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リアクション
廊下。
「……!!」
突然、背後に悪寒を感じる双子。
そろりと振り返ると
「二人共、元気でありますか!」
にこやかな笑みを浮かべる吹雪が立っていた。
「何でここにいるんだ?」
「まさか、オレ達を尾行しやがったのか!?」
吹雪から半歩後退する双子。
「違うでありますよ。たまたまここに来てたまたま見かけたのであります」
「……たまたま」
真実を述べる吹雪をじと目で疑わしそうに見る双子。
「二人は鍋を食べたでありますか?」
双子の怯えの目などいつもの事なので気にしない吹雪。
「いや、これから食べようかと」
「丁度、お腹空いたし」
散々動き回ってすっかり双子は空腹なのだ。
「それは丁度いいでありますよ。自分もまだでありますから一緒に食べるであります!」
吹雪は鍋に誘う。二人と鍋を楽しむ以外に悪さをしないようにマークする目的がある。
双子が答える前に
「あ、二人も来てたんだね!」
湯上がり美人の美羽が入って来た。
「よかったら一緒に鍋食べよう!」
美羽は再会を喜んだ後、双子を鍋に誘った。
「丁度、自分も誘っていた所でありますよ!」
吹雪がすかさず自分も誘っていた事を挟む。
「それなら一緒に食べよう。鍋を囲む人数は多い方が楽しいから」
美羽はにこにこと吹雪が加わる事を快諾した。
そこへ
「ふむ、聞き知った声がしたと思うたらそなたらも来ておったか」
ホリイと一緒に土産物を物色していた草薙が登場。
「何で次から次に湧いて出て来るんだ」
「全くだ」
双子はリラックスしたはずがすっかり疲れた顔をする。
「素敵なお土産を見つけましたよ」
発見した可愛らしいキーホルダーを草薙に見せようとホリイがやって来た。
「うわぁ、可愛い。どこにあったの?」
可愛い物が好きな美羽が瞬時に食いついた。
「それは……」
ホリイは楽しそうに場所を教え、和気あいあいと美羽と土産物の物色を始めた。
「わらわ達も鍋を食べる予定じゃ。一緒によいかのう」
と草薙。
「自分はいいでありますよ!」
「私もいいよ。楽しくなるね」
吹雪と美羽は即快諾。
「……まぁ、いっか」
「というか、不参加出来ないよな」
双子は溜息をつきながら参加する事に。ついでに不参加に出来ない事も悟っていたり。
人数が増えた事により、鍋は宴会場で楽しむ事となった。
美羽とホリイは土産を買った後、一緒に会場に行った。
妖怪達も加わった賑やかな鍋宴会となった。
宴会場。
「お連れ様が到着しましたよ」
美羽の親友にそっくりな着物を着込んだ仲居の女の子が現れた。
そして、
「待たせてすまぬ」
「……山姫の静奈です……よろしく……お願いします」
九尾の長と山姫の静奈が後ろから現れた。
「いや、丁度、皆集まった所だ。どこでも好きな席に座ってくれ」
甚五郎が片手を上げて応え、快く妖怪の客を迎えた。
「では……」
九尾の長は甚五郎の近くに座るも静奈は困ったように目を泳がせるばかり。九尾の長以外知らない顔ばかりで戸惑っているのだ。
「良かったらワタシのお隣どうぞ」
見かねたホリイが優しい笑顔を浮かべながら隣の席を示した。
「……ありがとうございます」
静奈は礼を言ってからそろりとホリイの隣に座った。
「……」
美羽は鍋を準備する仲居をずっと目で追っている。
「あの座敷童、知り合いか?」
キスミがこそっと訊ねた。
「ううん、髪の色とか違うけど瀬蓮ちゃんにそっくりだったから」
美羽は素直に答えた。その間も仲居を見ている。
「あの、私の顔に何かついていますか?」
美羽の視線に気付いた仲居が恐る恐る訊ねた。
「あ、ごめんね。そうじゃないの。私の親友に凄く似ていたから、つい」
美羽は慌てて謝り、理由を話した。
「そんなに似ていますか?」
