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食い気? 色気? の夏祭り

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食い気? 色気? の夏祭り
食い気? 色気? の夏祭り 食い気? 色気? の夏祭り

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 美少女達の甘い時間

 イルミンスール近郊の村で行われる夏祭り、その夏祭りを前に浴衣の着付けに少々四苦八苦している1人の少女――
「うーん、どうしても帯が緩んできちゃう……困ったよ」
 ミーナ・リンドバーグ(みーな・りんどばーぐ)が帯を結び直そうとしていると、その手をスッと取ってミーナの後ろに回ると帯をしっかり結んだ少女がいた。
「これで大丈夫でござるよ、ミーナ。慣れない着物故に手間がかかってしまうのは仕方がないでござる」
 ミーナの後ろから真田 佐保(さなだ・さほ)が着付けを手伝ってどうにか夏祭りデートへ出掛けらるようになった。佐保は既に準備万端、ミーナとお揃いの浴衣に照れ臭そうにするのだった。
「佐保、着付けありがとうです。一人だと着られなかったの。一緒の浴衣でお祭り来たかったんだよ」
 照れ笑いしながらミーナと佐保は仲良く手を繋いで、祭り会場へと向かうのでした。

 人混みがもの凄い中、何とか歩く2人だがあっちへ流されこっちへ流されと人の波に負けそうである。
「さ、佐保……手を離しちゃだめだよー」
「勿論でござるが……むぎゅ」
 小柄な2人は中々苦労して通路を歩いていると、誰かに手を引かれて人の波から掻き出でる事が出来た。
「大丈夫だった? 今の時間は歩くの大変みたいだから、少し落ち着いてからの方がいいかもだよ」
 麦わら帽子を深く被り、かろうじて口元だけが見えるラムネ売りの少女、騎沙良 詩穂(きさら・しほ)に出店の隅へ引っ張り出されたようだった。
「これはご親切にありがとうでござる。良ければお名前を伺いたいでござる」
 深々と頭を下げて名前を訊ねる佐保とミーナに、詩穂は『瓶ラムネの少女』と名乗った。
「人混みが落ち着くまで、ラムネでもいかがですか? お安くしますよ♪」
 氷水からラムネを取り出し、それぞれ手渡すとミーナは慣れた様子でラムネのビー玉栓を開けた。佐保はミーナの開け方を見様見真似で開けてみるが――
「わっ!?」
 ビー玉栓を開けた途端、ラムネが吹きこぼれてしまった。
「あらあら大変! 佐保、力が入り過ぎてしまったんだよね」
 慌てて佐保の手をハンカチで拭うミーナと、『瓶ラムネの少女』こと詩穂も御手拭き用のウェットティッシュを出した。
「結構、コツがいるんですよ〜。大丈夫ですか?」
 ミーナと詩穂がそれぞれ手を拭いていくと、ふと佐保の頬にも飛んだラムネを見つけたミーナは、ちゅっと口で拭った。
「…………み、ミーナ! 人前でござる……っ」
 途端に真っ赤になった佐保が可愛いのか、ミーナは頭を撫でながら佐保を宥めた。
「だって、ハンカチは佐保の手を拭くのに使っちゃったし、それにこっちの方が早かったんだもん」
 こっち、とミーナは口元を指し未だ赤くなっている佐保はチラリと詩穂を見遣った。
「ん? 大丈夫ですよ、麦わら帽子を被っていると見えないのです」
 佐保の言いたい事を察したのか、詩穂は麦わら帽子を深く被ったままラムネを買い求める祭り客の応対をしている。そうこうしている内に漸く人混みも落ち着いてきてミーナと佐保はおまけのラムネを貰うと、出店巡りへと歩き出した。


 ◇   ◇   ◇


 ミーナと佐保は色々と出店を見て回っていると、聞きなれた声が聞こえた。
「いらっしゃいませなのー、たこやきなのー。あつあつまんまるおいしいのー」
 ミーナと佐保は顔を見合わせてたこ焼き屋の呼び込みをしている声の方へ向かうと、そこには――
「フランカ!?」
「フランカ殿!?」
「あ! みーな! さほおねーちゃーん! ふらんかのたこやきかっていってー。おいしいですよー♪」
 フランカ・マキャフリー(ふらんか・まきゃふりー)がたこ焼き屋の出店を開いていたのだ。可愛い呼び込みが功を奏しているのか、中々盛況な様子を見せてたこ焼きを待つお客さんにフランカはキリッと真剣な表情になると――
「ひぎ! たこやき20れんがえし!」
 くるくるくるっと器用にひっくり返していく技を見せる余裕もあった。
「おお、中々すごい技でござる。フランカ殿は忍術の才能もあるのかもしれないでござる」
「そ、そうなの? かな」
「やけたのー みーな、さほおねーちゃん、どうぞなの、たこやきなのー」
 ミーナがお金を払うと、フランカはおまけのたこ焼きを2つ追加した。フランカの頭を撫でると、フランカの出店の横で佐保と仲良く食べさせっこする。最初にミーナが爪楊枝を持って佐保へたこ焼きを差し出した。
「佐保♪ はい、あーんして!」
 照れながら口を開けた佐保へたこ焼きを運ぶミーナはとても幸せそうだ。あつあつのたこ焼きに佐保もはふはふと口の中で冷ましながら食べると、たこ焼きの香ばしさとソースで佐保の表情も自然と笑顔になっていった。
「今度は拙者の番でござる、ミーナにも……はい、あーんでござる♪」
 佐保の差し出したたこ焼きを食べるミーナもまた、幸せそうに頬張った。ミーナへ差し出す前にある程度冷ましておいた佐保は、もう一つ取ってふーふーと冷ましてミーナへ食べさせた。
「拙者、ミーナとこうして過ごせて……幸せでござる」
 不意に言われた言葉に、ミーナはただギュッと佐保と抱きしめた。フランカも両目を手で塞いで見ないようにしている。

 その後も2人のいちゃつきっぷりは続き、いつの間にか佐保の頬についていたタコ焼きをミーナが「ちゅっ」とキスのついでに取ったりと暑い夏祭りの甘い時間を過ごすのでした。