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調薬探求会と魔法中毒者の取引後

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調薬探求会と魔法中毒者の取引後

リアクション


調薬探求会と接触


「羽純くん、私達はこの街にいる探求会の誰かを捜して情報を一つでもゲットするよ!」「あぁ、何も分からないまま騒ぎに巻き込まれてはかなわないからな。少しでも対策が立てられるように。何より向こうは先手を打って有利な状況だ。少しでも情報を譲って貰わないとな」
 遠野 歌菜(とおの・かな)月崎 羽純(つきざき・はすみ)はこの街にいる調薬探求会から情報を入手するために動くらしい。
「その通りだよ。だから、家宅捜査に行ったみんなに負けないように私達も頑張るよ!」
 歌菜は家宅捜査に参加しているみんなの頑張りに負けないと握り拳を作り、りりしい表情。
「早速、捜しに行くか」
 羽純のこの言葉を合図に調薬探求会の捜索が始まった。
 しばらくして自分達と同じ目的の者達を発見する事に。

「特別なレシピ関連と魔法中毒者について現状を正確に把握しておきたいですね。それにはまず情報ですが……確か調薬探求会もいるかもしれないとか、まずはそこからですね」
 御神楽 陽太(みかぐら・ようた)の子孫の御神楽 舞花(みかぐら・まいか)は特別なレシピに関する情報得るためまずは調薬探求会の方から探りをいれる事に決めた。
「出来れば顔見知りになったオリヴィエさんが見つかれば話が早いですが」
 舞花は以前の情報収集で顔を見知りとなったオリヴィエを捜しに行った。

 捜索開始後、しばらく。
「あれはオリヴィエさん」
 『捜索』を有する舞花はケーキヴァイキングで有名な屋外カフェから出て来るオリヴィエを発見し、声をかけに行った。

「ヴァイシャリーでドカンとやられる前に探求会の誰かを捜すか。ここなら顔も利くしすぐだな」
 ヨシノの話を聞いたシリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)は溜息を吐きつつもやる事はする。
「見付けたら交渉、ボクの出番だね。だけど、メインがいないのが心配だよ」
 サビク・オルタナティヴ(さびく・おるたなてぃぶ)は探求会捜しにヨシノを誘った時の事を思い出していた。
「あぁ、家宅捜査を終え次第、こっちに来るって言っていたから問題無いだろ。まずは人捜しだ」
 シリウスは肩をすくめた。実はヨシノとウララは家宅捜査で必要とされ情報収集の方へは後ほど向かうという事になったのだ。
 とにかく『名声』を有するシリウスは顔が利く事を利用して行き交う人や店の人に調薬探求会を訊ねて歩いた。
 途中、
「私達もお手伝いしますよ」
「俺達の目的も同じだからな」
 シリウス達と目的を同じくする歌菜と羽純が加わった。

