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合同戦闘訓練 ~市街戦~

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合同戦闘訓練 ~市街戦~

リアクション

 4章 19時〜20時


 Aチーム指揮官、大洞は、これまでの状況、諜報した情報をまとめあげ、以下の決断を下す。
『今、チームは負けている。当然、相手は守りに入るだろう。だから、ガンガン攻めて行こうと思う。
 こちらは相手の拠点の位置を、佐野の情報により知っている。そこで、特攻組と拠点襲撃組に分かれようと思う。拠点にいるであろう指揮官から崩していくんだ。
 拠点襲撃組は、拠点を落とし、敵の機能を停止させる。拠点襲撃組は敵に存在を悟られてはならない。指揮官が逃げてしまうかもしれないからな。少人数で、隠密行動を心がけてくれ。その役は、山葉涼司さん、加夜さんの2人にお願いしたいと思います。
 他は全員、もちろん自分も、特攻組だ。できるだけ敵を倒し、敵の意識が拠点襲撃組にいかないようにしよう。ただ、スナイパーの存在が確認されている。気をつけてくれ。あと、もう日が落ちた。電灯はあるが、暗闇から奇襲されかねない。それも気をつけろ。
 それでは全員! 健闘を祈る!!』
 
 解散したあと、大洞は、たまたま側にいたミスティに問う。
『元々自分は指揮官なんてするつもりは無かった。誰もやらないからやっただけだ。ちゃんとできてるか? 自分は』
『まぁ、訓練なんだからいいんじゃないですか? 失敗することを怖れては何もできませんよ。この判断が失敗だったなら、この経験を実戦に反映させればいい。それだけですよ。さて、私たちも行きますよ!』
 
   ■   ■

『行くよ〜レティ君! ミスティ君! 僕の攻撃方法は全て相手に伝わってるだろうし、とりあえず暴れるよ!』
 永井はそう言い、チャクラムを手に特攻し、フラワシを適当に暴れさせる。
『おぉ! なんか自棄になってるだけのように見えなくもないですが勢いはいいですねぇ!』
 レティシアも言いながら、ハリセンを手に突っ込む。
 それを、すぐ側で、カルは観察していた。
『自棄になってるな。隙しかないよ、3人共』
 言いながら辺りの石を掴み、狙いを定めようとした、その時。
『ん?』
 永井が適当に暴れさせていた、【嵐のフラワシ】がカルを発見し、とてつもない早さで突っ込んできた。
『わっ、わっ!』
 突然のことであるし、防御する手段もないカルは軽くパニックになり、目をつぶってしまった。
 そして次に目を開けた時には、バルーンは2つ共割られていた。
『あー、くそぅ。リタイアかー……。もっと強くならないとな』
 
 カル・カルカー リタイア

   ■   ■

 勢いがよくても、ただがむしゃらに特攻しているだけだ。
 だが、がむしゃらだからこそ、予測不能な行動をするかもしれない。なら、動きを一旦とめてやる。
 紫月は永井の進む先に、【不可視の糸】を編み、強度を付けた糸を張り巡らし、罠を張る。
 糸を絡ませて動きを止めるのだ。
『ん、あれ? おぉ!?』
 永井は紫月の思惑通り、罠にかかった。
 紫月は飛び出し、素手でバルーンを2つ共割った。
『ふぅっ、少しは何か考えて動くべきでしたね』
『んー、うん、まぁ、考えてるよ。少しは』
『?』
 紫月が疑問に思った瞬間。
 永井の背後から、手裏剣と【歴戦の魔術】が飛び、紫月のバルーンを2つとも的確に撃ち抜いた。
『!? なっ!?』
『簡単なことだよ。僕は君に手の内を全て明かしてしまっているから、何をしても対処されてしまうだろう。だから、突撃して囮になってただけのこと。あとはバックアップのレティ君たちに何とかしてもらえばいいだけさ』
 見ると、永井の後ろではレティシアとミスティが武器を構えていた。
『さて、レティ君、ミスティ君、僕という盾が失われてしまったけれど、頑張ってね!』

