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赤と青の鼓動、起動するは人型古代兵器

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赤と青の鼓動、起動するは人型古代兵器

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荒野の激戦


〜遺跡外部〜

 シャンバラ荒野の一角、草も木もないその場所にぽつんと小さな遺跡の入り口がある。
 その入口は荒野にまるで口を空けたかのように存在している。
 その周囲は大量の人型古代兵器……クリミナによって埋め尽くされ、空を視認する事すら難しい。
 明らかな異常事態。常人であれば避けて通るようなそんな場所。
 そこでは人知れず、激しい戦闘が行われていた。
 戦艦による援護砲撃に合わせ、クリミナ達へ接近していくウィンダム
 砲撃はウィンダムの右後方から放たれ、前方の遺跡を防衛するように動くクリミナ達の布陣に大穴を空ける。
 至近距離すれすれの位置に放たれたからか砲撃の余波で期待が大きく揺れた。
「くっ……揺れは最小限にボクが抑えるよ! キミは敵への攻撃に専念して」
 高崎 朋美(たかさき・ともみ)が震える操縦桿を必死に操作しながらウルスラーディ・シマック(うるすらーでぃ・しまっく)へと叫ぶ。
 彼はそれに首の動きだけで返答を返し、スコープを除いて照準を合わせる。
(揺れは確かに大きいが、気にするほどではない。敵は無人機との事。ならば狙うは胸部ではなく――)
 ウィンダムが構えるウィッチクラフトライフルが一機のクリミナを狙って放たれる。発射と共に空薬莢が排出され右へと飛ぶ。
 まっずぐに跳んだ弾丸はクリミナに命中、胸部に穴を開けた。中の部品を撒き散らせながらクリミナが落下、地面にぶつかって爆発する。
「動きはそれほどでもないか……よし次だ」
 二人は息の合った動きで次々とクリミナを撃ち落していく。
 射撃に邪魔になる揺れや敵からの攻撃による着弾点の誤差、それが少なくなるように動く朋美。そして絶妙のタイミングを口で言う前に感じ取って攻撃に移るウルスラーディ。
 二人の間にすでに言葉は必要ないようだった。
 いくつか撃ち落した後、若干の異変を感じるウルスラーディ。撃破はしているものの、微妙に着弾点がずれてきている。動いているからだと言えばその通りなのだが、どうもおかしく感じる。
 朋美もそれを感じていたようで、ウルスラーディに問いかけた。
「なんだか……敵の動きが変わった気がしない?」
「そうだな、着弾点もずれてきているし、一機目と先程撃ち落した機体とでは掛かった時間も大きく違う」
 話しながらもウィンダムのウィッチクラフトライフルは次の標的を探し補足して射撃。
 しかしクリミナは横にスライド移動するように動き、こちらの攻撃を軽く躱してしまう。
 朋美はその動きを頭に想像した仮説があった。それが口から自然に零れる。
「まさか……あの機体、こちらの動きを学習している?」

〜遺跡入口〜

 遺跡の前方から戦艦とイコン達による攻撃が始まった頃、遺跡への突入班最後尾に位置していた覇王・マクベス改修型は入口に背を向け、空を埋めるクリミナの大群を睨む。
「突入班全機、遺跡への侵入を確認しました」
 サブパイロット乃木坂 みと(のぎさか・みと)の報告を聞いた相沢 洋(あいざわ・ひろし)は戦闘の開始を告げる。
「よし、これよりマクベス改修型の性能評価試験を開始する。荷電粒子砲、エネルギー充填開始せよ」
「了解、荷電粒子砲のエネルギーチャージ開始します。臨界までおよそ5分です」
 覇王・マクベス改修型は腰にマウントしていたウィッチクラフトライフルを構えると狙撃の体勢に入る。
 片膝をついた状態になり、脚部から地面にアンカーが数本射出され機体を地面に固定。
 左肩部に装備されていた艦載用大型荷電粒子砲が半回転し、砲身が前面へと延びる。その下部から大型のアンカーが射出され地面に深々と刺さった。
「機体固定完了。新設した荷電粒子砲、セッティングは万全ですね。今の所、問題なくチャージ進行中」
 みとの報告に頷くと洋は照準を手近なクリミナに合わせる。
「接近する敵機の迎撃を開始、照準データが送られてき次第報告せよ」
「了解しました」

