リアクション
ツァンダの休日 「そろそろかなあー」 蒼空学園のプールでパチャパチャとチッパイ水着で泳ぎながら、芦原 郁乃(あはら・いくの)がしきりにロッカールームとの通路の方をチラチラと見やりました。 「きたっ!」 芦原郁乃が、目を輝かせました。 「お、お待たせしました……」 消え入るような声で、秋月 桃花(あきづき・とうか)が現れます。 「郁乃様ったら……どうなされたのですか?」 プールに入ってきた自分をガン見しつつける芦原郁乃に、秋月桃花が戸惑うように訊ねました。 色白の芦原郁乃の肌に蒼空学園の水着はよく映えるのですが、それにしても、豊かな秋月桃花の身体に対しては布面積が少なすぎます。水面から突き出た桜色に上気した肩、水中でせわしなく動いている綺麗にのびた二つの脚、そして、莫大な浮力によって水に浮かんでいる二つのたっゆん。 「さ、最高……」 見とれていた芦原郁乃が、思わずそうつぶやいてのけぞりました。 「きゃー、郁乃様!?」 秋月桃花の悲鳴と共に、芦原郁乃の意識が遠くなります。 ……。 「あれ?」 「あ、起きた? まだ休んでたほうがいいよ」 意識を取り戻した芦原郁乃に、芦原 揺花(あはら・ゆりあ)が言いました。どうやら、秋月桃花の胸にあてられて、のぼせて倒れてしまったようです。 プールサイドで膝枕をされて介護されているようですが、この膝枕の主は芦原揺花でしょうね。声からすると、そのようです。なぜって、上を見あげても、芦原揺花の顔が見えないので、確認ができません。 「なんなのよ、この犯罪的なたっゆんは!」 芦原郁乃が、視界をすべて覆っている芦原揺花のたっゆんな下乳にむかって叫びました。 「どうしてこんなに……」 芦原郁乃が、バッと起きあがって叫びました。 「……胸が大きいのよ! AとかBどころじゃないよね! わたしの曾孫なのにっ!?」 思わず、芦原郁乃が芦原揺花を指さして叫びます。 「私は負けない」 「何言ってるんです!? 落ち着いて!!」 慌てて芦原揺花が、芦原郁乃をなだめました。まあ、いつものことです。 「わたしはやっとBだって言うのに、揺花は桃花より大きいってどういうことよっ!!」 「あれ? 郁乃さんは盛ってBなはずじゃ……」 「それ、言うなっての!」 禁断の言葉を口にした芦原揺花の頭を、芦原郁乃が軽くはたきました。ツッコミです。さすがに、再び気絶一歩手前で芦原郁乃が大人しくなりました。 「そろそろ泳ごっか」 落ち着いたところで、芦原郁乃が言いました。これ以上、芦原揺花を見ていると、また何か変な気持ちがわきあがってきそうです。それはいけません。 「郁乃様、調子はどうですか?」 プールに戻ろうとすると、秋月桃花がプールから上がってきました。 濡れた髪や、何よりもたっゆんから大量の水が零れ落ちてきて……。 「あっ、やっぱり、ムリ……」 そう言って、芦原郁乃はまた失神してしまいました。 ★ ★ ★ 「たっだいまー」 エリュシオン帝国から長距離テレポートで御神楽邸に戻ってきたノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)が元気よくリビングのドアを開けました。 「お座りなさい!」 「はい……」 いきなり、御神楽 陽太(みかぐら・ようた)が御神楽 環菜(みかぐら・かんな)に正座させられています。この間のラジオ出演以来、少し親馬鹿をセーブするように躾けられているようです。 そんな御神楽陽太の隣では、娘の陽菜が同じようにお座りをしていました。 「もう、陽菜まで真似しなくていいのに」 「そんな、やっと一人でお座りできるようになったのに。可愛いじゃないか、可愛いじゃないか!」 またもやべた褒めしようとする御神楽陽太を、御神楽環菜が、メッと叱りました。 「何をやっているんだかあ」 どっちもどっちだと、ちょっとノーン・クリスタリアが呆れます。 「やりましたわー!」 そこへ、エリシア・ボック(えりしあ・ぼっく)が駆け込んできました。 「あらノーン、来ていたのですか?」 今さらながらに、ノーン・クリスタリアに気づいて、エリシア・ボックが言います。 「落ち着いてください、エリシア様。