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夏フェスに行こう!

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 メインステージ。
 今尚、耐久BON−DANCEが行われている会場。
「どけどけどけー!」
 そこに怒り狂った多数のモヒカンが乱入してきた。
「な、何だね!? 君達は!」
「うるせえ! すっこんでろ!」
 排除に向かう審判。抵抗するモヒカンたち。
「うっ……数が多い……」
 退場させるには審判だけでは手に余る。数名が審判を振り切った。
「邪魔をしてやるぜ!」
 踊りながらモヒカンからの妨害を受ける参加者たち。

「雅羅さん! 大丈夫!?」
「ちょっとキツイわね……」
「それならオレに合わせて!」
 特技の【舞踏】を使い、夢悠は雅羅をエスコート。尚且つ、【殺気看破】でモヒカンの攻撃を予測し避ける。
「夢悠、意外と上手いのね」
「そ、そりゃ、雅羅さ――」
「このっ、リア充がっ! 食らいやがれ!」
 雅羅さんが傍に居るから。そう続ける前に邪魔が入る。ただ、夢悠にとっては嬉しい勘違いをされて。
「えっ!? オ、オレたち、まだ……って、危ない!」
 一瞬動揺したものの、【ガードライン】で雅羅を守り、何とかモヒカンの攻撃を受け流す夢悠。
「助かったわ」
「ごめん、オレが注意を逸らしちゃったから……」
「でも守ってくれたわ。ありがとう」
 感謝する雅羅に夢悠は顔を赤く染める。
「ほら、夢悠。まだ油断は禁物よ?」
「うん、そうだね!」
 気を引き締め直す二人。
 まだまだモヒカンの妨害は続く。

「向こうは良い感じだよね」
 雅羅たちを見ていた沙霧。
「ここで腕を左右に……」
 騒ぎなど目に入らず、覚えた踊りを実践している鈴蘭。
「これは、チャンスだよね! 僕も鈴蘭ちゃんを守ろう!」
 もしかしたら、これで二人の仲が進展するかもしれない。それならば彼女をなんとしてでも守ろうと決意する。
 それに二人は今、おそろいの浴衣姿。沙霧のテンションは高く、
「それだけで百人力!」
 鈴蘭のため身体を張る。

「流石に、これはきついね」
 額に汗を滲ませるレキ。
「ならば、わらわが加勢しようぞ!」
 ミアが【奈落の鉄鎖】を放つ。
「う、動けねぇ!」
 重力に縛られ、邪魔ができなくなるモヒカン。
「ついでにこれも受け取るのじゃ。【グレーターヒール】」
「ありがとう!」
「最後まで踊り続ければ、褒美に何か奢ってやるのじゃ」
「任せてよね!」
 レキはまた華麗に踊る。

 モヒカン対策を講じる面々の中、
「盆踊りってこんなにハードだったかしら?」
 水原 ゆかり(みずはら・ゆかり)はポツリと呟いた。
 元々のんびりとお祭り気分を満喫するはずだったのだが、隣で踊るマリエッタ・シュヴァール(まりえった・しゅばーる)の説得で耐久BON−DANCEに参加していた。
「めまぐるしく曲調が変わったと思ったら、今度は演舞ですか。まるでクラブのダンスイベントですね」
 ステップを駆使して避け続ける周りを見て、そう感想を漏らす。
「あたし達もうかうかしてられないよ。いつかこっちに来るはずだわ」
「それもそうですね」
 今の所、会話するだけの余裕がある彼女達。
 彼女達がまだ襲われていない理由、それは隅の方で地味目に踊っているからに他ならない。
 モヒカンたちに妨害されている面々が向日葵ならば、彼女達は月見草。
 大会を混乱させようとするなら、まず狙うは目立つ方だろう。
 そして、彼女達が話しているように安全圏も長くは続かない。
「ち、ちくしょう……中央からは無理だ。周りから攻めろ!」
 目立つ位置にはそれ相応の人たちがいる。下っ端程度ではどうこうできる相手ではない。
 だからと言って、ゆかりたちが容易いというわけでもない。
「カーリー、あたしたちの目標は優勝だわ。他の人に負けていられないよ!」
 豪華賞品のため、ゆかりを巻き込んだマリエッタ。こんなところで終わりたく無い。
 それはゆかりも同じだった。
「そうですね、途中で棄権するのは悔しいです。やるからには優勝を目指さないと」
 大人しそうに見えるゆかりだが、意外と負けず嫌いで他の面々の動きに刺激を受けていた。
「それに、やっとリズムにも慣れてきたところです。本気で踊り通しますよ!」
 完全にトリップ状態へ入る。
 そのモヒカンの障害をかわす姿は演舞……いや、もはや殺陣に近い。流れる曲に合った動きは、とても情熱的な踊りに見えた。
「うぅぅ、誘ったのはあたしなのに……」
 そして、ここにも負けず嫌いがもう一人。
「カーリーには負けていられないわ!」
 ゆかりが情熱的ならば自分は対照的に。
 ひらりひらりと、マリエッタは可憐に踊る。

