空京大学へ

天御柱学院

校長室

蒼空学園へ

MNA社、警備システム開発会社からの依頼

リアクション公開中!

MNA社、警備システム開発会社からの依頼

リアクション

「お待ちしておりました。警備システム開発部担当オペレーターです。
 既に機動兵器側には各フラッグを防衛してもらっています。それでは皆様、実験のほうよろしくお願い致します」
 MNA社の支社に招かれた契約者たち。基地のような空間にいる彼等を歓迎するでもなくオペレーターの質素な声が聞こえる。
「それでは、開始します」
 特大の警告音が開戦を告げる。機動兵器VS契約者たちの常識度外視の模擬実験がスタートしたのだ。

 最初に動きがあったのは広く開けた空間のCフラッグ地点。
 風の如く、真っ先に動いたのは鳴神 裁(なるかみ・さい)。そしてその身に憑いている物部 九十九(もののべ・つくも)の二人である。
 フラッグを奪取する側として参戦し、先ほど鳴り響いた警告音を聞いた瞬間にCフラッグを強襲していたのだ。
「フラッグを奪取せよ、だもんね。文字通り奪い取ってあげるよ!」
「機械なんてとろくさいもんにボクたちが捕まるわけないってね!」
 意気揚々にCフラッグ地点を駆け抜ける裁。だが、それを阻止するための機動兵器の実験。当然フラッグの前には壁がある。

――――――ガシャンッ。

 裁の行く手を遮るもの。
 MNA社ご自慢の機動兵器である。裁の前に現れたのは強行型。強力ブーストに基本的な運動性能に長けている接近戦型の機動兵器だ。
「へぇ、思ってたよりは速いね。悪くないんじゃないかな?」
「うんうん。もしかしたら何の苦労もなくフラッグ取れちゃうのかもって少し心配してたくらいだしね!」
「でも、どうかな? 君たちは速さも売りにしてるみたいだけど、風になれるのかな?」
 裁に憑依している九十九が『超人的肉体』、『ミラージュ』を併用。更に『ゴットスピード』を使用する。
「さあ行くよ。ボクは風、その動きを捉えきれるかな?」
 言葉を置き去りにして裁が動く。そのスピードは先ほどとは桁違いに速く、視認することも難しい。
 だが機動兵器も負けてはいない。高感度センサーで裁の動きを認識し、ブースト使用で裁の行く手を阻む。
「うおっとっと! ……なるほど、ブーストか。瞬発力は同等くらいなんだね」
「中々いい動きだね、ってもう一機来ちゃったよ」
 九十九の言う通り、もう一機がこちらの情報を認識しやってきたのだ。
「あらら、増えちゃったか。でもそっちのほうが好都合なんだよね。……一気に抜いてあげるよ!」
 【千里走りの術】を使用して一気に機動兵器へと駆ける裁。
 その行き先は二機の機動兵器の間、お互いが相手を止めることが可能な場所。
 当然起きる、ラグ。どちらが処理するか、それを考えた隙に生じる一瞬のタイムラグ。
 その僅かな隙を予め使っていた『行動予測』と『野生の感』でモノにした裁。
 二機の機動兵器を抜き去ることに成功したのだ。二機の機動兵器もラグから脱し、一機は裁を追跡、もう一機後方から射撃で援護する。が。
「もう遅いもんねー! いくら弾を撃ったって風のボクには当たらないよー!」
「鬼さんこっちらー!」
 ひょいひょいっと避けながらCフラッグ地点を目指す裁。

