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リアクション
序章
「始まりましたパラミタオープン」
他のスポーツ実況とは違い、卜部 泪(うらべ・るい)は落ち着いたトーンで語りだす。
ゴルフは集中力が重要な競技。喋り声などで選手の集中力を乱すわけにはいかない。ショットの際には観衆にも静寂の指示が出るほどだ。
泪は立場上喋らないわけにはいかず、それでも彼らが最高のパフォーマンスを発揮できるよう仕事をしているのだ。
「実況は私、卜部泪。解説にはジャンボ石山さんをお招きしております」
「どうも」
実況席にて一礼をすると、大会の説明へと移る。
「このパラミタオープンは、従来のゴルフルールに新ルールが加わっております。ボールの代わりに人を投げる、云わば人間ゴルフです。ジャンボさんはこのパラミタオープンの前大会が引退試合となり、今までに数々の記録を打ち立ててきたわけですが、この大会のルール変更についてどうお考えでしょうか?」
「ああ、それね」
気さくに返すジャンボ。
「僕が提案したんだ」
「え?」
「ここ最近、目立った新人が出てこなくて。僕が引退すると更に人が減るんじゃないかって主催者側が言うもんだから、工夫を凝らしてみたんだ。注目されれば参加人数も増えるし、競技も活発化すると思ってね」
「それがルール改変とは思い切った提案ですね」
「というのは建前で、昔、何かのビックリ新記録でハンマー投げゴルフってのがあって。同じようなのやってみたかったんだ」
「……元凶はジャンボさんだったんですね」
その奇策はいらなかった。
あっけらかんと笑うジャンボを他所に、泪は仕事を全うする。
「始まってしまいましたパラミタオープン。誰が優勝するのか。全員無事に終われるよう、頑張ってください」
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