 敵機の真っただ中、クリミナに追われる小型飛空艇が一機。相沢 洋孝(あいざわ・ひろたか)の駆る小型飛空艇アルバトロスであった。
 レーザーによる砲撃を擦れ擦れで躱しつつ彼はモニターと睨めっこする。
「こちら洋孝! 照準データは順調に集まってる。もう少しで効果的な弾道データが出せると思うよ。あ、それとその荷電粒子砲は艦載用の奴だから、無理しすぎるとジェネレーターが暴発するかもしれないから注意してよね!」
 洋達へ通信で注意を促しながら照準データの収集状況を見る。あと少しで発射に必要なデータが集まりそうだ。
「これで……うあっ!?」
 モニターに集中しすぎたからか一機のクリミナの接近を許してしまう。クリミナは腕を振り上げこちらを叩き潰そうとしていた。回避は間に合いそうにない。
 拳が今まさに振り下ろされようとした瞬間、左側からミサイルがクリミナを襲った。
 次々に着弾するミサイルに体勢を崩し、よろめいてクリミナは高度を下げる。が、その装甲には傷一つついていない。
 小型飛空艇ヴォルケーノに乗るエリス・フレイムハート(えりす・ふれいむはーと)はその状況を洋へと通信で伝えた。
「ミサイルの着弾を確認、有効的なダメージは認められず。イコン級の装甲を持っているものと判断、以上」
 ヴォルケーノのミサイルによる攻撃は有効打とはならない。が、洋孝を援護することはできる。そう考えたエリスは敵の撃破ではなく、近づかせないことを前提に置いて行動した。

「照準データ、来ました! エネルギーのチャージも完了」
 報告を受け、洋はみとに指示する。
「荷電粒子砲砲身展開、発射準備!」
「了解、荷電粒子砲砲身展開、粒子加速器最大出力で稼働中、臨界点突破」
「電子照準器オープン、斉射!」

 収束された荷電粒子がビームとなって放射される。発射の衝撃がアンカーで身体を支える覇王・マクベス改修型を大きく揺らした。
 空を割るように放たれたそのビームはクリミナの一群を跡形もなく吹き飛ばした。
 更に連続で発射される荷電粒子砲の砲撃で多くのクリミナが塵となって消える。
「効力射確認!ジェネレーターが焼きつくまで連射! これより、当機は遺跡への敵対勢力侵入を妨害する!」

〜遺跡外部〜

「おーおー、やっとるやっとる。こりゃだいぶスコア持ってかれたんとちゃうか?」
「すこあ、か。ふむ、このような無駄話をしておる間に更に差が開くのではないのか?」
「あー確かにそれもあるなぁ……いいとこつくわー」
 そんなやり取りをしながら大久保 泰輔(おおくぼ・たいすけ)讃岐院 顕仁(さぬきいん・あきひと)を乗せたバンデリジェーロはクリミナの大群の中へと突っ込んでいく。
 顕仁が泰輔にモニターをみながら告げる。
「送られてきたデータによれば荷電粒子砲なるものの発射によって敵勢力の大半は消滅したようだ」
「なにっ!? じゃぁもう稼がれへんやん! 完全に無駄骨――」
 突如、右後方から放たれたクリミナのレーザーを躱しながらソウルブレイドをバンテリジェーロは振り抜いた。豆腐を切るようにあっさりとクリミナは両断され、空中で爆散する。
「話し中に何してくれてんねんっ! めっちゃ焦ったやないか!」
 肩で息しながら泰輔は前面モニター越しに吼える。もちろん先程のクリミナは爆散しているので聞こえているはずもないが。いや、そもそも無人機である以上文句を言う意味すらないのだが、彼にそんなことは関係ないらしい。
「どうやら、敵の増援が次々と現れているようだな。ふむ……転移での出現とは興味深い」
 そう話している間にも彼らの周りに次々とクリミナが転移してくる。
 バンテリジェーロは左腕を向けると超電磁ネットを漁師が投網を投げる様に発射する。
 超電磁ネットに絡まったクリミナ達を高圧の電流が襲う。青白い閃光が何度も発生し、クリミナ達の動きを一時的に止める。
 ブースターで加速し、超電磁ネットを引き戻しながらソウルブレイドでクリミナ達を一閃するバンテリジェーロ。
「よしよし、なかなかに纏めて倒せたな。この調子で堅実にいこか!」
 泰輔の言葉に頷き顕仁は出力調整などを行いながら、モニターに表示される情報を伝えていく。
「敵の転移なおも確認、二時の方向に後退しつつ先程の手でいってはどうだ?」
「その手に乗ったで! バンテリジェーロ、もうひと頑張りや!」
 その時、クリミナのレーザーがバンテリジェーロの右肩部を掠める。
 悲しい知らせが泰輔に顕仁から届けられた。
「ふむ、直撃とは至らなかったが……多少の装甲と塗装が剥がれたようだな」
「うあぁぁぁー! 傷つけちゃ嫌やぁーーっ!」