 裁の見事な一手により場は動き出す。
 この機を逃すまいと、葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)コルセア・レキシントン(こるせあ・れきしんとん)が行動を開始する。
「見事な速さ、天晴れでありますな。この流れを断ち切るのは惜しいであります」
「悪くない考えね。それじゃあ残ったほうの機動兵器を相手してあげようじゃないの」
「了解であります! 後方支援は頼むでありますよ!」
「任しときなさいって」
 そういって戦場に躍り出る二人。その動きを察知したのは、先ほど裁に追い抜かれ後方から射撃をしていた射撃型の機動兵器。
 すぐさま吹雪たちの方へと向きかえり、ライフルを撃つ。その弾速、精度は中々。
 その一発が吹雪に命中、したかに思えた。
「残念、それは分身であります!」
 『分身の術』を使っていた吹雪の一つ分身に弾が命中しただけだ。
「ほらほら、あんまりよそ見してると射抜かれちゃうわよ?」
 行動後の隙を見逃さず、コルセアが【イレイザーキャノン】を使い射撃型機動兵器へ放つ。
その攻撃は左腕部にヒットし、腕ごと根こそぎ持っていったのである。
「もう終わりでありますか? そんなことでは戦場の塵となるでありますよ?」
 機動兵器に機動力を持って対抗する吹雪。左腕部を持っていかれた射撃型機動兵器は為す術も無い。
「あまりにもあっけないわね。本当にこれで警備できるのかしら?」
「一般人程度であればわけもなく防衛できるでありましょうな。この戦果は自分たちだからこそあげられたもの、そう自負しているであります!」
「成る程、そうかもね」
 完全に射撃型機動兵器の動きは鈍り、これ以上はもういいだろうと判断した吹雪たちが進もうとする。
 しかし、思いもよらない事態に発展する。
「ちょちょちょっと! タンマタンマ! いきなり出てくるなんて卑怯だよ!」
『悪いが、ここを防衛するのが役目なんでな!』
「あれは、ヤツでありますか!」
『やっぱりきたな、葛城吹雪! どうせ狙われるんだ、今回はこっちから不意をつかせてもらったぜ!』
 強行型、ブレードとショットガンを携えた機動兵器に乗って現れたのは柊 恭也(ひいらぎ・きょうや)だ。
 確実に狙われるであろう自分、だからこそ自ら打って出たのだ。
 見事にその策は成功し、風の如く駆けていた裁の進行の不意をつき停止させ、ここまで後退させる大手柄を立てた。
「やはりいたでありますな! 恭也さん、悪いが散ってもらうであります!」
「さっきはよくもやってくれたね! ボクだって本気で行くよー!」
「悪いけど、狙わせていただくわ」
『いいぜ、かかってこいよ! 強行型機動兵器なめんなよ!』
「よし、堕とす♪ 吹雪ちゃんよりも先に!」
「負けないであります!」
 恭也を見るや否や旗を忘れたかのような吹雪と裁。
 二人は自前の機動力、俊敏さで恭也を翻弄し攻撃の機会を伺うのだった。

「ったく!! あいつ等、旗は無視して俺狙いにシフトしやがったか! ここまで台本通りとは大した役者だぜ!」
 自分の前にいる二つの暴風を前に、一歩も引かない恭也。
 今は恭也だけではなく、二機の機動兵器が支援してくれているのだ。
 とはいっても一機は左腕を持ってかれた射撃型、現在は後方にて必死に狙いを合わせているが片腕だけではこの二つの暴風の早さは捕らえきれない。
「だが、こっちだって一番速いのが二機だ! 負ける通りはねぇ!」
 吹雪は近・中距離対応遊撃、仲間からのサポートもある万能な距離を選ばない戦闘スタイル。
 裁は相棒である奈落人憑依状態で、限界まで強化された己が身一つで高機動な近接戦闘を堂々しかけてくると考えていた。
「そっちからこないなら、こっちから行っちゃうよー!」
「やっぱりきたか! 頼むぜ、お前の機動力だけが頼りなんだからな!」
 最近流行のアイドルソングを歌いながら【レゾナント・アームズ】を使い、恭也を強襲する裁。
「はえっ!? だが、センサーは追いついてる! 何とか避けろ!」
 裁の攻撃を寸でのところでかわす恭也。
『はっ、隙だらけだな? 頂くぜ!』
「そうはさせないでありますよ!」
「同じく」
「今度はそっちか! 油断も隙もありゃしねぇなぁ!」
 吹雪とコルセアが裁を援護する。恭也も否応なく二人の対応に当たるため、後方に下がりながらショットガンで二人を牽制。
 無論当たらない。恭也に合わせて無人型二機もマシンガン、ライフルを持って弾幕を張る。
「なかなか凄まじい弾幕でありますな!」
「ちょっと掻い潜るのは難しいわね」
『どうしたどうした! もう手も足もでねぇのかよ?』
「そんな訳、あるわけないじゃん?」
「裁!? 横か!」
 反射だけで後方に跳ぶ。恭也は避けたものの更にその横にいた射撃型が裁のXMA(武術)の餌食となる。
「おっしー! 大人しくコンボされてよね!」
『はいそうですねであんなにボロボロにされてたまるか!』
「大丈夫、XMAはスポーツだもん!」
『確かにいい動きだたぁ思うがスポーツの威力じゃねぇだろう! 見ろ! あの機動兵器ぴくりともしなくなっただろうが!』
「……装甲が薄いのでありましょうな」
『少なくとも人間様の皮膚よりは硬いわ!』
 機動兵器の中から自分を狙う暴風二つに突っ込む恭也。
「っくそ、まったくもってまともじゃねぇ! ……だが避けられる。対抗はできる、それで、十分だ!」
 一人熱き闘志を燃やしながら、残った強行型と二機で暴風を止める決意をする恭也。
 しかし、もう一つの暴風が彼に襲い掛かろうとしていた。