「それはもう。違いはその黒髪くらいだけ。どうしてここで働いているの?」
驚いた顔で聞き返す黒髪の仲居に美羽は力強くうなずいた。
「今日、開店すると聞いてお手伝いに来たんです。とても忙しくなると思いまして。それに人間も訪れると聞いて仲良くしたくて」
仲居は準備をしながら答えた。美羽に笑いかけながら。
「そうなんだ。人間として何か嬉しいよ。ありがとう」
美羽はとても嬉しくなって思わず礼を口にした。
「いえ、そんな……お礼なんて」
仲居は美羽に礼を言われ、困ったように顔を赤くした。
「ねぇ、この鍋の材料とか効果の事、教えてくれる? あと、名前も」
もっと仲居と仲良くなりたくて美羽はさらに話しかけた。
「私の名前は、睡蓮と言います」
「へぇ、名前も少し似てるよ。瀬蓮って言うんだよ」
まずは、と名乗った仲居の名前に美羽はまたまたびっくり。瀬蓮と睡蓮、音の響きが似ていたから。
「本当ですね。少し似てます」
思わず睡蓮も驚いた。
そこに
「材料の解説とかなら俺も聞きたい」
「何か使えそうだし」
鍋の中身の解説と聞きつけた双子が会話に加わった。
「ほぅ、使うとはまた悪さするためかのう」
双子付近に座る草薙がすかさず、双子に言葉を刺す。
「いや、覚えてみんなに御馳走を披露しようかなと。な、キスミ」
「おう」
図星だったのか少し慌て気味に繕うのった。
「図星でありますな!」
吹雪がズバリととどめを刺す。
「……」
言葉無く沈黙する双子。
「二人共、本当にめげないね」
美羽は軽く笑った。
ともかく美羽と双子は睡蓮から鍋の材料や効能を聞いた。
「宴は無礼講で飲むに限るよなぁ! ガンガン飲んでガンガン喰うぜ!」
オリバーは鍋をつつき、酒を流し込むという一連の行動を休む事無く続けていた。
「すげぇな」
「オレ達も早く食べないとなくなるぞ」
双子はオリバーの食べっぷりに眉をひそめ、急いで食べる具材を椀に引っ越しさせていた。
「どれもこれも妖怪が用意した物っていうのがいいよな。んーうめぇ」
「なかなかでありますな」
オリバーと吹雪は存分に食べたり飲んだり楽しんでいた。
「……この酒も美味しいな」
甚五郎はネネコ河童の酒を楽しんだ。
「これは女々が作りし酒なので安全じゃ」
九尾の長は花見の事を思い出しながら言った。
「だな。それで最近はどうなんだ?」
甚五郎はとりあえずとばかりに近況を訊ねた。
「平和な時もあれば大変な時もあるという感じだ。そちらも随分大変そうだな」
九尾の長は自分達のことよりも甚五郎達の事の方が気になるようであった。
「あぁ、知っていたのか」
まさかここで自分達が関わっている事が話題になるとは思わなかった。
「……少しは」
九尾はそう一言洩らすだけで何も言わなかった。
「まぁ、今日は忘れて食べて飲んで楽しむか」
甚五郎は九尾の長の酒器に酒を注ぎ、今の話題を終わらせた。賑やかな場には相応しくない上にここで話したからといって状況が変わる訳ではないので。
「それが一番だな。招かれた席で暗い話など縁起が悪いからな」
九尾の長も追求はせず、注がれた酒を飲み干した。
「……美味しいですね。鍋が終わったらデザートも食べましょう」
ホリイはちらりとデザートの和菓子を見ながら隣の静奈に話しかけた。
「……ごめんなさい……その、こんなんで……知らない人がたくさんいると……私……」
気遣って自分に話しかけてくれるホリイに恐縮する静奈。
「謝らなくていいですよ。一緒にお鍋を食べる事が出来てワタシ、とても嬉しいですから」
ホリイは気にしていないと笑顔で示した。
「……ありがとうございます」
静奈は小さく礼を言い、鍋を食べた。
「もっと、食べて体内を綺麗にしましょう!」
ホリイは声高に言うなり、椀にたっぷりと具材を盛って食べ始めた。
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