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【えぴろーぐ☆それぞれの朝へ】

 誰も居ない公園の隅で、ケンファは伸びをした。
 目を覚ました時には夢遊病のように抜け出していたハイコドの肉体に戻って来ていた。
 妙な夢は終わりだ。
 起き抜けの身体で、腹が鳴る。
「んー……ハンバーガー食いてぇ。
 犬に寄生してた時の生肉生活はもうやだねぇ、キシシシシ」

     * * * 

「何でお前らまでついて来るんだよ」
 広い廊下でぶつぶつ言いながら、アレクは自宅の鍵を開けている。
 彼の後ろには先程共闘していた仲間達の一部がくっついてきていた。
「ミスターに信用が無いからじゃないかしら」
「今のアレクさんは、危険過ぎます」
 墓守姫と加夜に投げられた不審の言葉は、正論過ぎてぐうの音も出ない。
「信用無いな。俺はさっき豊美ちゃんと『今晩は』寝ると約束したばかりだぞ?」
 照合が合う電子音が鳴って開いた扉から、アレクの腕に向かって一直線に真珠と乳白金の色が飛び込んで来た。
「お帰りなさい!!」
「ジゼル、寝ていろと言ったのに」
「お兄ちゃんを待ってたのよ。
 こんなにまっくらなのに出て行くなんて、とても心配したんだから」
 腕の中の妹をぎゅっと抱きしめ返して、何故か勝ち誇った笑みで振り返えってくる変な『お兄ちゃん』に、ベルクは遠い目をしている。
「なんかもう――どこからツッコミ入れたらいいんだろうな」
「もう諦めなって、な?」
 壮太の声を聞いて、ジゼルがひょっこりと顔を出した。
「あれ、皆こんな時間にどうしたの?」
「あんたの貞操を心配してきんだよ」等という理由は、答えられる訳が無いだろう。
 皆一様に押し黙っていると、ポチの助を抱いたフレンディスが頬を上気させながら前へ出た。
「マスターがアレックスさんから、『俺とジゼルの部屋を見せてやるから今からこいよ』とお誘いを受けた、と仰っておりました故、
 このような時間に大変図々しくも、私、どうしてもわくわくしてしまいまして――」
 こちらも何か騙されているらしい純粋娘フレンディスだが、今はナイスフォローになっていた。
「そっかぁ」
 相槌を聞いて、皆が顔を見合わせて取り敢えず乗り切ったと息を吐くと、妹は兄の手を取りながら笑顔を見せるのだ。

「あのね、お兄ちゃんがそろそろ帰って来ると思ってお茶の準備をしていたの。
 皆もこれから一緒にどう?」

     * * * 

「……あ〜あ、イベント終わっちゃってる……。
 ごめんね魔穂香、私のせいでトップ、取れなかったよね……」
 事件を無事解決し、急いで『INQB』の事務所に帰って来た美羽だったが、肝心のイベントは既に終了していた。失意の表情で『結果発表』と書かれたリンクをクリックすると、

『おめでとうございます! 見事、優勝を勝ち取りました!!』

「……えっ、嘘!?」
 飛び込んできたメッセージに、美羽は座っていた椅子を吹っ飛ばす勢いで身を起こし、結果を確認する。
「凄い……1個差で私と魔穂香のコンビが勝ってる……。もう、無理しちゃって、魔穂香ったら」
 呆れた声をあげつつも、美羽は嬉しくなる。自分が街の平和を守るために戦っていたのと同じように、魔穂香も戦っていたのだと分かったから。
「魔穂香! やったよ、優勝だよ! ……魔穂香?」
 ヘッドセットマイクを拾い上げ、魔穂香に呼びかけるも、返事はない。
「……すぅ……すぅ……」
 その代わりに聞こえてきたのは、安らかそうな魔穂香の寝息。
「……ふふっ。おやすみ、魔穂香。
 魔穂香の分まで、お仕事頑張ってくるからね」
 親友におやすみの挨拶を告げて、美羽は窓から差し込む光に目を細め、うぅん、と伸びをする。
 自分たちが守り抜いた平和な日常が、今日も始まろうとしていた――。