「機動兵器解体もしたい、おまけに柊のだんなも落としたい。ならばどうする?」
「二兎追うもの一兎も得ず、じゃないか?」
「違う、その逆だ。だんなの機体を落としてついでに分解解析改造すりゃいいのさ!」
「……鬼だなまるで」
「そんなことはないって、よーしそれじゃ片方の無人機はまかしたぜ!」
「お、俺一人かよ!?」
「だんなを落としたら帰ってくるって、いくぞー!」
 恭也を落とす波に乗るべくして戦場に姿を現したのは猿渡 剛利(さわたり・たけとし)三船 甲斐(みふね・かい)の二人だ。
 甲斐はフラッグや他の無人機には目もくれずに恭也の乗る機体目掛けてまっしぐら。
『ああ!? また増えたのかよ!』
「まあまあそう邪険にしなさんなって、私たちは遊びたいだけなんだよ」
『その遊びで、俺がどれだけ迷惑を被るかわかってんのか!』
「それはそれ、これはこれさ」
「機動兵器と言えば数で押せばどうにかなるはずであります!」
「次はあてるよー!」
 裁、吹雪が息巻いている。そんな恭也のモテモテぶりを横目に見る剛利。
「これっぽちも、羨ましくないんだなぁこれが。柊さん、南無……っと!」
 無人機が剛利に狙いを定めて攻撃をするが剛利には届かない。
「こいつは礼だ、受け取ってくれよぉ!」
 無人機の初撃を『ガードライン』で防ぎつつ、『お下がりくださいませ旦那様』で追撃する。だが、無人機への有効だとはならない。
「くっそ、すばっしこい上にいくら装甲が薄いって言っても人間より硬い。こりゃあの三人が恭也さんを撃退してくれるまで後手に回らないと」
「機械には機械だよな! ついでにこれはおまけだ!」
 片や【戦闘用イコプラ】を使用しながら『アンボーンテクニック』で恭也を絶え間なく攻撃する甲斐。
 それと同時に裁や吹雪も攻撃を合わせながら恭也を押していく。
「あれなら、そう時間がかかることもないかね?」
『くっそー! 三人相手は骨が折れるってんだよ!』
「……恭也さんが頑張ると、俺も一人で頑張ることになるんだけど、あの三人の女子力(武力)を信じて無人機を押さえるとするか!」
 無人機側も剛利に狙いを絞ったのか、他の三人は無視する。
 彼等の行動ルーチンが、着実かつ迅速に対象を沈黙させていくというコンセプトの元に作られている故だ。
「速さ、硬さ、火力。どれをとっても申し分ない、だがこっちには脳みそがある!」
 『アンボーン・テクニック』で先制し、決定打は撃たせない。
 無人機もマシンガンで応戦するものの防御に回ったセネシャルの剛利の前に有効な攻撃はなし。
 機動兵器を相手に冷静に戦う剛利と、恭也落としを敢行する甲斐。
 アンバランスのようで攻守揃った良い動きだった。