陽菜様が、びっくりしてしまいますわ」 御神楽 舞花(みかぐら・まいか)が注意するように言いますが、当の陽菜は、いっこうに驚くそぶりも見せずに、ノーン・クリスタリアとボール遊びを始めようとしています。 「お聞きなさいな、ノーン。わたくし、大当たりしましたの!」 凄く自慢げに、エリシア・ボックが切り出しました。 「穴竜券ですわよ、穴! 大当たりですわ!」 どうやら、ついに競竜で大穴を当てたようです。 「わーい、おめでとう、おねーちゃん」 「おめでとう」 ノーン・クリスタリアを初めとして、御神楽陽太たちが拍手してくれます。 「これが券の番号ですか。さっそく換金しますね」 携帯端末を使って、御神楽舞花が手続きをしてくれました。 「これで、舞花に借りていた資金も、全部返せますわね」 「じゃあ、そちらも処理しますね」 ポチポチと、御神楽舞花が借金の返済処理をしました。今までこまめに借りていたりするので、結構な金額です。 「はい、全部終わりました」 処理がすべて終わって、さてどのくらい残っているのかとエリシア・ボックが残高を確認しました。残った賞金は、わずかに一桁でした……。 ★ ★ ★ ツァンダの人知れぬ山中。 ハイコド・ジーバルス(はいこど・じーばるす)は、おのれの技を磨くために、山ごもりを実行していました。 「さて、もう少し技の練度を上げたいところだけど……」 まずは、天宝陵『万勇拳』奥義の自在からだと、ハイコド・ジーバルスは氣を練る訓練を続けました。 まずは、氣がすべての基本です。 より多くの気を練ることさえできれば、技の破壊力も上がります。ただ、これは自身の成長と共に変化するはずの物なので、現在の最高値を作り出せることができれば、今はそれでよしとすべきでしょう。基本であるがゆえに、しっかりと押さえておかなければなりませんが、これが最終目標ではありません。 「次は、素早さかな」 そうつぶやくと、滅破牙狼拳の構えをとります。 すべての基本である円の動きで気を練りつつ、腰撓めに両腕をあわせて拳牙を作り出します。ひねりを加えつつそれを一気に敵に叩き込みます。顎で噛みつくように圧縮した氣で内部を潰し、返す両手を開くことで氣によって相手を引き裂くのです。それを高速で何発も浴びせます。 イメージするのは簡単ですが、実際には肉体のスピードと、肝心の氣を練る動作が予備動作としてどうしても必要となります。さらに、敵を貫いたときの氣の爆発的な変化が必要です。 これを高速で繰り出せば、敵のほとんど全身を破壊できるわけですが、実際にはモーションが大きいので、初撃を躱されやすい技ですし、敵に余力があれば二の手以降を回避されることもしばしばです。 ゆえに、現在では敵を行動不能にした上での止めとしてしか使用できません。これでは、そこまで持っていくのに無駄な消耗を強いられかねないわけです。 「もっと、素早い氣の錬成と放出ができないとなあ」 さすがに、現在の壁を突破することは、一両日でできるものではありません。いくつもの岩塊を破壊しても、それで速度が上がるというものではありませんでした。 「まあ、これは今後の課題だな。それまでは、今使える技の応用を考えるか」 正攻法の技も必要ですが、もっとトリッキーな応用技もよさそうです。 氣を消して身を潜めながら、触手をのばして、それを囮にすることはできるでしょうか。触手の先から氣を放出すれば、そこにいると敵が勘違いするかもしれません。 やってみると、ちょっと問題があります。せっかく氣を消しているのに、触手から氣を放出するためには、自身の身体で氣を練ることになります。さすがに、触手の先端で氣を練るということはできません。その瞬間に、隠れている意味がなくなります。 ただ、一度気を練ってしまえば、触手の先端に氣を集中させるということはできます。その状態で触手をのばせば、あたかも移動しているように見せかけられそうです。複数の触手をそのようにしてのばせば、あたかも多人数がいるように見せかけたり、分身したようにも見せかけられそうです。 「意外と使えるかな?」 もっと応用できないかと、ハイコド・ジーバルスは修行を続けていきました。 |
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