天御柱学院

リアクション

「あらあら、まったく、しつこいですわねぇ！　生意気な魔力ですわぁ！」
「天晴れな剣術。よもやここまでの熟練者と合間見えるとは。不謹慎かもわからぬが、心が躍る！」
　既に巨人の頭頂部へ到着していた足止め班が戦闘を繰り広げていた。
　眼前に立つ不死身の騎士と魔女を相手に、押され気味に。
「私のありったけ！　くらいなさい！」
「一撃に、かけます！」
　全属性の魔法攻撃を行う咲耶。能力を向上させ剣の乱撃を放つアルテミス。
　申し分のない。相手が普通なら、ば。
「これなら、どんな相手でも……って、そんなっ、無傷っ？！」
「ほとんど防がれましたが、手応えのある一撃は入りました。これなら……って、傷が再生しているっ？！」
　相手は化け物。狂気に捕らわれた、云わばバーサーカー。
　異常が正常な相手。無論攻撃は決定打にはならず、二人は反撃を受ける。
「きゃああっ！」
「くうっ！？」
　重すぎる一撃に体制を崩す二人。
「バ、バカなっ？！　我がオリュンポスの精鋭が敗れるだとっ？！　お、おのれっ、戦略的撤退だ！　覚えておれよっ！」
　敗れた二人を速やかに回収して【戦略的撤退】を計るハデス。
　余談だが、騎士と魔女を相手にする時にこのハデス、
『別に、あの騎士と魔女を倒しきってしまっても構わんのだろう』
　などと最高のフラグを建ててくれていた。予定調和、と言ったところだろう。
「ごめん！　遅くなったわ！」
　ようやく頂点部に追いついた雅羅率いる追跡班。
　その手にはばっちり指輪が握られていた。
「自分たちは足止めに入ります。クコ」
「あの騎士かい？　嫌な予感しかしないが、やってみますか」
　すぐに戦闘に参加する二人。
「加勢か？　一対一を楽しみたい、と言いたいがそれどろこではない。協力、感謝するぞ」
　騎士と最前線でぶつかり合っていた正子と連携して二人も騎士を攻撃。
　正面は正子、左からクコ、右から霜月。即席の連携とは思えない錬度。
　だが、騎士はそれを捌く、捌く、捌く。
　捌ききれないものは全て軽微な攻撃にとどまり、一瞬で回復する始末。
　が、騎士の動きが止まる。
「！　チャンスッ！」
「足さえ止まればっ！」
「……これはっ！　二人とも！　下がれいっ！」
　正子の声に反応するものの二人の踏み込みは深い。
　それを見た正子が更に一歩、騎士のまん前へ躍り出る。
　次の瞬間、騎士の眼光が鈍く光り、轟音を伴い剣を横に薙ぐ。このまま三人とも薙ぎ斬るつもりだ。
　その攻撃がクコに当たる寸前、正子が騎士の手元を思い切り打ち抜く。
　攻撃は上に逸れ真っ二つになることだけは避けられた。
「あ、ありがとう」
「ノーモションからあんな攻撃が……助かりました」
「どうということはない」

　騎士との戦闘だけでなく、対魔女戦でも激戦が繰り広げられていた。
「ちょっと恥ずかしいけど、そんなこと言ってられないわよね！」
　【レゾナントハイ】と『幸せの歌』、『熱狂』を併用して戦うルゥ。
　周りにいるモンスターたちは簡単に蹴散らせる。
　だが肝心の魔女に有効だが与えられない。イコン級の力を持ってしても、魔女が持つ防御壁を突破することができないのだ。
(こんなに強いなんて……でも、諦めない！　私はみんなを信じて戦う！)
　攻撃が通らなくとも、歌うこと、戦うことをやめず、懸命に立ち向かうルゥ。
「私の歌も聴いておくれやす〜」
　ルゥの後ろではシャンバラ聖歌隊で培った歌を拾うし、ルゥを後押しする知流が。
　更に二人に習うように他の契約者たちも懸命に攻撃を続ける。
「……そろそろ限界だ。準備はまだか、調査班！」
「お待たせ。任せて」
　調査班のリーダー、アゾートが一歩前に。ようやく準備が整ったのだ。
「聞いて。騎士、あなたの名前はティーヴラ。魔女、あなたの名前はヴァシィーカーラハ、ですね」
　二人の動きが止まる。名前は的中したようだ。
「このローブはヴァシィーカーラハ、剣はティーヴラにお返し致します」
　ローブは零が、剣は弾が二人に手渡す。攻撃がないことを見ると、やはりこれは二人の持ち物だったらしい。
「最後に、ティーヴラが日頃から使っていた言葉をヴァシィーカーラハに……
　『魔女も、騎士も、同じ人間だ』。これは、あなたへの言葉」
　魔女と騎士がお互いを見合う。あと一つ。あと一つあれば。
　だがしかし、調査班が見つけた二人の情報はもうない。
「……だめなの？」
「……いえ、まだあるわ。これが最後の、あなたたちの思い出よ！」
　雅羅が取り出したのは、指輪。
　二人にはめ込めばもう二度と石像からは回復できないと言われている、指輪。
「その指輪をはめてはいけません！」
「雅羅！　早まらないで！」
　ザカコとルカルカが叫ぶ。が、雅羅は止まらない。
「はめるのがだめなら……！」
　ジャンプした雅羅が二人に、指輪を。