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一会→十会 —鍛錬の儀—

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一会→十会 —鍛錬の儀—

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【とある往来】

 パラミタ大陸最大国家、『エリュシオン帝国』。
 カンテミール地方領海上に、『巨大な魔法石』が出現したのは数時間前の事だった。

 海面すれすれに浮かぶその多面体の結晶は、その出現と同時にパラミタ全土の空間を歪ませると、各地へと魔法世界との『門』を開いたのだ。
 そんな中、諸処の対応に追われ慌ただしい動きを見せていたそのエリュシオンへ、向かう契約者達が居た。

「――えっとそれで……、私達はそこに行って、どうすればいいの?」
「破壊します」
 道すがら、ジゼル・パルテノペー(じぜる・ぱるてのぺー)の問いに、ツライッツ・ディクス(つらいっつ・でぃくす)は即答した。
「正確には破壊できる状態へ変質させます。その後は、他の方にお任せすることになりますが――」
 こくこくと頷いて何とか飲み込むと、ジゼルはまたも小さな壁にぶち当たったようで、小首を傾げる。
「でもでもっ、変質ってことは、ばーんとか、どーんとか、そういうのではないのね?」
 頷いて、ツライッツはジゼル達の方へ軽く向き直ると、説明を始めた。
「先日、俺の機晶石が侵食されかかった話は、ご存知ですよね」

 ツライッツが前提を出したところで、続けたのはハインリヒ・ディーツゲン(はいんりひ・でぃーつげん)だ。
「あの後プラヴダは、ナージャ・カリーニン(なーじゃ・かりーにん)博士とツライッツに、融解した魔法石『魂の牢獄』と一時的に同化状態にあった時のデータを取り、解析して貰う様に依頼していたんだ」

「その際、魔法石からの干渉パターンが判明したので、それをそのまま“お返し”しようかと」
 そう言ってツライッツはにこりと笑った。その“にこり”にはほんの少しヒンヤリとしたものが混じっていたが、それに誰が言及する間もなく、ツライッツは説明を続ける。
「簡単に言えば、その干渉パターンを、今度は機晶石側から魔法石側に送り込むんです」
 それが可能かどうかについては、ナージャとの検討と実験――今回のように大きな魔法石を想定していない小さなモデルだったが――は、済んでいるらしい。勿論幾らかの調整は必要ではあるが、魔法石と機晶石が親和性の高いことは判っている。機晶石への干渉の手順を逆に辿ることで、魔法石へ接触し、侵食しようというのだ。
「博士のおかげで、弱体化させるパターンも構築完了していますし。ただ……」
 親和性の高さは干渉がしやすい、ということではあるが、同時に、干渉されやすいということでもある。
「俺一人の力では、逆に乗っ取られてしまう可能性もあります」

「それで私達が必要なのね!」

 ぱっと表情を明るくするジゼルは、機晶姫ではない。パラミタに現存するどの種族とも違う、人工の――生物兵器だ。ただ彼女が作られる経緯には、機晶石が密接に関わっている。ザナドゥの悪魔が作り出したオーバーテクノロジーの産物、アクアマリン。その石の力を引き出す事が出来るジゼルならば、この作戦の主要な戦力となってくれる事だろう。

「はい。あなたたちの力を貸してもらえますか?」
「めー! めめーっ!!」
 ツライッツの“お願い”にスヴァローグ・トリグラフ(すゔぁろーぐ・とりぐらふ)は勇ましく片手をあげて見せ、四匹の子山羊もそれに続く。はたから聞けばめーとしか聞き取れないそれも、ジゼルには言葉として聞き取れたようで、「任せて」、「頑張る」という単語に混じっていたツライッツを指す二人称に、ジゼルはほんのり頬を染める。

「Muttiって呼ばれてるの?」

 質問に、一瞬と目を瞬かせたツライッツは「ええ、まぁ……」と歯切れ悪く言うと、その視線を僅かに彷徨わせた。その目元が僅かに赤いのは気のせいではないだろう。
「と、兎も角、問題はその……干渉中です」
 こほん、と軽い咳き込みと共に、ツライッツは幾らか強引に話を引き戻した。
「魔法石への干渉は、恐らく直ぐ気付かれるでしょう。そうなれば、間違いなく妨害してくる者も出て来ます。そちらは……契約者の皆さんにお願いしたいのですが……」
 振り返ったツライッツは、馬口 魔穂香の顔色に、心配げに眉を寄せる。車に乗り込んでからどうも気分が優れないようで、彼女の華やかな少女顔から薄桃色が消え、今は首から下まで青くなってしまっている。原因が判らず心配そうなツライッツの顔に、魔穂香は首を振った。
「……わかってる、やるわよ……それはいいのよ……」
 吐きそうになるのを何とか堪え、魔穂香はパートナーの馬口 六兵衛を思い浮かべて恨めしげな嘆息を漏らす。

