、キーアちゃん、大丈夫。ねぇ」
 捜索に飛び回ってしばらくして泣きながら話しかける声が耳に入って来た。

「さゆみ!」
「行こう」
 二人は急いで声のする方へ行った。

 辿り着いた先は、何百年も生きていると思われる大木の前。
 幹にすがりつき、見上げながら泣いている犬になった少女がいた。

「もう泣かなくても大丈夫よ」
 さゆみが地上に降りて泣いている少女に声をかけた。
「え?」
 驚いた少女は振り向いた。
「……ヒルナちゃん、キーアちゃんはどこにいるのかしら?」
 アデリーヌは地上に落ち着くなり、訊ねた。ちなみにコルセアから園児達についての情報を得た後だ。
 その答えはすぐに分かった。

 大木の上の方から
「ヒルナ、大丈夫、こわくないよーーー」
 少し枯れた少女の声が聞こえて来たのだ。

「キーアちゃん、猫になってね、あの穴の中を探検するって言って」
 ヒルナは大木の上の方にある穴を指さした。
「あそに入って上れなくなったのね」
 さゆみは穴を見て納得した。猫ならば木を上るぐらい容易い。
「私、様子を見て来るから、アデリーヌお願い」
 さゆみはヒルナをアデリーヌに任せ、キーアの様子を確認しに行った。
「分かりましたわ」
 アデリーヌはさゆみを見送った。

「キーアちゃん、お姉ちゃんが助けに来たよ」
 穴の前で一度、呼びかけてみる。穴の中は薄暗く深い。
「うん。ありがとーーー」
 元気に答える声。さゆみは一度、穴に入ってキーアの様子を確認する事にした。
「……怪我はしてない? 痛いところは無い?」
「全然、大丈夫! 猫だもん」
 さゆみの確認にキーアは枯れた声で答えた。
 それから、さゆみは一度外に出て穴の前からアデリーヌに報告した。

「キーアちゃんに怪我は無いみたい。穴が結構深いから助けるには誰か人を呼んだ方がいいかもしれない」
 自分達でキーアを吊り上げるのは無理だと判断したのだ。実際は出来なくはないが、空中で落とすわけにはいかない。救助は念入りにする必要がある。
「分かりましたわ。わたくしが呼んで来ますわね。あなたはここにいて下さい。すぐ戻って来ますから」
 アデリーヌは人を捜しに行こう急ぐ事に。
 しかし、その必要は無かった。

「捜しに行く必要は無いわ」
「手伝うよ!」
 ヒルナの声を聞きつけた沙夢と弥狐が現れたのだ。

「沙夢さんに弥狐さん、ありがとう。私はキーアちゃんの所にいるね」
 さゆみは二人の協力者に礼を言ってすぐにキーアの所に戻って行った。あまり独りにしておくわけにはいかないから。
 そして、救出作戦会議が始まった。

 外で救出作戦を考案している間、穴の中。
「キーアちゃん、偉いね。ヒルナちゃんが不安にならないようずっと励ましていたんでしょ」
 さゆみはキーアを褒めていた。こんな薄暗い中でひとりぼっちになって心細かったろうに外で心配する友達の方を気遣って声を枯らしてまで励まし続けていたのだ。
「……うん。だって、出られなくなったのはアタシのせいなのにヒルナが泣くから」
 キーアは枯れた声でぽつりと言った。不安を見え隠れさせながら。
「偉い偉い。よし、お姉ちゃん、何か歌うよ!」
 さゆみは褒めながらもキーアの言葉奥にある不安は見逃さず、彼女を励ますために『幸せの歌』やアニメソングを歌い始めた。
「その歌、知ってる」
 途中、キーアも一緒に歌った。