「うぅぅぅぅ、お腹いたいにゃ……」
「ほら、オルフェの言った通りなのですよ。あんなばっちぃもの食べたら、ぽんぽん痛いになるに決まってるのですっ」
 同じ頃、御影はお腹を押さえながら布団にうずくまり、オルフェリアが呆れた様子で看病をしていた。
「でも、御影ちゃんがちゃんと帰って来てくれて、良かったのですよ」
「ご主人……に、にゃーはちゃんと、朝ごはんの時間になったら帰ってくるって約束したからにゃ!」
 恥ずかしいのをごまかすようにふふーん! と起き上がろうとして、はぅあ! と身を捩らせた御影が再びうずくまる。
「御影ちゃん、大人しくしてるのですよっ」
「うぅぅ、そうするにゃ……」
 ……こんな事があったからか、それから暫くの間、御影はネズミを食べるのを控えるようになったとか。


     * * * 





「あれ? 終わった?」
 ルカルカは、降り注ぐ光の中で拍子抜けした表情を浮かべた。
 彼女自身は結局、戦いらしい戦いにはほとんど参加出来ず、とりあえずその辺にラインキルドが居たら何か変なことになった、ということの繰り返しであった。
 一方、リカインはようやく量産型アッシュの呪縛から逃れ、ひと息ついた様子で背伸びしている。
「やっぱ、アレだね。ラインキルドさんに関わると、ろくなことが無いね」
「それは大いに同意する」
 リカンの苦笑に、コア・ハーティオンが大真面目に頷いた。
 一方、理沙は頭を抱えている吹雪に、どうしたのかと尋ねかけた。
 すると――。
「ラインキルド殿に、非リア充エターナル解放同盟の活動予定を聞きそびれたであります!」
「……そ、それは残念ね。まぁでも、いっつもその辺に居そうなひとだから、チャンスはまたあるんじゃないかしら?」
 理沙は引きつった笑みで、地団駄を踏む吹雪の肩を、ぽんぽん叩いた。


 この直後、五人は再び、自分が何をやっていたのか、記憶が曖昧になってしまっていたことに気づく。
 さもありなん。
 ラインキルドが、すぐ近くの自販機で季節外れのコーンポタージュを購入していたのだ。




 行殺、完了。

担当マスターより

▼担当マスター

菊池五郎

▼マスターコメント

ザ=コ担当 高久 高久マスター
御参加頂きありがとうございました。
 とりあえず言っておきたい事を。ザ=コは私がモデルではありません。
 普段とはちょっと変わったような内容で楽しませてもらいました。またの機会がありましたらよろしくお願いいたします。


飛鳥 豊美担当 猫宮 烈マスター
猫宮です。参加して頂きどうもありがとうございました。
どこぞのグループの熱血ソングが流れてきそうなシナリオ、いかがでしたでしょうか。

個人的にはこういった、普段あまり接点のないNPCがバッタリ出会って……なシナリオあるといいなぁ、なんて思ってます。
なかなか運営するのは大変なのですが(今回で既によ〜く痛感しました(汗)、折を見て企画したり、参加したり出来たらいいなぁ、と思います。

それではまたの機会に、よろしくお願いいたします(ぺこり

……あ、今回は豊美ちゃんのぱんつは無事でしたね。


ラインキルド・フォン・リニエトゥトェンシィ担当 革酎マスター
担当マスターの革酎自身も行殺されました。
彼のコメントは、この哀愁漂う真っ白な行間から拾い上げてください。




アレクサンダル四世・ミロシェヴィッチ担当 東 安曇マスター
どばるだーん皆さん、東です。
ごめんなさい熱血ソングが流れてきそうなのは、東のシナリオの仕様です、ね……(目を反らし反省)。
さて、如何でしたでしょうか。私はとても楽しく執筆させて頂きましたが、猫宮マスターの仰る通り大変でもありました。
メンドクサイ設定だらけのアレクをご存じない方にも、リアクションをスムーズに読んで頂けるように描写した結果がこれだよ!
プロローグやらラスボス戦なぞはもう何処までが自分の拙い文章で、何処までが他マスターさんの文章なのか分からないくらい入り乱れております。マスターNPC大戦というよりマスター大戦状態。
どうでしょうこれ、次回があるのか!? お兄ちゃんは「また会おう」と別れた豊美ちゃんに会えるのか! ザ=コ達を再び踏みつけられるのか! ラインキルド氏に会ったら行殺されてしまいます! ていうか東のじゃないNPCさん達が絡む所をみたいですねとさり気なく仕事放棄しているのは徹夜のテンションですおかしくてすみません。

それでは次回、乞うご期待!!(まったくもって予定はありません)
またお会い出来ると幸いです。