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封印された機晶姫と暴走する機晶石

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封印された機晶姫と暴走する機晶石

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■幕間:最後の防衛線


 モーベット・ヴァイナス(もーべっと・う゛ぁいなす)は街を背にしながら魔物が来るのを警戒していた。彼だけではない。そこにはエヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)笠置 生駒(かさぎ・いこま)ジョージ・ピテクス(じょーじ・ぴてくす)シーニー・ポータートル(しーにー・ぽーたーとる)らの姿もあった。
「ウキー!!」
 ジョージが叫んだ。
 何やら不満な様子で飛び跳ねている。
「うん。退屈なのはわかるけど落ち着こう」
「というか、どー見ても猿その物だよね」
 笠置とシーニーが思うところを口にする。
 獣が遺跡から溢れたという知らせを聞いた彼らは街を守るべく、最後方で待機しているのだが、思った以上に獣の姿はない。時折、迷い込むようにやってくるのを退治して回るだけであった。
「ウオオオオオンッ!」
 数匹の獣がやってきた。
 それを見るなり、エヴァルトが駆け出す。
「せいりゃあああああっ!」
 剛腕が唸り、獣のボディを深く抉る。
 ベキ、ボキ、という骨の砕ける音が拳を伝わった。
「ガフッ、カフ……カハ……」
 獣は涎をまき散らしその場に倒れ伏した。
 時折ビクンビクンと痙攣している。
「もろすぎるな」
 彼は言うと隣を見た。
 そこには飛びかかる獣とバットを構えているモーベットの姿があった。
「距離良し、角度良し――」
 ブオンッ! と風が唸った。ボキャッ、という口にするには憚られる系統の音が耳に届いた。エヴァルトは見た。頭からバットに当たり、顔がゆがみ、牙が折れ、目玉が飛び出した獣の姿を……。
 次の瞬間には空を飛んでいく獣の姿があった。
「うん。悪くないな」
「おい、なんだそれは?」
 彼の疑問にモーベットは真顔で答える。
「剣だ」
「いや、どう考えてもバットだろ!?」
「元より剣は切るよりも叩くのが主流だ。だから問題はない」
「答えになってねえっ!」
 二人が会話している中、あぶれた獣にジョージが咬みついていた。
 獣を咥え、恍惚とした表情で天を仰いでいる。
「ジョージそれ餌じゃない!!」
「戦ってるというか本能だよねそれ」
 シーニーのみ終えた酒瓶で獣の頭を叩きながら言った。

 わいのわいのと彼らは騒ぐ。
 だが獣がやってくると確実に退治していった。
 統率もとれていない、数の少ない獣など彼ら熟練者の前では幼子に等しい様子であった。
 こうして遺跡を発端とする事件は終わりを迎えた。