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学生たちの休日16+

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    ★    ★    ★

「反省会だよ。前回、なぜ生身で戦うはずだったのに、テンペストを着ていたのかだね」
 ドール・ゴールド(どーる・ごーるど)黒子アヴァターラ マーシャルアーツ(くろこあう゛ぁたーら・まーしゃるあーつ)を前にして、鳴神 裁(なるかみ・さい)が言いました。
「うーん、謎ですね。確かに、生身の予定だったのに、なぜかテンペストが準備されていましたからね。いったい、誰が持ってきていたんでしょうか」
 ドール・ゴールドの言葉に、黒子アヴァターラマーシャルアーツがちょっとそっぽをむきました。
 それにしても、あのとき鳴神裁はユニオンリングで合体していたとはいえ、生身で戦うつもりでしたのに……。これは、鳴神裁以外の全員が結託していたとしか思えません。
「ということで、ブラックさん、キリキリと白状するんだよ!」
 鳴神裁が、黒子アヴァターラマーシャルアーツに詰め寄りました。
「なぜ自分が……」
「だって、テンペストマスターだから、一番怪しいじゃない」
「あのころはまだテンペストマスターじゃありません」
「でも、テンペストのメイン武装として登録されてたじゃない」
「そ、それは……」
 テンペストを使うつもりでなければ、武器としてインストールされているはずがありません。
「だ、だって、せっかくだからテンペストで使ってもらいたかったんです。相談したら、裁様もいいよーって言ってくれたじゃないですかあ。ドール様も同意してくれましたしい……」
「ええと、だってえ、テンペスト着ていれば、痛い思いをしなくてすむじゃないですか」
 鳴神裁にじろりと見据えられて、ドール・ゴールドがあっけなく白状しました。
 しかし、鳴神裁としてはOKしたつもりはないのですが。
「うーん、まさか……」
 何か思いあたったのか、鳴神裁が意識を集中しました。
『――えーっと、何か用?』
 ナラカから呼び出された物部 九十九(もののべ・つくも)が、鳴神裁の頭の中でアクビまじりに答えました。
「ボクの身体を使って、何かしなかったかなあ?」
『――ごにゃーぽ☆』
「ごにゃーぽ☆」
『――ごにゃーぽ☆』
「ごにゃーぽ☆ って、ごまかすなあ!」
 どうやら、物部九十九が誰かにそそのかされてテンペストを用意したようでした。

    ★    ★    ★

「こんな所まで連れ出してきて、何のつもりなんですか」
 柚木 桂輔(ゆずき・けいすけ)になかば強引に連れてこられたブティックで、アルマ・ライラック(あるま・らいらっく)が迷惑そうに聞き返しました。
 道中ずっと訊ね続けてきたのですが、柚木桂輔はずっと「大事なことだから」の一点張りでちゃんと教えてくれません。まったく、きっとろくでもないことなのでしょう。アルマ・ライラックとしては、まだまだ調整の必要なウィスタリアのメンテナンスの方がよっぽど大事なことなのですが。
「だって、そろそろ夏だし、水着も新着しないとね」
「そんなことのために、私を連れ出したんですかあ!」
 やっぱりろくでもないことだったと、アルマ・ライラックが口をへの字に曲げます。
「だって、今のままじゃ、ヘタしたらあれしかないんだけど、いいのか?」
 柚木桂輔が恐ろしいことを言います。まさか、あの格好で泳げというのでしょうか。
「ということで、ちゃんとした水着を買ってあげるから、まずは試着、試着」
 そう言って、柚木桂輔がアルマ・ライラックを試着室に押し込みました。
「まずは、オーソドックスに、このあたりかなあ」
 そう言うと、カーテンの隙間から柚木桂輔が天御柱学院公式水着を差し入れてきました。
「いきなり、これですか……。まあ、学院の公式水着ですから、一つぐらいは持っていないといけないのかも……」
 意外と大胆なビキニにちょっと戸惑いながらも、アルマ・ライラックが着替えます。
「もういいかい?」
「まだです。のぞいたら、撃ち殺しますからね!」
 装飾品の多いいつもの格好を苦労して脱ぎながら、アルマ・ライラックが釘を刺しました。すぐ横には、いつでも撃てるようにニルヴァーナライフルを立てかけておきます。
「しないしない」
 そう調子よく言う柚木桂輔でしたが、そっとアルマ・ライラックの脱衣篭を試着室から引っ張り出して隠すことには躊躇ありません。
「やっぱり、ちょっと露出が……」
 少し恥ずかしそうにお腹のあたりに手をやりながら、アルマ・ライラックが言いました。
「じゃあ、この水着はどうかな」
 今度は、ろくりんぴっくのときの西シャンバラの公式水着を柚木桂輔が手渡しました。こちらは、コルセット部分があるのでお腹がやや隠れますが、パレオがなくなったのでちょっとハイレグ気味なのが気になります。
「じゃあ、スクール水着とか」
「そんなマニアックな……」
「じゃあ、ストリングスとか」
「死にたいんですか……。もう、着替えます……あれっ? 服がない!」
 いくつか試着してみて、さすがにアルマ・ライラックが飽きてきました。これではいい玩具です。ところが、いざ服を着ようとすると、なぜか服がありません。
「気にするなよ。海も近いんだし、その水着のまま泳ぎに行こ……」
 最後まで言う前に、柚木桂輔の背後の壁に銃痕が穿たれました。
「死ぬ前に、服を返してからナラカに堕ちてください」
「それは、どちらも嫌だ!」
「逃がしません!」
 カウンターに水着の代金を叩きつけると、アルマ・ライラックはニルヴァーナライフルを手に柚木桂輔の後を追いかけていきました。