 車は四人乗り。それなら優先されるべきは魔穂香だと六兵衛は言っていたが、あの時の様子を思い起こせば疑問が浮かぶ。そうだ、六兵衛はこの車に乗ると悲惨な目に遭う事を、知っていたに違いない。
「覚えておきなさいよ六兵衛……。
 それにしても…………なんで陸路なのよ……!」
 魔穂香が絶え絶えにぶつけどころの無い不満を漏らす。すると、ハインリヒとツライッツは不思議そうな顔を一瞬浮かべ
「「陸路の方が早いからです」」
 と計ったかのように綺麗に口を揃えた。
 車のスピードメーターは、スタート時にぐりんと回り、限界値を示したまま元へ戻らない。

 飛空艇でも数時間かけて向かうような距離を“一時間ぐらいで着くかな”などと言い出すような人間が、ハンドルを握っているのだ。それはさながら自動車競技の選手が本気を出し続けているようなもので、幾ら魔穂香が優秀な三半規管を持っいても容易に耐えられるものではなく……
 口を開けば別の物まで吐き出してしまいそうで叫ぶ事すら出来ないまま、エリュシオンに辿り着いた頃には、魔穂香の顔は紙のように真っ白になってしまったのだった。


 * * * 



【魔法世界:牢獄】

 初めて訪れる場所、初めて見る城、初めて入る部屋。目の前にある格子ですら見慣れない素材で作られたものだ。
 暗く窓の無い部屋と、淀んだ独特の空気の匂いから、此処が『地下牢獄』であることを判断する。
「……困ったのです」
 閉じ込められたハルカは、成す術もなく、そう呟くしかなく。


「ハルカ。ハルカ・エドワーズ(はるか・えどわーず)
 突然、目の前に、見憶えのある少女が現れた。
「探したわ探したわ。こんな小娘一人、どうして捕捉するのに手間取ったのかしら?」
 昏く、冷たい瞳でハルカを一瞥したと思ったら、ハルカは少女の率いる『闇の軍勢』の者達に、あっという間に取り押さえられ、拘束されて、気がつけば、何処かの城に連れ込まれ、この牢獄に閉じ込められて、今に至る。
 現れた少女に、ハルカは憶えがあった。
 あの時は、仮面舞踏会のパーティー会場で仮面を被っていたけれど、雰囲気で何となく、解る。
 【永続する夢】の二つ名を持つ双子の一人、マデリエネ・ビョルケンヘイム
 ハルカは、友人達の抱える事情を全ては聞いていなかったが、あの少女がアッシュ達の敵だということは理解していた。
 つまり、敵に捕らわれた自分は、このままでは友人達の迷惑となってしまうのだ。
 ――けれど何故、彼女はわざわざ自分を探して誘拐したのだろう?

