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祭とライブと森の守り手

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祭とライブと森の守り手

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祭の風景1

「うーん……祭だねぇ」
 右手にクレープ、左手にたい焼きを持ち、清泉 北都(いずみ・ほくと)は祭りを眺めてそう呟く。自分たちも手伝った街道作り。その祝の祭りとなると、単純な祭の楽しさの他にも感じるものがある。
「だな。美味しい物もたくさんある」
 北都と分けあい少し冷ましたたい焼きを頬張りながらパートナーである白銀 昶(しろがね・あきら)もそう言った。祭は始まったばかりだが二人は出店を食べまわり祭を満喫していた。
「あ、あの人一緒に街道作った村の人だよね。街道の様子をちょっと聞きに行こうか」
 そう言って北都は村人に近づいていき昶もついていく。
「街道ですか? ええ、使われ始めて間もないですが好評ですよ。街道のお陰でこんなにも祭の客が増えてます」
 北都が街道のことを聞くとそう村人は返す。
「そっかよかったよ。やっぱり自分が手がけたものだから気になってて」
 だから北都は街道が不自由なく使われるよう点検を定期的にしたいと思っていた。例えばこうした祭に足を運んだ時などにでもできればそれが一番だと。
「ね、昶。甘いモノばかりだと飽きるし何か美味しそうなの無いかな?」
 村人に挨拶をして離れた北都は昶にそう聞く。先ほどまであったクレープとたい焼きの姿はもうない。
「俺はなんか肉類がいいな……うーん……フランクフルト屋とかは近くにないな」
 串焼き屋等を昶は探すが、残念ながら周りは綿菓子や射的の店が多く肉をメインに据えた出店は見当たらない。
「あ、昶。おでん屋さんがあるよ」
「おでん……熱すぎるのは苦手なんだが……牛すじでもあるならいいか」
 見つけたおでん屋に北都と昶は向かっていく。
「ん? 清泉と白銀か。いらっしゃい」
 二人が顔を出したおでん屋で待っていたのは瀬島 壮太(せじま・そうた)だ。壮太は街道づくりにも参加していたこともあり
屋台の出店に空きがあると聞いておでん屋を出店していた。
「ご注文は? 5品で100Gだ」
「んーと……僕はやっぱり卵かなぁ……他はおすすめでお願いするよ」
「オレは牛すじ食べたいから一つ入れてくれ」
「悪い。牛すじは入れてないんだ。とりあえずちくわぶ食え」
 関東出身のせいか、壮太としてはちくわぶは外せないらしい。おすすめを頼まれたら当然のごとくちくわぶを5品の中に入れていた。逆に牛すじは入れるかどうか迷ったが結局入れなかった。
「ちくわぶじゃ牛すじの代わりにはならないだろ……」
 昶の嘆きをスルーしながら壮太は卵にちくわぶと5品と、おまけの一品をパックに詰めていく。
「はい、毎度あり。おまけつけといたぜ」
 お礼を言って代金とおでんをやりとりし、壮太に見送られ北都と昶は店を離れる。
「んー……このおでん美味しいね。関東風みたいだけど」
「熱すぎて食えないし……肉ないって……」
 食べれると思ってたものがなかったためか少しだけ昶は落ち込み気味だ。
「ん? あれ村長さんだね。んー……話聞きたかったけど今忙しそうだね。明日お祭りが終わった後にでもしようか」
 北都は人波の中すれ違ったミナホを見送りながらそう言う。
「(……なんか、浮かない顔してるが……まぁ大丈夫か。手伝う奴はオレら以外にもいるだろうし、森の問題ならあいつらもいる)}
「昶? なにか言った?」
「いいや、祭楽しもうぜって言ったんだ。村長が頑張って催してる祭だからな。盛り上げようぜ」
 昶の言葉にうなずき北都も祭を精一杯楽しむことにした。


「ん? ミナホさんじゃないか」
 おでん屋をやっている壮太の前をミナホが通る。壮太は声をかけて呼び止めた。
「あ、壮太さん。お疲れ様です。出店していただいてありがとうございます」
 そう言ってミナホは頭を下げる。
「いや、こっちも楽しんでるからいいさ。それより、街道は順調に役立ってるみたいだな。とりあえずおめでとうって言っておくぜ」
 それと、と置き壮太は続ける。
「街道のためとはいえ、家のこと悪かったな……いや、謝るのもなにか違うと思うんだが……」
 街道作りの折、壮太はとある理由から村長の家を壊しその木材を街道作りに利用することになった。家を壊すことはミナホからの提案だったが、それでも引っかかったものがあり壮太は気になっていた。
「大丈夫ですよ。集会所での生活も悪くないです。父は腰がいたいと嘆いてますけどね」
「ミナホさんはそういう所は強いんだな」
 呆れたような感心したような笑みをこぼしながら壮太はそう言う。
「ところで壮太さん。私のことをさん付けで呼ぶ必要はないですよ? 年はそんな変わりませんよね?」
「ん? ミナホさん今いくつだ?」
「19ですが今年で20になります」
「そんな若かったのか……」
 確かに自分とほぼ年は変わらないと壮太は思う。そんな若いミナホに村長職を任せるとかやはり前村長は食えない男だと思った。
「……もしかして私ってそんなに老けて見えるんでしょうか」
 少しだけショックを受けたような表情をしてミナホは聞く。
「しゃべってなければそれなりに大人びて見えるな。話しだしたら途端に幼いイメージになるけど」
「そうなんですか……うーん私のイメージはよく分かりませんけど、年が離れていないですし他の方と同じように呼び捨てで大丈夫です」
「……そういう理由ならオレの方も呼び捨てでいいようなが気がするが……ま、考えとくよ」
 年がよく分かっていなかったこともありミナホとの距離感はどうすればいいか分かりにくい。
「なんかあったら力を貸すからその時までにでも決めとくさ。そうだな……村長の家を建てるときとか、いつでも声をかけてくれよ」
 そう言って壮太はミナホに差し入れのおでんをサービスして渡した。