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ノクターン音楽学校

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ノクターン音楽学校

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音楽学校


「それじゃ、ボク、赤城花音の作詞講座を始めるよぉ〜♪」
 ノクターン音楽学校にある教室にて。赤城 花音(あかぎ・かのん)はそう言って授業を始める。音楽学校にある正式なカリキュラムではなくあくまで開校イベントの一つの催し物のような形であるが、音楽に興味を持ちある程度熱意のある生徒たちが教室にはそれなりに集まっていた。
「基本、作詞には労力を使う事を、覚悟する事からかな? 正直大変な作業でもあるから途中で折れる人も多いんだと思うよ」
 花音が説明するのは作詞に対する心構えだ。
「此処で最初からあまりリターンを求めない事は肝心かな? 自分の楽曲にリスナーさんが何を感じるかは自由! そう思って粛々と曲を創って根気を養うのが最初の頃のボクのやり方だったね」
 それは自身の経験によるものがほとんどだ。
「自分が何故アーティストなのか。常に自分と向き合う事も大切に思うよ。ボクの場合は創意工夫と試行錯誤する事が、純粋に楽しいから! そしてその事を、世の中の為に結び付ける事に、喜びがあるって思えるから活動が続けられるんだ!」
 このパラミタにおいて前線を走るプロの経験を聞ける機会というのはそれほど多くはない。生徒たちは真剣に聞いていた。
「花音は心構え的な感じですので、僕からは技術的な話が出来ればと思います」
 花音の話が一段落ついたところで赤城 リュート(あかぎ・りゅーと)が話を始める。
「『10行作詞』をご存知でしょうか?
Aメロ4行
Bメロ2行
サビ4行
この10行で構成される作詞の事です」
 花音に対してリュートは技術的な話。
「この構成に意味はあるのです。
Aメロ頭2行は起
Aメロ下2行は承
Bメロは転
サビは結
にそれぞれ対応しています。これを覚えると作業効率や作品のクオリティーが良く成る方が多いと思います」
 それに対する生徒たちの反応はそれぞれだ。目からうろこの様子で聞いている子やそんな子を見て『私知ってる』と少し得意げな生徒。知っている様子だが、それを更に理解を深めようとする生徒。リュートはそういった生徒のために出来る限り深く説明していく。
「……と、僕からは以上です」
「継続は力だよ。なんていうのかな……ボクはまだ燃え尽きていないんだ。根気強く創り続ける事によって少しずつ未来が明るくなるんじゃないかなって」
 ひと通り説明を終えて花音は締めに入る。
「みんなも大変だけど……どんどん楽曲創りに挑戦して貰えると良いな!」
 頑張ってねと花音は締め授業が終わる。
 その授業の終わりには生徒からの大きな拍手が響くのだった。


「はぁ……たくさん食べたの」
 お腹を幸せそうに撫でながら言うのは及川 翠(おいかわ・みどり)だ。
「……何件屋台回ったのかしら」
 翠の様子にため息を付きながら言うのはミリア・アンドレッティ(みりあ・あんどれってぃ)
「食べ物やさんだけじゃなくてテキ屋さんとか色々回りましたからね」
 満足そうな様子でそう言うのは徳永 瑠璃(とくなが・るり)
「村のほうで出てる屋台は全部回ったねぇ〜」
 こちらも満足そうに言うのはサリア・アンドレッティ(さりあ・あんどれってぃ)
「……ま、楽しむことは悪くないんだけどね」
 それにしても好奇心旺盛な3人……特に翠のテンションについていって周りに迷惑をかけないよう気をつけるのは大変だとミリアは思う。
「他に遊ぶところはないの?」
 翠の疑問。
「えっと……開校イベントですから多分学校の方でも何か催し物をやっているとは思います」
 瑠璃はそう答える。
「それじゃ、学校の方に突撃なの!」
 瑠璃の答えに間髪いれずそう言う翠。
「? でもでも、どうして学校さんが始まるのにお祭りなのかな?」
 サリアには開校とお祭りの関係性がよく分からなかった。
「そこらへんはいろいろ政治的な思惑もあるだろうから一概には言えないんだけど……ようは生徒を迎え入れるお祝いをしようって考えでいいと思うわ」
「んと……お祭り楽しめば理由なんてどうでもいいんだね」
「つまり学校に突撃なの!」
「生徒以外でも入って大丈夫なんでしょうか? 聞いてきますね」
 すでに学校に突撃するつもりまんまんな三人。ちゃんと許可を取ろうとしている瑠璃にしても好奇心を隠しきれていない。
「開校イベント中は学校が生徒関係者以外にも自由に開放されてるみたいです」
 警備員をやっていたニルミナス防衛団から聞いてきた話を瑠璃は三人に伝える。
「つまり合法突撃なの?」
「……なんで突撃なのよ。普通に入りなさいよ」
 翠の素のつぶやきにまた頭痛を感じるミリア。翠はいつでも変わらない。ミリアの苦悩もまた終わることのないものだ。
(嫌じゃない……嫌じゃないけど…………)
 祭くらい自分も楽しみたかった気もする。自分以外の翠の保護者が入ればいいが、あいにくとこの場にいる保護者は自分だけ。望むべくもないのだ。
「瑠璃ちゃん、学校ではどんな催し物があるんですかぁ?」
「えっと……学校じゃ講義系が多いみたいですね」
 サリアの質問に瑠璃は答える。
「だってさ翠。講義受ける?」
「講義に突撃なの? それも面白そうなの」
「それ絶対普通に講義受けるって意味じゃないわよね?」
「あとは……ステージのほうでライブとかの見世物をやってるみたいです」
「それは〜楽しそうなの〜」
「ライブなの!? 聞きたいの!」
「……決まったみたいね」
 ライブなら少しくらい翠たちが騒がしくしても大丈夫だろうとミリアも同意する。
「それじゃライブを見に突撃なの!」
 そうして翠たちはライブを見に学校へと入っていくのだった。