 永井、紫月 リタイア

   ■   ■

 九条は、ブリジットを発見した。
 シンがやられた時の状況は、携帯越しでは分かりづらかったが、なんとなく、上空から攻撃してくる敵がいる、ということは掴んでいたので、一番高いビルに上り、そこから捜索していたのだ。
『みーつっけた! シンちゃんの敵はとるよーっと? あれは……』
 ブリジットの持つマスケットが向いている方向には、レティとミスティがいた。さらには夜刀神までいる。
 奇襲されているのだ。
『よぉーし、今すぐ私が助けてあげるぜぃ』
 九条はスコープをのぞき、ライフルを構え、狙撃準備を始める。
 しかし、そうしている間にミスティがブリジットの弾丸を浴びてしまい、リタイアになる。
(落ち着け……、あ、大洞が来た。よし、まだ挽回できる。とりあえずあの機晶姫を)
 九条は狙いを定め、撃った。
 弾はブリジットの尻尾のバルーンを2つ一気に撃抜く。
『よっし。さて次は…』
 九条は続けて撃とうとするが。
 向かいのビルに、こちらに銃口を向けている女の子がいるのが目に入る。
(え!? あ、逃げ……)
 しかし、遅い。
 女の子、マイアが撃った弾丸は、的確に九条の最後のバルーンを撃抜いた。
『あちゃー…、そういやスナイパーいるって言ってたなぁー。暗いからよく見えなかったよ、油断した』

 ブリジット、ミスティ、九条 リタイア

   ■   ■

 レティシアと大洞は、夜刀神と斎賀たち芋砂集団に苦戦していた。
(くそっ、無理がある! スナイパーが多すぎる! これは自分たちでこの場をしのぐのは無理だ! 仕方ない!)
『レティシア君っ! 時間稼ぎだ! 生き残ることを考えろ!』
 大洞が下した判断は、勝つことも逃げることも無理。ならば、できるだけ時間を稼いで、あとは山葉たちに全てを任せる、という判断だった。
 しかし、斎賀たちは一人ずつ対処しようと考えたようで、レティシアが集中砲火を浴びてしまう。
『あうっ』
 レティシアは何とか避けるが、避けた先には。
『おおっ!!』
 夜刀神が剣を振りかざしていた。
 そして、レティシアのバルーンが2つ共、割れた。
『よし、残るは一人ッ……!?』
 夜刀神は大洞に特攻しようとするが、既に大洞はこちらにハンドガンを向けていた。
 ハンドガンが火を噴き、夜刀神のバルーンが2つ共割れてしまった。
『ぐぉっ、くそっ。だが、終わりだな』
 夜刀神の言う通り、終わりだ。
 大洞に向けて、斎賀、マイア、那由他の一斉射撃が襲った。
 大洞は、リタイアした。
『あぁ、くそ。時間は思ったように稼げなかったな。でも、まぁ、ギリギリスナイパーたちの居場所は掴んだし、その情報を山葉さんたちに伝達することはできた。あとは頼みましたよ! 涼司さん、加夜さん!』

