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死神動画 後編

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死神動画 後編

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■プロローグ

 薄暗い部屋の中。
 1つの安アパートを買い取り、部屋を遮る壁を取り払い、広いアジトの様に改造した広間に無造作に並ぶPCやサーバー。
 この暑い季節を全く感じさせないレベルで冷房が効いており、肌寒さすら感じてしまいそうなこの部屋。
「ひ、ひひひ……」
 モニターを見つめる男は、目を光らせ怪しく笑う。
「さっきは『死神動画のデータベース』に不正アクセスがあったようだけど、流石は僕ら、無事に撃退するどころか捕まえちゃったよ」
「う、うん、そうだね。僕らの技術力があればどこの誰がけしかけたか突き止めることもできそうだよ」
 部屋の中には、それぞれに10人程の男達が居るようだが、誰一人としてモニターから目線を逸らさずに会話している。
 ここに正常な人間が居れば、不気味と感じてしまうだろう。
「いや、それは後でいい。それよりも見ろよ、コレ。我らを称えるメッセージがこんなにも」
 1人の男の画面には、死神動画に当てられたメッセージが表示されていた。
 内容の殆どは、死神動画によって自分は助かった。
 未来を知れたおかげで安心して生活できる。
 これでもう何も怖くない、自分は死ななくてすむ。
 と言ったようなものばかりではあるが、中には批判するようなものもみられる。
「はは、我らは世界の救世主となるのだ、このぐらいは当然じゃないか」
 しかし、全く持って視界に入っていないのか、男達は皆尊大な様子で語り出す。
「人々は未来を知って、我らは救世主となるのだ!」
 1人の男がそう高らかに宣言すると、周りの男達も連動するように盛り上がる。
 まるで、狂った宗教のように妄信的に。
「ふう、そう言う事だ。その為に我らは居場所を知られてはならん、先ほど侵入でばれてはいないか?」
「大丈夫です、侵入したプログラムは捕縛しましたし、データが『会話』なんて出来るわけないじゃないですか」
「それもそうだ、所詮持ち出せない以上我らの居場所は一切の不明なのだ!」
 また、男達は笑い出す。
「……うん?」
 少し騒ぎ過ぎたか、笑っていた男は自分の体がやけに気怠い事に気が付く。
 気が付けば周りの皆も疲れた顔をしており、中には眠っている者も居る。
「お、おい何をサボっている! 我々は救世主なのだ――――っ!」
 男が叱責するよりも早く、完璧なセキュリティを敷いていたはずのドアが警報もなく吹き飛び日光が差し込む。
「はあい、救世主さん。こんにちわ」
 開け放たれたドアの先ではリネン・ロスヴァイセ(りねん・ろすヴぁいせ)が満点の笑みを浮かべていた。