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争乱の葦原島(前編)

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争乱の葦原島(前編)

リアクション

   終章

 一雫 悲哀、カン陀多 酸塊、アイラン・レイセンの三人は、妖怪の山の頂上にようやく辿り着いた。
 だだっ広いだけの場所に、細長い岩が一つある、殺伐とした光景だ。緑豊かな下方と、同じ山とは思えない。
「時間かかっちゃったねー」
 アイランはへたり込んだ。持ってきた非常食は既に空だ。疲労と空腹の余り、目が回りそうである。
 悲哀は真っ直ぐ、細長い岩の前に立った。話によれば、これがオルカムイの意思を宿しているという。意を決して、彼女は呼びかけた。
「オルカムイさん――」
 すうっと人の姿が現れた。白髪と長い髭、皺の深く刻まれた顔――。
「悲哀! これ何!?」
 酸塊は怯え、悲哀の背中にしがみついている。逆に悲哀は、彼が現れたことにホッとし、閊えながらも葦原島で起きている暴動について話した。
「――知りたいのです、オルカムイさん。この山で起きていること、夜加洲や城下町で起きていること。どちらにも共通点があります。何か原因があるのではありませんか? あなたは何かご存知ではありませんか?」
「……山に棲むモノらの異変には、わしも気づいておった」
「だったら、この前教えてくれればよかったのに」
 アイランが口を尖らせると、オルカムイはふっと微笑んだようだった。
「あの時点では、外界がどうなっているかを知らなかったのでな……。山だけのことと、思うておったのだ」
「放っておいたんですか?」
と、悲哀。
「この山の食物が豊富なのは、妖たちを外へ出さぬためであるが、それ故に進化もせぬ。たまには自然の流れに任せるのもよかろうと思ってな……」
 この山で生まれつつ、外へ流れたもの。ぬりかべ お父さんなどは、その最たる例だろう。彼は下界に興味を持ち、アキラ・セイルーンと契約した。ゆっくりとだが、確かに山の生き物も進化しているのだ。オルカムイはその事態を歓迎していた。
 しかし悲哀は、オルカムイの言葉に引っ掛かった。何がどうおかしいのか、その時の彼女には分からなかったが。
「山の奥深く……最も深い箇所に、『何か』があるようだ」
「それは!?」
 悲哀たちは、「フィンブルヴェト」のことをまだ知らない。
「……分からぬ。だが、それが深く根を張り、長く根を伸ばし、この葦原島全体を覆っているようだ……」
「葦原島……ミシャグジを?」
「左様……。それが何であるかは分からぬ。どのような力を持つかも分からぬ。一部は既に立ち枯れているようでもある……。だが、おそらくは、そのせいで人々は心が荒んでいるのだろう。妖たちと同じように……」
「どうにか出来ませんか!?」
「山を掘り返して探すしかあるまい。……が、藁の中で針を探すような話だ。それとも、徹底的に山を破壊するか。……妖たちを野に放つことになる。逆に山と外界を遮断するか。……完全に人の出入りは出来なくなろうな」
「どうしようも出来ないってこと?」
と、これはアイランだ。「神さまも大したことないんだね」
「万能ではないのだ、娘よ。情報がない。肉体を持たず、移動に制限のあるわしに出来ることは限られておる……。せめて、正体が分かればよいが……」
 だが、とオルカムイは続けた。
「時はあまりあるまい……。葦原島全体に影響が出ているということは、何かしらの目的が近いということでもある……。おそらくは――」
 そこから先は、オルカムイでなくとも分かった。漁火が関わっている以上、一つしかない。悲哀は乾いた声で呟いた。
「ミシャグジの復活――」
 その時は、すぐそこまで来ていた――。

担当マスターより

▼担当マスター

泉 楽

▼マスターコメント

お待たせしました。書いている途中に方角が分からなくなって混乱してしまった方向音痴な泉です。「争乱の葦原島(前編)」リアクションをお届けします。


ええと、以下ネタバレを含みますので、可能な限り本文をご覧になってからお読みください。
そんなわけで今回のメインは二つ。
1.城下町での暴徒及び反乱鎮圧
2.夜加洲地方での暴徒鎮圧及び漁火とオーソンの動向
です。
バランスよく人員配置できたんじゃないかと思います。
分かったことをいくつかまとめておきます。

まず、
・今回の暴動の原因は、オーソンがその昔作った「フィンブルヴェト」(舌噛みそうなので、漁火は「大いなる冬」と呼んでいます)の副作用です。
・これは現在、「妖怪の山」の地下深くにあるようです。
・漁火はこれを使って、ミシャグジの復活を目論んでいます。
・一方オーソンは、そのエネルギーを吸い取っています。
・フィンブルヴェトがあるため、反乱は鎮圧できましたが、暴動は収まったわけではありません。後編でも続いていると思われます。
・漁火に発信器がつけられました。今までよりは、居場所を掴みやすくなると思います。詳しくは後編のガイドで書きます。

また、今回捕縛された人間は以下の通りです。
▽九十九 雷火(NPC)
▽機晶戦闘機 アイトーンとヘスティア・ウルカヌス(城下町にいます)
▽東 朱鷺子と第六式・シュネーシュツルム(城下町にいます。東 朱鷺さんが漁火についていることは、現時点ではまだ分かっていません)
▽両ノ面 悪路(夜加洲にいます。他人に化けているため、正体は知られていません)
次回は、上記の情報を元にアクションをかけてください。


次回はなるべく早めにと思っていますが、八月中旬になるかもしれません。時系列としては、前編の直後となります。
それでは後編でお会いしましょう。