 そして人捜し開始後、しばらく。
「ここか」
「ケーキヴァイキングで有名な屋外カフェだっけ」
 シリウスとサビクは通行人に探求会の一人らしい人物を見掛けた事を聞いてとある店の前に辿り着いた。
「ここにいるのか」
「上手く情報収集が出来るといいね」
 羽純と歌菜。
 四人は店内に入り、ケーキヴァイキングを楽しむオリヴィエに会う事に成功し、
「特別なレシピで話したい事があるんだ」
「少しでもいいから特別なレシピについて教えて欲しいんです。情報を下さったらとっておきのケーキのレシピをお教えします! お願いします」
 サビクと歌菜がたたみかけるように用件を切り出した。
「……ケーキのレシピは気になるけれど」
 オリヴィエは少し渋い顔。
「もちろん、タダとは言わねぇぜ。通に有名と言われる隠れ甘味処あたりはどうだ? もちろん料金はこっち持ちだ(……ツケ効くかな)」
「実はその店には知る者ぞ知る個数限定の隠れケーキがある」
 顔が利くシリウスと甘党故に知識有りの羽純が飴と鞭の飴の如く言葉通り甘い誘いを掛ける。
「それは食べてみたいわねぇ。御馳走ついでにお話をしましょうか」
 オリヴィエは思いの外あっさりと誘いを受けた。
「後、私達友愛会のお手伝いをしていて……」
 歌菜は正直に自分達の目的と自己紹介をした。
「えぇ、分かってるわ。私達に声を掛けるのは大抵ヨシノちゃんと関係がある事だもの」
 オリヴィエは嫌な顔一つせず周知済みと言わんばかりの柔和な笑顔。
「そのヨシノだが、魔法中毒者の家宅捜査を終えたら合流する事になっているんだが、いいか?」
 シリウスがいいタイミングとばかりに後の予定について明らかにした。
「あら、そこまで分かってるのねぇ。ヨシノちゃん元気にしてるかしら」
 オリヴィエはこれまたのんびりと嫌な顔はしない。むしろ会いたそうな節が見える。対立はしているが個人レベルでは様々という事らしい。
 その時、
「お話中の所、申し訳ありませんが、私もご一緒していいでしょうか」
 オリヴィエを捜していた舞花が登場。
「あら、あなたは……お久しぶりねぇ」
 顔見知りの舞花にほんわりと笑顔を向けるオリヴィエ。
「はい。お久しぶりです、オリヴィエさん。お願いしたい事があるのですが、よろしいでしょうか。もしこの街にいらっしゃるのならシンリさんにもお聞きしたい事があるのですが」
 『貴賓への対応』を有する舞花は丁寧に挨拶をしてからお願いを口にした。
「シンリちゃんならいるわよ。ヨシノちゃん達の動向を見るとかで連絡してみるわねぇ」
 オリヴィエはすぐさまシンリと連絡を取るが、思いの外すぐに終わった。
 そして、
「ごめんなさいねぇ。シンリちゃん、今大事な交渉をしているみたいで。合流は後になりそう。行く場所はきっちり伝えておいたから」
 申し訳なさそうな顔でオリヴィエはやり取りの内容を報告した。
「そうか。まぁ、人も揃った所で行くか! ここでいつまでも立ち話をしている訳にはいかねぇし」
 ひとまずシリウスの仕切りにて場所を隠れ甘味処に移す事にした。

「ヴァイシャリーでは前にも特別なレシピについて探求会に遭遇した場所だが、中毒者がいると考えると合点がいく」
 グラキエス・エンドロア(ぐらきえす・えんどろあ)はフレンディス達から情報を得て探求会が動き出した事を知った。
「その上、今回は特別なレシピの事で探求会の連中が集まっているという。そうなるとシンリもいるに違いない」
 ウルディカ・ウォークライ(うるでぃか・うぉーくらい)は会長であるシンリが参加しているだろうと予測する。シンリ参加を気にするのは自分達が抱える事情によるものもあったり。
 それは
「……例の魔法薬の事が気になりますね」
 ロア・キープセイク(ろあ・きーぷせいく)が言葉にした。例の魔法薬こと魔力を消す魔法薬の事である。魔力に蝕まれ続けているグラキエスを救う薬となればとロアとウルディカが願う魔法薬。
「平行世界の騒ぎの際、素材を回収すると言っていた。それも彼らなら成功させているはずだ」
 グラキエスは妖怪の宿での取引の際に聞いた話を思い出した。
「しかし、中毒者に接近とは特別なレシピが実験段階にあるのかもしれませんね」
 ロアは探求会の動きから特別なレシピの展開が進んでいる事を読んだ。
「……実験段階か。どんなレシピか興味あるな」
「確かに気にはなりますね。三勢力が求めるレシピとなれば、どこにでも転がっている物ではないでしょうから。この場で作るという事は無いでしょうが」
 グラキエスとロアは特別なレシピに興味津々。多くの者は危険なレシピだとしているが、善悪での判断基準の無いグラキエスにとっては最高の好奇心の対象である。
「……」
 グラキエスはしばらく何事かを考える。
 それを見た二人はグラキエスが何を求めているのかを読み取るなり
「他の者に接触する前にシンリを捜し出すぞ(エンドロアには魔力を消す薬だけでなく真っ当ではない薬も必要な時もある。ここで関係を作って入手に役立たせるべきだな)」
「捜し出した後に立ち会えるよう交渉してみましょう(魔力を消す薬を確実に作れるシンリに何かあっては困りますし)」
 魔力を消す魔法薬第一、つまりグラキエスの事を一番気に掛けるウルディカとロアはグラキエスのためにと行動を起こす事にした。
 それに対してグラキエスは
「あぁ(探求会側での行動になるが、俺の為に動いている二人の為にも)」
 ためらう事無く協力をする。自分のために力を貸してくれる二人に自分が協力をするのは当然の事だから。
 早速、『捜索』と『追跡』を有するウルディカを中心に捜索を開始する。道々得た行方の情報を基に『行動予測』を有するグラキエスがシンリの動きを読み、道を示す。
 その甲斐あって調薬友愛会の依頼で動く者と遭遇する前のシンリを発見する事に成功した。