 俄かに廊下が騒がしくなり、ハルカがそちらを見ると、扉が開き、二人の人物が入って来た。あ、とハルカは目を見張る。
「此処で暫く大人しくしていろ!」
 と、捨て台詞を残して再び扉は閉められ、鍵を掛けられる。乱暴に扱われた所為で倒れ込んだ二人の少女は、顔を上げて先客の存在に驚いた。
「シェリーさん?」「ハルカ?」
 二人が声を上げたのはほぼ同時だ。隣で一番小さな少女がちょこんと首を傾げたのに、豊美ちゃんとの交流で彼女――讃良とも面識があったシェリーが、場違いながらハルカを紹介をする。
「シェリーさん達も、誘拐されたのです?」
「そう、みたい。でも一体どうして……?」
 三人だけではない。格子の向こうに見えるのは、捕らえられた契約者が次々に投げ込まれる姿だ。恐らくそれぞれ別々に誘拐されては、ここに閉じ込められているのだろう。
「此処が何処だか解らないのです」
 自分が誘拐された経緯を説明し、漏らしたハルカの言葉に、シェリーも答えを出せず眉を寄せる。
「わたしもよく分からないけど……姫子ちゃんならきっと分かると思うから、変わるねー」
 讃良の言葉に、二人が「変わる?」と呟いた直後、彼女達の前で淡い光りが瞬き、気付けば讃良の姿が成長した、ともすれば別人のように見える少女に変わっていた。
「……やれやれ、説明の一つくらいしておいても良かろうに。ま、いずれ登場することにはなったろうがな」
 “変わった”讃良へ呟いた少女――高天原 姫子は、未だ事情を飲み込めずにいるハルカとシェリーへ、讃良が姫子に望んでいた回答をもたらす。
「此処は『魔法世界』。
 ヴァルデマール・グリューネヴァルトと、そ奴の『闇の軍勢』の根城だ」
「闇の軍勢……聞いた事があるわ。クロフォードが、何か知っているみたいだったけど、口が重くて、殆ど何も教えてはくれなかったの……」
 肩を落とすシェリー。ハルカは項垂れている。
「ハルカは皆の迷惑になるのです?」
 自分は、いつも――
 落込む彼女達を見て、姫子は目を丸くして、次にふっと微笑んだ。
 そうして「いや」と否定を口に出し、今度は不敵に笑ってみせる。
「この人選の意図は分かる。
 アッシュ、豊美、アレク、そして他の契約者たち……魔法世界に対抗する者達が大切にしている者を誘拐し、利用するつもりなのだろう。
 だが…………、連中は詰めが甘い。
 懐に抱え込む敵の正体を、全て把握しておかないのだからな」
 姫子が扉へ向けて手をかざす。手首に嵌められていた腕輪が光を放つと、生じた光は掌を伝わり扉へ、鍵へとまとわりつくように吸い込まれる。
「豊美ほどの大出力魔法は使えぬが、この程度ならば私にも出来る。……今少し待て、鍵を外す」
 姫子の言葉は少しの後、真実となる。三人が閉じ込められていた部屋と、契約者を閉じ込めていた部屋の鍵が外された。静かに行われたため、異変に気付くものはまだ居ない。
「さて……行くぞ、ハルカ、シェリー。
 人一人の力は小さい、だが歩けぬわけではなかろう? 今はその力さえあれば十分だ」
 伸ばされた手を、ハルカとシェリーは互いの顔を見合わせて、意を決した表情で取る。三人が揃って扉を出ると、契約者もこれから行われるであろう戦いに臨む顔をしていた。
「さあ、貴奴に目にもの見せてやろう」
 反撃の一歩を、皆が踏み出す――。

担当マスターより

▼担当マスター

菊池五郎

▼マスターコメント

参加の皆様、ご覧頂いた皆様有り難う御座いました。

猫宮 烈
猫宮です。ご参加いただきありがとうございます。

……数時間前まで面白いコメントを思いついていた気がしますが、暑さで吹っ飛びました。
そうだきっと脱げば落ち着いて全て思い出すはず(ハリセンチョップ!

……ツッコミはやっぱりハリセンチョップ(ダイイングメッセージ


泉 楽
泉です。書き始めたら梅雨が明けて夏になりました。ノートパソコンの熱が半端ないです。壊れたらどうしよう。
今回のお話で、平太が割と頑張ってたという意外な面が明らかになりました。びっくりしました。いや本当。相変わらずヘタレだけど(笑)
多分、皆さんの武器に「何事もありませんよーに。うまく使えますよーに。壊れたりしませんよーに」とぶつぶつ祈りながらも(雑念入りまくり)、楽しんで作ったことでしょう。
次回はちょこっと出番あります。それが平太の最後の出番だと思うので、よろしければご参加ください。


東 安曇
東です。ノートパソコンの熱が半端無いし壊れたらどうしようだし書いたものは何度も消えるし強制終了かけないとだし夏のマスター業務の恐怖感は半端じゃないですね……。
次回はとうとうラストバトルなので、頑張って持たせたいところです。いえ、パソコン共々頑張ります。

次回シナリオは、最後の戦いになります。皆様ご参加頂ければと思います。

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『今回付与された二つ名について』
次回シナリオにて武装欄の武装1に装備されたものに、その効果が付与されているというかたちで判定致します。
効果を発揮する為には必ず今回のシナリオで発行された【★ナントカカントカ】の二つ名称号をセットしご参加下さい。
また、こちらの★のついた称号は、次回のバトルのみで使用出来るものです。ご注意下さい。

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