空京大学へ

天御柱学院

校長室

蒼空学園へ

学生たちの休日17+

リアクション公開中!

学生たちの休日17+

リアクション

    ★    ★    ★

「そういえば、エステルさんたちも呼んだんだよな。そろそろ来ていてもいいんじゃないのか?」
 少し遅いんじゃないかと、源鉄心が首をかしげた。

    ★    ★    ★

 そのころ、セントアンドリューのセンサーには、逸早くフリングホルニの反応がセンサーに表れていた。だが、その周囲にもいくつもの反応が表れる。

    ★    ★    ★

「こちらでも確認しましたわ。艦影は七つ……、いえ、その後方からも多数の大型の反応があります」
 伊勢のブリッジで、レーダーを分析していた天城 千歳(あまぎ・ちとせ)が大田川龍一にむかって叫んだ。
 いきなり現れた大部隊に、さすがにH部隊がざわめきだす。

    ★    ★    ★

「味方識別信号確認しました。フリングホルニのようです。でも、出撃してきた艦の数が情報とはあいませんが……」
「一応、警戒態勢は敷いておけ」
 状況分析した結果を報告する高嶋 梓(たかしま・あずさ)に、湊川亮一が命じた。
「やれやれ、なんだって言うんですかね」
「模擬戦でしょうか? でも、ここで?」
 戦闘待機命令が出て、アルバート・ハウゼン(あるばーと・はうぜん)ソフィア・グロリア(そふぃあ・ぐろりあ)が、バタバタと土佐の中で配置につく。

    ★    ★    ★

 やがて、接近してくる部隊が、肉眼で確認できるようになった。
「あれ? フリングホルニがいっぱいうさ?」
「きっと、またプレゼントしてくれるのですにゃ」
 視界に入ってきた7隻の色とりどりのフリングホルニを見て、ティー・ティー(てぃー・てぃー)とイコナ・ユア・クックブックが歓声をあげた。

    ★    ★    ★

「わあ、驚いてる、驚いてる」
 明らかに、いくつかの艦に動揺が見られるH部隊を見て、フレロビ・マイトナーがはしゃいだ。まるで、悪戯が大成功したという顔だ。
「ちょっと、不謹慎だよ」
 ニルス・マイトナーが、喜びすぎだと釘を刺した。
「さすがに、事前連絡無しでは、ちょっと驚かせてしまったのではないのですか?」
 少しまずいのではないのかと、フリングホルニのブリッジで、エステル・シャンフロウが、艦長のグレン・ドミトリーに言った。
「この程度でですか?」
 グレン・ドミトリーが苦笑した。
「そのとおり。ここで我らが帝国の威容をはっきりと見せつけておきませんと、今後の作戦の指揮権の問題もありますからな。まあ、決戦を行うというのに、この程度で驚かれても味方として困るというものです」
 しれっと、デュランドール・ロンバスがつけ加えた。
 エステル・シャンフロウたちが率いてきたのは、フリングホルニと、それに随伴するフリングホルニ級起動空母6隻。量産され、各龍騎士団に配備されたものだ。薄緑色のフリングホルニと区別できるように、それぞれのフリングホルニ級は虹の七色に色分けされている。
 それら各艦には、100騎ほどのワイバーン部隊が搭乗していた。とはいえ、それが龍騎士団の戦力のすべてであるはずもなく、乗っているのは航空戦力の主力部隊であり、各龍騎士団長などは独自の部隊を率いて、別途、遊撃や先鋒の任についている。あくまでも、この部隊にいるのは、数で敵を圧倒する一般兵の主力部隊だ。
 また、第三龍騎士団は帝都防衛の任務から、兵士を少数派遣してはいるが、騎士団旗艦としての機動空母は配備されてはいない。
 恐竜騎士団については、これから兵士の乗り込みを開始する予定である。
 エステル・シャンフロウの乗るフリングホルニには、龍騎士団に所属していない各地の一般兵たちが、ヴァラヌスフライヤーに乗って参加している。
 それら機動艦隊の後方には、マ・メール・ロア級の機動要塞が、およそ50基追従している。当然、内部には多数の兵士とイコンが収容されていた。
 まさに、帝国の威容と物量をまざまざと見せつける大部隊であった。
 決戦に対しての帝国の本気を示すと共に、シャンバラ王国に対して、あらためてエリュシオン帝国が強大な隣国であることを誇示するものだ。

    ★    ★    ★

「今日は、お招きいただいてありがとうございます」
 フリングホルニを湾岸に停泊させると、セント・アンドリューを訪れたエステル・シャンフロウが言った。すぐ後ろには、デュランドール・ロンバスが護衛として同伴している。
 フリングホルニ以外の機動要塞は、スペースの関係上、少し離れた地点に展開していた。
「陛下より賜りし、このセント・アンドリューを観閲艦として、卿らを迎えられたことは感無量の極みです」
 観閲官として、ホレーショ・ネルソンが、エステル・シャンフロウたちを出迎えた。
「ようこそ、シャンフロウ卿。それでは、これから共に戦う艦隊を御覧いただこう」
 少しも臆することなくグロリアーナ・ライザ・ブーリン・テューダーが言った。
 これはシャンバラ国軍の公式行事ではなく、あくまでもH部隊のプライベートなイベントだ。だからこそ、逆に、これだけの戦力も、単なる一部隊に過ぎないということを強調する。同時に、国軍の部隊長や司令官を呼んでいるわけではないので、観閲するのは部隊を代表してグロリアーナ・ライザ・ブーリン・テューダーと、帝国を代表してエステル・シャンフロウとなっている。帝国としても、釣り合いをとるには地方領主程度で十分という考えのようだ。