 発見後。
「あぁ、君達か」
 顔見知りの三人に親しげに声をかけるシンリ。
「平行世界の素材収集は上手く行ったのか?」
 ウルディカは本題を切り出す前に何気ない事を訊ねた。
「順調に終える事が出来たよ」
 シンリはにこやかに答えた。
「特別なレシピは一体どんな魔法薬なのか興味があるんだが」
 グラキエスが本題を切り出した。
「……特別なレシピか」
 シンリはじっと三人の顔を見比べた。それも少し探りの目で。
「私達は友愛会の協力者として訊ねている訳ではありません。ただの興味と今後のために」
 探りの目の意味を察したロアが『説得』を有してる事もあり説得の口火を切る。
「もし危険なものであれば、立ち会い護衛でも何でも協力出来ればと考えている」
 ウルディカが代表して交渉を持ちかける。
「……まぁ、ここまで来たら隠す必要もないから教えるよ。今後についても調薬に関する事なら出来る限り力を尽くすよ」
 シンリはすぐさま探りを引っ込めて特別なレシピについて語った。すぐだったのはある依頼で何度も関わっている事もあって三人を知っているからだろう。

 他の皆よりも先んじてレシピの内容を聞かされた後。
「……そのようなレシピですか」
「素材を得るためのレシピか」
 ロアとグラキエスはレシピの内容に一言。
「それで立ち会う事は可能か」
「出来れば立ち会って貰いたいね。君達には別の用事もあるから」
 ウルディカの申し出にシンリは笑みを浮かべ、快諾。
「……もしかして」
 シンリの言葉にロアが一番に反応した。別の用事と言えば例の魔法薬しかない。
「いや、この後、戻って手間の掛かる仕上げをして完成なんだ。平行世界の騒ぎのおかげで効果の高い素材を手に入れる事が出来てね。とりあえず前に教えて貰った体の状態などを考慮してレシピ外の素材も加えて調整はしてあるから。ただ、前にも話したように考えると作るとは違う事、個人によって効果の効き具合が違う事、それによって効果を発揮しなかったりその他諸々の症状が出る可能性がある事を覚悟して欲しい。何せ出来上がった魔法薬の効果を確かめる事は出来ないからね」
 シンリは有意義であった平行世界騒ぎの事を思い出しつつ完成手前の現在の状況を話した。必ずしも効果を発揮するとは限らないと注意も加えて。
「それはエンドロアも俺達も覚悟している事だ」
 ウルディカが代表して答えた。
「効果は使う俺が試したらいい事だ」
「それなら問題無いね。効果を発揮するかどうかは一か八だけど、何かあればこちらが対応して魔法薬に手を入れるから」
 シンリはあっさり。
 そんな時、シンリにオリヴィエからの連絡が入った。
 やり取りはすぐに終わり
「特別なレシピの件だよ。調薬友愛会もいるらしい。でも、まぁ、今頃、魔法中毒者と黒亜は製作に入っているだろうし何も問題無いけどね」
 気に掛ける三人に連絡の内容を明らかにするなり肩をすくめた。
「万が一の対策も考えているようですし、問題ありませんね」
「たが、特別なレシピに齟齬があるとは……」
 ロアとグラキエス。齟齬の内容については見た方が早いという事で説明は後回しにされている。
「とりあえず、向こうに行かないといけない。終わってから」
 シンリはグラキエス達と人影が無い所で落ち合う事を打ち合わせてからグラキエス達に語った話をするために話し合いの方に行った。

 シンリを見送った後、グラキエスは腕輪型HC犬式を使用してフレンディス達に交渉が成功した事を伝えた。