 動じず踊り続ける参加者に半ば呆れつつ、
「やれやれ、面白いことになっていますね」
 近づくモヒカンを鋭い眼光で睨みつける千代。浴衣で暴れるのは憚られ、取った策はこれ。
 そのキツイ目はモヒカンを射抜き、近寄りがたいオーラを放たせる。
 さしものモヒカンも、動きを止めた。
「私の眼光からは逃げられないですよ?」


 そうこうしているうち。
「そこのモヒカンたち! 盆踊りの邪魔をしちゃダメだよ!」
 応戦するよりも踊ることを優先させている参加者に代わり、見物していた小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)が審判に加勢へとやってきた。
「盆踊りはルールを守って楽しくね!」
 反省を促すが、簡単に聞く耳を持つような奴らではない。
「うるせぇ、黙ってろ!」
 完全に危害を加えるため放たれた拳。
 それを審判も唸るステップで避け、右手に水ヨーヨーを、左手にカキ氷の容器を構える。
「これはちょっと、お仕置きが必要だよね!」
 そこからは美羽の独壇場。
 水ヨーヨー、カキ氷の容器、綿アメの袋など、お祭り屋台で手に入れたものを投げつけ、怯んだところに蹴り、蹴り、蹴りの嵐。
 数刻でコテンパンにされたモヒカンたちは、
「ご協力、感謝です」
「こういう役回りなら、浴衣だって着れた――」
「うるさいです」
 警備員アルバイトのアリーセとグスタフが連れて行く。
「あ、私も同行するね」
 それに付き添う美羽。
 邪魔者が居なくなった会場。
「流石に疲れたわね……」
 一息つけたことで弱音が出てくる雅羅。
 だが、耐久の名が付くだけあって、
「さあ、まだまだテンションあげていきましょう!」
 新たな奏者がやぐらに上る。
「まだ続くの!?」
 涙目の雅羅の叫びが木霊した。


 会場脇にて――
 一所に集められたモヒカンたち。
「モヒカンさんたちにはちゃんと反省してもらわないといけないよね!」
 美羽は腰に手を当て仁王立ち。
「でも、その前に……」
 コハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)は怪我をしたモヒカンに【ヒール】をかけて癒す。
「君達、危険なことはしちゃ駄目だよ?」
「そうだよね。踊ってる人たちの邪魔をするなんて、とっても危ないもん」
 倒れて足を挫いたり、倒れてぶつかったり、怪我をする危険度が格段に増す。
「それで美羽、この人たちをどうするの?」
「お仕置きしなきゃだね」
「怪我をさせたり、危険な目に合わせたりするのは絶対に駄目だからね?」
 温和なコハクは一応、忠告する。
 もちろんそれは美羽も理解していて、何か無いかと考えている。
 そんな美羽に天啓が舞い降りた。
「どうしたの?」
「いいこと思いついちゃったよ!」
 凄く良い笑顔になる美羽。
「ちょっとした罰ゲームだよね!」
「ひ、ひぃ!」
 モヒカンたちはその笑顔に戦慄した。