 レティシア、大洞、夜刀神 リタイア

   ■   ■

 涼司と加夜は、拠点を襲撃しようとしていた。
 Bチームの拠点としているビルには、龍滅鬼と陳宮の2人がいた。
『生き残れば勝ちなのです。私たちは戦場に行かなくとも、ここに隠れていればいい。今の戦況は有利なのだから、大丈夫でしょう』
 涼司たちは、陳宮 公台(ちんきゅう・こうだい)の声を聞き取る。
『よし、油断してるな。一気に突っ込むぞ』
『分かりました。涼司くん。【ポイントシフト】で距離を詰めます』
 涼司と加夜は、タイミングを合わせ、拠点へ乗り込んだ。
『【ポイントシフト】!』
 加夜は距離を詰め、2人に向かって【ヒプノシス】を唱えた。
 陳宮には【ヒプノシス】は効果があったようで、すぐに昏倒した。
 しかし、
『ふん! 一度見た技くらい、見切れるわ!』
 龍滅鬼は、防いでいた。
 そしてそのまま、加夜へ刀を振り下ろす。
『加夜っ!』
 涼司は叫び、龍滅鬼を先に仕留めようとするが、遅かった。
 加夜のバルーンは割れ、リタイアとなる。
『くそっ! だが、お前は隙だらけだぜ!』
 涼司は剣で、龍滅鬼のバルーンを貫いた。
 そのまま、昏倒している陳宮にも剣を突き刺す。
 2人共、リタイアとなった。
『ぐっ、くそ……。やっぱり強いですね』
 龍滅鬼は悔しそうに言う。
『ですが、今回の勝負には、勝ちましたよ。先程の連絡だと、まだこちらにはスナイパーが3人残っています。さらに、彼らの居場所を一人で突き止め、戦うには時間がなさ過ぎる』
『いいや、そうでもないぜ? スナイパーの居場所なら既に特攻組が特定して、さっき教えてくれた。今ならまだ間に合う。さて、最後の戦いに行くとしますか!』

 加夜、陳宮、龍滅鬼 リタイア

   ■   ■
 
 斎賀は、警戒していた。
 何故なら、山葉涼司を発見した、倒した、という情報がまだないからだ。
『まぁ多分居場所はバレてないと思うし、このまま時間がくるまで警戒してりゃ大丈夫、っと?』
 斎賀のHCに連絡が来る。
 マイアからだった。
『昌毅! そこから逃げて下さい! 敵はこちらの居場所をッ――』
 HCから、ドゴォ! 何かが壊れると音が響く。
『!? おい、マイア!? くそっ。まさか山葉校長か!? とにかく俺もここから逃げ――』
 斎賀は急いで立ち上がろうとするが、背後に、気配を感じた。
『ッ……マジかよオイ』
 後ろにライフルを構える、が。
『遅いッ!』
 斎賀は、暗闇でよく分からなかったが、目の前に閃光がほとばしったかと思うと、既にバルーンは割れていた。
 斎賀を切った影は、すぐにその場から離れ、次へ向かう。
『あー、今のはやっぱ山葉校長だろうなー……、やっぱ強えな。だが、まだ那由他がいる。アイツならなんとかすんだろ。さて、あとは結果をまつだけだ』
 
 斎賀、マイア リタイア

   ■   ■   ■

『おっと、ストップなのだよ』
 那由他は背後に気配を感じ、言う。
『昌毅たちの状況はスコープで見ていたのだよ。暗くてよく見えなかったけど、山葉校長でしょ? 那由他には何でもかんでもお見通しなのだよ』
『あー、まぁ、なんだ。悪いが、時間もねぇし切らせてもらうぜ?』
 涼司は言いながら、剣を抜く。
『うむ。まぁそう急がずになのだよ。これ、なーんだ?』
 那由他は背後の涼司に見えるように、何かのスイッチのようなものを見せる。
『? トラップか何かの?』
『にひひ。そんな甘いものじゃないのだよ。ここら一帯のビル群を倒壊させる爆弾のスイッチなのだよ』
『あぁ? そんなもん……、いや、ちょっと待て。まさか……』
『この訓練所は借り物。そして今回の訓練の責任者は、山葉校長。あなたなのだよ。この訓練所を吹っ飛ばしたら、その分の修理費その他は誰にいくのかな?』
『おまっ!? ちょっ、それはマズいって! やめろって!』
 山葉は一気に動揺し、止めようとする。
 これだけの訓練所をほぼ全て吹っ飛ばした場合の修理費は馬鹿にならない。
『もう少しッ! あッ! やめろ! 押すなァーッ!!』
 那由他は、にやりと笑って。
いいや! 【限界】だッ! 押すねッ!
 カチッと。
 スイッチが入る。
 ゴッ! と爆発する音が響き。
 涼司は思わず目をつぶって――。