リアクション
エピローグ チョコアート展の夜
日も沈み、空には宝石のように煌めく星と真珠のような丸い月が昇っていた。
賑やかなアート展も夜が深まるごとに静けさを増していき、やがてお客は全ていなくなりコントラクターたちが後片付けを手伝っている。
「ねえ、パッフェル」
「……? どうしたの?」
円に声をかけられて、パッフェルが振り返るとラッピングされた箱を差し出されていた。
「円……これは」
「うん、バレンタインのプレゼントだよ。……ちょっと形悪いけど、頑張った」
円が照れくさそうにはにかむと、パッフェルは目を潤ませながらチョコを受け取った。
「ありがとう……凄く嬉しい……」
「パッフェル……」
作業の手を止めて、二人は星空の下でしばらく互いを見つめ続けた。
「栄斗……」
「ん?」
「いや、なんでもない……」
ユーラは手に持っていたチョコをそっと隠した。
昼間、何の気なしにチョコを渡そうとしていたユーラだったが見事にタイミングを逃していた。
そのうえ、満点の星空の下という狙った様なシチュエーションがまたチョコを出しづらくしている。
「ふうん? まあ、俺には用事があるんだけどさ。ほら」
そう言って栄斗は大きな箱を取り出すと、フタを開ける。
中には大きなハート型のチョコにデコペンでユーラの笑顔がいらすとされたものが入っていた。
それを見て、ユーラはかあっと顔を赤くした。
「な、な、なななな…何を描いておるのじゃおまえは〜!! こ、こんなもの公衆の面前に出されては、わしが自己顕示欲の塊のようではないか!」
「受け取ってはくれないのか?」
「……ま、まあ……今日のところは説教はせん。ほれ」
ユーラは栄斗からチョコを受け取ると、隠していたチョコを栄斗に渡した。
「ユーラ……これ」
「な、何も言うな! 恥ずかしいではないか……! 早く片づけるぞ!」
「おう!」
ユーラは耳まで赤くなった顔を背けて機材を片づけると、栄斗は笑みを浮かべてそれに続いた。
自分たちの作業も終えてリアトリスはレティシアと一緒に自宅のベランダに立っていた。
「いい夜ですねぇ」
レティシアは夜空に浮かぶ星を見つめて、そんなことを呟いた。
「うん、こんな最高のシチュエーションでプレゼント渡せるとは思わなかったよ」
リアトリスは隠していたムーンストーンで造られたイヤリングをレティシアに手渡し、
「レティ、大好きだよ」
そのまま手を握ると、顔を近づけて唇を奪った。
リアトリスが顔を離すとレティシアは顔を真っ赤にしてしまう。
そのまま、リアトリスはレティシアの手を握り締めたまま祈るように目を瞑り、
「僕達の愛が永遠でありますように」
そんな言葉を口にした。
その瞬間、夜空に浮かぶ幾つかの星が二人を祝福するように流れては消えていった。
──了──
こんにちは、本シナリオを担当させていただいた西里田篤史というものです。
今回のシナリオに参加してくれた方々にこの場を借りて、厚く御礼申し上げます。
もう少し早くに投稿したかったのですが花粉の影響で執筆作業が遅れました。こんなキャッキャウフフで幸せそうな話を書いてる当人は花粉で鼻水と涙を垂れ流しにしているわけです。まあ、いつの世も笑っている人間の影に泣く者ありといったところでしょうか。
閑話休題として、無事にチョコアート展も終えることが出来ましたのも多くの方がシナリオに参加していただいたお陰です。本当にありがとうございました。
短い挨拶となりましたが、今回のシナリオはひとまず終わりとなります。
また、何かのシナリオで皆様とお会いできるのを楽しみにしております。
それでは、失礼致します。