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THE 合戦 ~ハイナが鎧に着替えたら~

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THE 合戦 ~ハイナが鎧に着替えたら~

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5ターン目:『三国志演技』 〜 大炎上編 〜

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 ☆間違えてはならないのは、『演技』であって『演義』ではないということだ!
 
 では、ゲームを続けようか。
 まずは、信長陣営の新たな敵を紹介しておこう。
 
 南の森。
 あのハイナたちが戦っていた地点から東へ離れた砦から、一人の巨漢の英雄が出陣した。
 三国志においても人気の高い武将の一人である、張飛翼徳 であった。
『三国志演義』では、虎髭をたくわえ、ぎょろりとひん剥いた目に、派手な金刺繍をあしらった頭巾のような兜をかぶり、身長八尺(約2.4m)の大男ぶり。一丈八尺(約5.4m)の巨大な鋼矛を自在に振るって戦場を縦横無尽に駆ける武勇を誇る武将として有名な男とされている。
『三国志演義』は、人物は大きめに描かれているのでさすがに身長2.4mということはなかろうが、群を抜いた巨漢であったのは間違いないだろう。
 何しろ強い。縦だけではなく横にも広い体型は、太っているわけではなく全て筋肉であろう。見ただけで圧倒されるほどの存在感である。
 三国志屈指の圧倒的武勇を誇る武将でもあった。
 その張飛が、軍を進めながら思い出したように隣の男に聞いた。
「ふと思ったのだが、信長って、誰だ? どうして俺は、そんな奴の配下武将になってるんだ?」
「そんなものは、適当だよ。キミの頭の中には綿しか詰まっていないのは誰もが知っていることなんだから、余計なことは考えなくてよろしい」
 聞いてはいけない質問に力強く答えてくれたのは、三国志の英雄の一人として名高い(?)、禰衡正平(でいこう・せいへい)という男だった。
 張飛が出てきたからには、劉備も関羽も出てこないと格好がつかないのだが、不幸なことに二人とも英霊パートナーとしてパラミタに出張中だった。
 代わりにこのゲーム世界で張飛の元にやってきたのが、この禰衡という軍師だった。兵力は同じく3000。今回の信長陣営のモブNPCの一人であった。
 この男、何が英雄かって、あの曹操の陣営で並み居る武将たちを前に悪口雑言の限りを尽くし、挙句にストリップまでやらかしても殺されなかったのである。その後、大方の予想通り口は災いの元で、黄祖という三国志的には大して目立たない武将に叩き斬られるのだが、首だけになっても悪態をつき続けたと言われている超人なのであった。
「つまり、アレだよ髭ブタ君。君の愛するモーホー義兄弟の二人の兄者がいない以上、キミはただの腕力バカにすぎないんだから、つべこべ言わず親分の下で黙って働けって事。大体キミはr」
 ズバァ!
 張飛の鋼矛が禰衡を頭から真っ二つに切り裂いていた。
 代わりにやってきたのが、禰衡正平(でいこう・せいへい)という男だった。
「大体キミは、一人のときは留守番すらできず、呂布にも負けてお城取られて泣いて帰ったんじゃなかったっけ? 平原に呂布がいるって話だよ。ねえ、今どんな気持ち? ねぇねぇ、人気でも武力でも知力でも負けて、今どんな気持ち?」
 ズバァ!
 張飛の鋼矛が禰衡を頭から真っ二つに切り裂いていた。
 代わりにやってきたのが、禰衡正平(でいこう・せいへい)という男だった。
「そんなキミのために、この私が軍師として手伝ってやろうというのだよ。キミは心配せずに、その重いだけが取り得の武器で素振りの練習でもしていたまえ」
「ああ、そうかい。つまり斬っても斬ってもお前が現れるってわけだな。もういい」
 バグ効果で同じ味方が何度も出てくる。チェンジ不可、拒否も出来ない。張飛は諦めたように禰衡を迎え入れた。
 今ここに、三国志最強(最凶?)コンビが結成されたのであった。
 なんというか……、決してさわやかではないクセのある男二人……。敵方モブNPCにも可愛い女の子武将を用意できなかったのだろうか?
「待たせたアル。さあ、行くアルよ」
 心配しなくても、モブNPC女の子武将が率いる軍勢も合流してきた。
 これまた三国志で有名な金旋元機(きんせんげんき)の娘、金玉昼(きんぎょくちゅう:♀)である。この娘、名前が『きんぎょくちゅう』であり、決して『きんた○ひる』などと読んではいけない。女の子である。
 金旋の何が有名かって、ゲーム的に言うと、『三国志において金旋でクリアするのは、信長の野望において姉小路で全国統一するのと同じくらいに難しい』といえば、わかる人は同意してくれるだろうか。
 とにかく、大国に蹂躙され踏み潰される運命の、悲劇の姫君なのであった。 
 同じく3000の歩兵を率い、自身はチャイナドレスを纏って方天戟を装備した女の子武将だった。
「では、出撃するアル。シャンバラ軍とやらを撃滅するアルよ。……ところで、信長って誰アルか?」
「名前すら覚える必要はない。キミはすぐ死ぬであろうからな。……この娘、見るからに弱そうなのに、どうしてそんなに堂々と胸を張っていられることが出来るのか……」
 禰衡は不機嫌そうに言う。
 心強い仲間を手に入れた張飛。
「信長というのはですねぇ、魔王様なんですよ。悪そうだけど強い感じの人ですよぅ。……そうですねぇ、三国志に例えると、曹操っぽいかもしれませんねぇ。なんだか、イメージといいますか、タイプ的に……」
 張飛軍団の頼りない会話を聞いて、フォローするように馳せ参じてきたのは、佐野 ルーシェリア(さの・るーしぇりあ)だった。
 今回、披露するために、信長陣営で戦いに協力することになったルーシェリアは早くもテンションがさがり目だった。
 実は先日、イコン{ICN0004849#アルシェリア}を『【I.G.P】企画 SHIZUKA型・アルシェリア ver』へとリニューアル(メタ的には、イラストを新しく発注)したのだ。みんなに披露するためにやってきたのだが。
 あろうことか、このゲーム内へと持ち込んでくるのを忘れてしまったのだ。(メタ的には、参加時点でイコンが持ち込まれていない。いや、あるのはわかっているのだが……)
 ゲームプログラムに融通など利かないのであった。
 従って、彼女が率いる3000の兵士は一般歩兵と同じであるし、ルーシェリアも装備グラフィックこそ美麗な新調イラストと同じだが、能力的にはイコン装備していないのと同じであった。
 彼女が遅れてやってきたのもちょっぴり落ち込んでいたからかもしれない。
「なんだかもういいですので、森の地形を生かしてシャンバラ軍の兵力をサクサク減らして生きましょう」
「なるほど、曹操軍か……。おおむね理解した」
 複雑な表情の張飛。 
「う〜む……。要するにハイナとか言う小娘を討てばいいんだな。旗下に大勢の武将が集まっているということは、相当なカリスマの持ち主なのだろう。戦うのが楽しみだ」
 話を聞いて、張飛はすぐに気合を漲らせた。相手が女の子であろうとも、戦場へ出てきている以上は一人の勇士。相手に不足はない、と満足げに頷く。
 総兵力:12000。
 さて、シャンバラ軍は彼らを相手にどう戦うのであろうか……。