「穴は深い上に猫ですからわたくしとさゆみで持ち上げての救出は無理ですわ。もし持ち上げて万が一を起こしてはいけませんし」
 アデリーヌが今の状況を簡単に説明する。
「私も熊だから穴に入るのは無理ね。木を切り倒さずに助けるにはロープで引っ張り上げるしかないかもしれないわね」
「んー、ロープ」
 弥狐は沙夢の言ったロープを探すため周囲を見回した。
「あった!」
 発見。そこら中にある長い蔦。ロープ代わりには十分な物だ。
「これを使おう! これを穴の中に入れてロープの代わりしたらどうかな?」
 弥狐が良さそうな蔦を指さしてみんなに言った。
「そうね」
 と言って『弓道』を持つ沙夢は、マグ・メルの弓で蔦が一番細くなっている部分を狙い、一発で射落とした。
「すぐに蔦を持って行きますわ」
 すぐさまアデリーヌが拾い、穴の中へ蔦を放り込みに行った。

「さゆみ、この蔦でキーアちゃんを引っ張り上げますわ。準備をお願いします」
 アデリーヌは、蔦を穴に入れてからさゆみに言った。
「分かった!」
 さゆみは、大声で返事をして準備を始めた。

「これでよし、と。すぐに穴から出して貰うからね。もう少しだけ我慢して」
 蔦の先をキーアの体に括り付けてからキーアに笑いかけた。
「うん」
 キーアはこくりとうなずき、しっかりと蔦を握った。
「みんな、お願い!」
 さゆみは穴の中から外に合図を送った。

「弥狐、思いっきり引っ張るわよ」
「うん。いち、にー、の、さーん」
 合図を受けるなりすぐに沙夢と弥狐が引っ張り始めた。
 穴の中では、さゆみがキーアのために歌い続けている。

「キーアちゃん」
 ヒルナはじっと救出の様子を見守っている。
「心配しなくてもすぐに出て来ますわ」
 アデリーヌはヒルナを励ましながら見守っている。

 キーアはすぐに穴の外に出てさゆみが体に括り付けていた蔦を解くなり、友達の所に駆けて行った。

「ヒルナ!!」
「キーアちゃん!!」
 二人は抱き合い、無事を喜んだ。

「無事、成功だね!」
 弥狐は嬉しそうに喜んだ。
「あとは、二人を森の外に連れて行くだけね」
 沙夢がこれからの事を言った。

「二人は私達が連れて行くよ」
 さゆみが申し出た。
「それならお願いするわ」
 沙夢は任せる事にした。
 キーア達の身柄を引き受けたさゆみは、キーア達に声をかけに行った。
「ナコ先生が心配しているからお姉ちゃん達と一緒に帰ろう」
 さゆみは優しく二人に言った。
「うん!」
「……うん」
 ヒルナは安心のうなずきでキーアは謝らなきゃのうなずきだった。
 さゆみとアデリーヌはキーア達を連れて森を出て沙夢と弥狐は園児捜索をそのまま続けた。

「戻り薬を探して行けば園児にも会えるかもしれない」
 和輝は『トレジャーセンス』を使い、戻り薬の探索を始める。そうすれば、無駄に動き回らなくても園児達を見つける事が出来ると考えたのだ。
「エリエ達を探して来て」
 紅目の白鳩になったアニスは白鳩の群れを使い、エリエや他の園児達の捜索を始めた。
「……そういえば、アニス、鳩になってるから鳩が鳩に命令。にひひ〜っ、変なの♪」
 アニスは思わずおかしな状況にくすりと笑うもすぐに顔を引き締めた。
「動物の足跡を追うのはどうかしら、とはいえ地面が地面だから……」
 久秀が捜索の提案をしようとして言葉が止まった。
「どうした、久秀?」
 後ろにいる久秀の様子がおかしい事に気付き訊ねると久秀は前方を指さした。
「ん? あれは……カラスか? アイツも子供達を探しているのか。もしかしたら協力して貰えるかもしれないな」
 久秀が示した先には夜月達がいた。
「……あの猫、誰かに似ているような気がするわね」
 久秀は夜月の横にいる猫にしだいに目を輝かせる。
「渚お姉ちゃん♪」
 アニスは嬉しそうに渚に向かって飛んで行く。
 和輝も夜月達の所に行った。