リアクション
09 勇者の帰還 戦闘が膠着し始めた頃、ティル・ナ・ノーグから勇者たちが帰還を果たした。 「遅いぞガキども! 勇者のガキども!! これより敵陣に斬り込む! 戦線はこちらが維持してやる。出力不足な国軍機には分が悪い! よって頼む……! やつらを蹴散らせ!」 「教官……」 洋のその言葉に、フレイがある種の感動を覚える。 「まかせて! ベアトリーチェ、フルスロットルで! リリーちゃん、行くよ!!」 「うん! ミレリアさん、支援お願いします!」 「りょ〜かい! 派手にぶっ放すから、その間に突撃しなさ〜い? 香、勇平、あんたたちが切り込み役よ。美羽はその剣を最後まで温存すること! ジヴァ、あんたは予備兵力。最後の切り札よ。 いいわね!」 「分かったわ!」 「OK! 行くぞ、セイファー!」 「はい、マスター!」 そんな会話がかわされたあと、ミレリアが放つ超能力で軌跡をねじ曲げる艦載用大型荷電粒子砲によって前方の敵が一掃され、其処にローザと勇平が突入する。その後ろにリリーが守るようにしながら美羽が続き、ジヴァとフレイとミレリアは最後尾を守る。 そして、ローザと勇平がヘルガイアのゲートに辿り着こうとした時、そこに30メートル級の巨大なロボットが現れる。 アーマード レッド(あーまーど・れっど)が操るアームドベース・デウスマキナ改 前回、帝国の双璧といわれた龍魔騎将ネームレスを失うという大きな痛手を被ったヘルガイア側にて、ただ一人帰還した鋼魔機将アーマード。共に数多の銀河を滅ぼしてきた片割れを失った彼は初めて感じる怒りとともに、彼は勇者達の力を認める。 強き力には、より強き力を――自分は力こそが正義である魔神帝国におい双璧と謳われた将軍だ。 だが、それでも勇者達の力には及ばないのか? 答えは否。 勇者達はその一戦に己達の命をかけて死力を尽くしてきた。 我らはどうだろうか? 侵略後のことを考えて……そう、「戦後」を考えて戦っていたのではないだろうか? 永遠といえる勝利の中で、「勝って当然」とどこかで慢心があったのだ。 ならば此方も将軍としてではなく、一人の戦士として次の戦場へ赴こう。 たとえこの戦で、この魂、燃やし尽くしたとしても、初めて強敵と認めた相手に、勝利できるなら、悔いはない! そんな、永き思考の末に、出撃したアーマード。彼は武将らしく名乗りを上げる。 「鋼魔に伝わる、最後の力を見せてやろう。ヘルガイアの鋼魔機将としてではなく一人の武人として。……勇者達よ! いざ勝負!!」 それに対して、勇平がまっさきに反応する。 「面白い! みんな、まずは一対一で戦ってみたい。いいか?」 依存はない。 「感謝する、勇者よ……名はなんという?」 「勇平……猪川勇平だ。そしてこの機体はアルタグン。一緒に動かすのは、セイファー。大事な相棒だ!」 「マスター……!」 その勇平の言葉に、セイファーは静かに感動する。 「良かろう、では、勇平よ、勝負だ。無論、他のものもいつかかって来ても構わんぞ!」 「大口を!」 アーマードは質量保存則を無視して無制限に供給されるミサイルを連続でばら撒きつつ、焦点温度九千八百億度に至るともいわれるビームを発射する。 太陽の中心でさえせいぜい1500万度。いかな勇者とて一撃でも受ければ跡形もなく消滅するしかない。なにしろ、これほどの高音であればあらゆる存在がプラズマ化してしまうのだから。 勇平は古き結印の防御陣を展開しつつも必死でその攻撃を回避する。しかし、避けた所で表面装甲は簡単に溶けてしまう。 「なんだよそれ……反則すぎるぜ」 あまりのミサイルの多さに、思わずミレリアとジヴァもその超能力で操る技術を使ってそれらを撃墜するなど、どうしても手を出さざるを得なかった。また、リリーやローザ、フレイと美羽も古き結印の結界を展開して周辺への影響が出ないようにカバーリングをしていたが、それでも周辺数10キロの建物は、あまりの高熱に耐え切れず発火してしまうほどだった。 「これは早く決着を付けないとまずいな……」 【そうだね……世界を壊されたら元も子もないもん♪】 勇平のつぶやきに、そんな声が虚空から響く。 それと同時に、美羽のデュランダルが15キロメートルもの長さに伸びる。 「これは……!?」 「さあ、美羽ちゃん、やっちゃってよ」 それは、リリーの声だった。 そして、そのまま振り下ろされる戦艦サイズの巨大さの剣は、30メートル級の巨大なロボットを一刀両断のもとに斬り伏せる。 「世界が、我らを拒んだか……偉大なるエッツェル・アザトース(えっつぇる・あざとーす)よ、今、御下へまいります……」 アーマードは最後にそう呟くと、残りの力を振り絞って大気圏外まで上昇、大爆発を起こしてその存在をこの世界から消し去った。 「リリーちゃん、どういうことなの?」 リリーに意識が集まる。だが―― 「え? 今の、私の声??? え? どうなってるの?」 彼女も、自身の声に驚くばかりだった。 |
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