|
|
リアクション
★ ★ ★
「はははははは、P級四天王よ。お前たちの悪事もここまでであります!」
椰子の木のてっぺんにすっくと立った葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)が、遊歩道を逃げるロングバスタオル姿のコルセア・レキシントン(こるせあ・れきしんとん)にパンツを被せようと追いかけているP級四天王デカパン番長にむかって名乗りをあげました。スクール水着に、片目の部分だけ出した紙袋を被っています。
「貴様は何者だ!」
「お前たちに見せるパンツは薙いであります!!」
誰何するP級四天王に、葛城吹雪が言い返しました。そこは、名乗る名前はないなのですが……。
いろいろと、段取りが滅茶苦茶です。
「とにかく、あなたたちのような、我らの中でも一番の小物たちは、この自分が引導を渡してやるであります。とうっ!」
椰子の木の上から、葛城吹雪が飛び降りました。風で、被っていた紙袋が宙に舞います。その下から現れた素顔は……、いいえ、何か被っています。パンツです!
「見てない……。私は、何も見ていない……」
呪文のようにつぶやきつつ、コルセア・レキシントンが後ずさりしました。ここで関わったら、人生終わりそうな気がします。
「そ、そのパンツーハットは。まさか……」
皆まで言えないうちに、P級四天王たちが葛城吹雪の一撃で吹っ飛びました。
「戦いの基本は、各個撃破であります!!」
そう言うなり、葛城吹雪が、倒れているPモヒカン族たちの手や足を掴んで、遠くへと吹っ飛ばしました。こうすれば、落ちた先にいる他の人が、余裕でPモヒカン族たちを狩ってくれるでしょう。
葛城吹雪のターゲットは、目の前にいるP級四天王です。
「さあ、タイマンであります。P級四天王を倒して、自分が新たなP級四天王になるであります!!」
そう言うと、葛城吹雪が古代の力・熾で、おのれの力を巨大な分身として具現化させました。それが、振り上げた拳を、葛城吹雪の動きに合わせてP級四天王に叩きつけます。
一撃で、P級四天王が倒れました。やはり、一番の小物だったようです。
「取ったどー」
P級四天王の被っていたパンツを剥ぎ取ると、葛城吹雪はそれを高く突きあげて叫びました。
「た、他人のふり……」
茂みの奥に隠れてガタブルしながら、コルセア・レキシントンはつぶやき続けました。
★ ★ ★
「おおっ、飛んできたのだよ……って、また野郎なのか!!」
葛城吹雪が吹っ飛ばしたPモヒカン族が飛んでくるのを確認して、イングラハム・カニンガム(いんぐらはむ・かにんがむ)が、そのタコのような触手で受けとめて電気風呂へと落としていきました。
「あががががが……」
最大出力に改造されている電気風呂のトラップに突き落とされて、Pモヒカン族が痺れて動けなくなります。
「にしても、たっゆ〜ん、たっゆんな女Pモヒカン族がやってくるのを楽しみにしておったのに、飛んでくる者、飛んでくる者、ことごとく野郎ではないか。これではつまらん!」
電気風呂が一杯になるくらいにPモヒカン族をためて、イングラハム・カニンガムがぼやきました。
このトラップを作成する途中で見たハデスの発明品の触手の妙技を思い出しながら、イングラハム・カニンガムはなぜ触手スキーな女Pモヒカン族が飛んでこないのかと葛城吹雪のチョイスを疑いました。まさか、意図的にやられている?
「よし、たっぷりとたまったのだ。止めで機晶爆弾を……」
「こらー、そこ、爆発物を使わない!」
これだけPモヒカン族を同じところに吹っ飛ばしていれば、嫌でも目立ちます。駆けつけた天城紗理華が、イングラハム・カニンガムを怒鳴りつけました。
「えっ……」
お湯で濡れたイングラハム・カニンガムの手から、機晶爆弾がポロリと落ちます。まさに、巨大温泉の戦い、ポロリもあるよです。
ちゅどーん!!
「あーれー」
爆発に吹っ飛ばされたイングラハム・カニンガムが、電気風呂に落ちて気絶しました。防御結界で爆発の力は抑えられていますが、すっころぶのには充分でした。
★ ★ ★
「何やら騒がしいけれど、さすがにここまではやってこないですよね」
観葉植物にドーム状に被われた小さなお風呂に入りながら、水原ゆかりが言いました。いろいろと安全なお風呂を探して、やっとここを見つけたのです。この大浴場は、探せば結構こういう隠れお風呂があります。
「ええ。さすがに大丈夫でしょう?」
水原ゆかりと狭い湯船でぴったりと身体を密着させながら、マリエッタ・シュヴァールが言いました。
湯船の上に天井のように覆い被さった葉陰から差し込む光で、お風呂は薄暗い緑色に輝いて、ちょっと神秘的です。
人目もないので、二人は安心して裸になっていました。
いちおう、のぞきやPモヒカン族の襲撃を防ぐために、マリエッタ・シュヴァールが周囲にトラップは張り巡らせてあります。
「やっと二人っきりですね」
「なんだか、おじさんみたいな言い方よ」
「ふふふ、誰もいないからいいんです」
ぷにぷにとマリエッタ・シュヴァールのお肌を堪能しながら、水原ゆかりが言いました。お返しにと、マリエッタ・シュヴァールが、水原ゆかりのお肌をすべすべサワサワします。
「うふふふふふ(はあと)」
二人が二人だけの世界を堪能していると、マリエッタ・シュヴァールが突如殺気を感じました。次の瞬間、ビターンと、誰かが盛大に転ぶ音が響き渡ります。マリエッタ・シュヴァールが下草を結んで仕掛けておいたトラップに引っ掛かって、Pモヒカン族が盛大にすっころんだ音です。
「眠って!」
「あっち行って!」
水原ゆかりがヒプノシスでPモヒカン族を眠らせると、水原ゆかりがサイコキネシスで端っこにある排水口へと落としました。
「さあ、続き続き」
「うん(はあと)」
★ ★ ★
一方、こちらは、人目のつかない洞窟風呂です。薄明かりしかないので、ほとんど真っ暗なお風呂です。
Pモヒカン族との戦いの喧噪から逃れて、綾原さゆみとアデリーヌ・シャントルイユはこちらのお風呂に避難していました。
「ふう、やっと落ち着けたわね」
「そうですわね。ここなら人目につかないから、パンツな変態さんがやってくることもないと思いますわ」
岩に囲まれた洞窟風呂は少し大きくて、ちょっとした迷路です。その中で、二人の声が反響してあちこちから聞こえました。
「うん、人目につかないわね」
そう言うと、綾原さゆみがアデリーヌ・シャントルイユをだき寄せました。暗闇の中で二人でキスをします。
会話の響きがなくなって、静寂が訪れます。ときおり聞こえるのは、二人の身体の動きに合わせて起きる水音と、微かな吐息の音だけでした。
「もう少し奥へ行く?」
肩から滑り落ちたストラップを直すこともせずに、綾原さゆみが言いました。ここはまだちょっと明るすぎます。
「ええ」
そのまま二人は、奧の深淵の方へと手をとって進んでいきました。