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新米冒険者と腕利きな奴ら

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新米冒険者と腕利きな奴ら

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■幕間:恋のご指南承ります

 空は赤く染まり、夜へと姿を変える黄昏時。
 仁科 姫月(にしな・ひめき)は風里を前にして言いました。
「初めまして、私は仁科姫月よ。よろしくね」
「よろしくしてあげない」
「ねえ、あなた、お兄さんの事、好きでしょ」
 その一言に風里は眉をひそめた。
 だがそんな様子に気づくことなく彼女は話し続ける。
「私も兄貴が好きで、このあいだ……ついに恋人同士になれたのよっ!」
 きゃーっ! と身悶えしている姿は可愛いと言っても差支えないだろう。
 恋話に喜ぶ姿は年頃の少女そのものだ。
「私、優里より年上よ? お姉さんだから間違えないで」
 嘘偽りない言葉だ。
 どうやら年下に思われるのが嫌な様子である。
「それに優里のことは嫌いじゃないわ。私、恋愛したことあるからわかるのよ」
「そうなの? それじゃあ今後好きな人ができたときのために、私が秘密裏に泥棒猫を排除する方法や誘惑の仕方、さりげないアピールの方法を教えてあげる。実話だから成功は保証ものよ!」
 仁科は身振り手振りで話をする。
 言ってしまえば兄を落とすために頑張った武勇伝のようなものであった。
「――でね、私もさすがにキツイこと言いすぎたかなあって反省して『ごめんなさい、兄貴。お詫びに今までの分、私を……』って、きゃー、きゃー、これ以上は言えないわ、ホント」
 楽しげに話す仁科を成田 樹彦(なりた・たつひこ)が何とも言えない表情で見つめていた。
「バニッシュで吹き飛ばそうかな、あれ」
 頭を押さえているあたり、本当に頭痛を感じているようだ。
 そんな様子に気づかない仁科は話を続ける。
「それで、そんなこと言われたら私ももうどうしようって、兄貴ってば夜が――」
「はいストップ。止まれ、落ちつけ」
「……ちっ、間が良すぎて殴りたくなるわね。あと少しで赤裸々な話が……」
「勘弁してくれ。それに君の兄はどうした?」
「あれよ」
 風里は言うと窓を指さした。
 外、グラウンドに二つの影があった。
 一人は風里の弟、優里だ。
 もう一人は眼鏡をかけた妙齢の女性、騎沙良 詩穂(きさら・しほ)だ。
「優里さんは冒険者志望なんですね。では、財宝を発見したときのシュチュエーションをやってみましょうか☆」
「おぉっ! 財宝とかすごく冒険者っぽいですね。ワクワクしてきました」
 良い反応が返ってきて騎沙良も気分が良くなったのか、自然と笑みが強くなる。
「さてここにありますは『黄金の地図』。いかにもお宝のありかが示されていそうですよね〜。今日のために用意したんですよ。というわけで、これは優里さんが見つけたということで持ち帰っていいですよっ!」
 言い、騎沙良は地図を優里に渡した。
 彼は受け取るとまじまじと眺めた。
「ここが学園ですから、これは近くを流れてる川ですよね」
 話しながら優里は地図を指さす。
 これはここ、と確認を進めているうちにパリッ! と静電気のようなものが指先から肘くらいまで奔った。突然の出来事に優里はうわっ!? と悲鳴をあげる。
「お、驚いたなぁ」
「今ピリッときましたね? もしこれが毒だったら死んでいましたよ」
「毒っ!?」
「ええ、財宝はとても大切なものを隠して、しまって、盗掘されないようにと、何十にも細工を施して守られています。今の例だと地図なので、思わず財宝のありかを示す部分に触れたくなります。そういった心理をついたんですね」
 なるほど、と優里は頷く。
 二人とも真面目な気質のせいか無駄な話がほぼない。
 授業らしい風景であった。
「今日は大切なものを守ったり運んだりするための技術、財政管理を教えますよ。冒険者ともなれば貴重品の管理を任されることもあります。しっかり学んでくださいね」
「はいっ!」
 そうして二人は貴重品の保管や移送方法の講義を進めていく。
「あれが私の弟よ」
「真面目そうだな」
「真面目そうね」
 仁科たちは教室から優里たちの様子を眺めていた。