天御柱学院

リアクション

　上層にある別のエアロックから侵入した機晶姫も、エネルギー室に向っていく。
「倒しても倒しても沸いてきやがる……いい加減にしてほしいもんだな……っと！」
　神崎　荒神（かんざき・こうじん）は、敵機晶姫の頭部に狙いを定めて、弓を放った。
　エネルギー室内部ではなく、荒神達はエネルギー室を背に控えた通路とフロアで、迎撃していた。
「エアロックはもう閉じたんだよね？　向かってきている機晶姫を全部行動不能にすれば……！」
　レキ・フォートアウフ（れき・ふぉーとあうふ）は、たいむちゃん時計を用いて時間を短縮し、黄昏の星輝銃で遠距離から狙いを定めて撃つ。
「次々と来るようじゃのぉ。ただ、直進してくるだけじゃないようじゃぞ」
　ミア・マハ（みあ・まは）は、ディテクトエビルで敵を把握していき、隠れている敵も神の目で暴き出す。
「隠れても無駄じゃ！」
　ミアは露になった機晶姫２体をブリザードで攻撃。
「場所が場所だけに戦い難いですね」
　カムイ・マギ（かむい・まぎ）は光条兵器を手に敵だけを斬るものと選択し、ミアが暴き出した機晶姫に接近して、チェインスマイト。
「エネルギ―室の中にも作業用のエアロックあるから……背後からも狙われる可能性あるんだよね」
　でも、中にも先に向かった仲間がいるはずだから。
　仲間に背を預けるつもりで、カレン・クレスティア（かれん・くれすてぃあ）は、エネルギー室に続くドアの前に立ち、魔法を放っていく。
「後ろに攻撃を通すわけにはいかないが、この通路の壁は多少破壊されようが問題はない」
　言いながら、ジュレール・リーヴェンディ（じゅれーる・りーべんでぃ）は、愛用の機晶姫用レールガンを撃つ。
「わざと当てるわけではないがな」
　内壁の損傷を気に掛けながらも、ジュレールは攻撃の手を緩めるつもりはなかった
　ここを突破されたら終わりのつもりで、全力で応戦していく。
「アルカンシェルがなければ、パラミタに戻れなくなっちまうから、な！」
　荒神の矢が、機晶姫の頭部に突き刺さった。
　機能の一部が破壊されたと思われるが、機晶姫は変わらず機晶キャノンでエネルギーを放出してくる。
「守らなきゃいけない場所は、ここだけじゃないんだよね。他の場所も攻められてるとは思うけど……」
　今はここに集中するしかないと、カレンは思い、歴戦の魔術で機晶姫を退けていく。
「機関室がやられたら、飛行が困難になるし、制御室を失ったら、管内の制御が出来なくなる。操縦室がやられたら動かない普通の宇宙要塞になっちゃう。……エネルギー室はその館内全てへのエネルギー供給を行っている場所だから。どうしても守らなきゃダメなんだよ！」
　カレンの魔術で機晶姫の攻撃が収まった途端。レキはアルカンシェルを守るために、機晶姫に接近していく。
「ここはやらせないんだよ！」
　財天去私で、機晶姫を打ち飛ばしていく。
　同時に、レキもまた機晶姫の攻撃により傷ついていく。
　向かってくるのはほとんど同じ武器を装備した機晶姫。
　そして僅かにその中に、より人の形に近い機晶姫がいる。スナイパーのようだった。
「撃つぞ、離れろ！」
　ジュレールがそう声をあげる。
　レキが後方に飛んだ途端、機晶姫用レールガンの攻撃が敵機晶姫に直撃し、胸部を吹き飛ばした。
「崩れ落ちた壁も、バリケードに使うさ」
　荒神はジュレールの攻撃で破壊された瓦礫も集め、エネルギー室の前にバリケードを築いていく。
　ただ、即席であり、決して強固なものではない。機晶姫が突進してきたのなら、簡単に決壊してしまうだろう。
「まだ、来るのか……」
　倒した機晶姫の後ろから、新たな機晶姫の姿が現れる。
　更に。
　その人の形に近い機晶姫が向けてきたのは、機晶キャノンではなかった。
「みんな、備えて！」
　レキが声を上げて、ゴーレムに守らせる。
「撃たせない！」
　カレンは歴戦の魔術を。
「させんぞ！」
　ジュレールは、機晶姫用レールガンを撃って止めようとする。
　向けてきたのは、グレネードランチャーだった。
「ここを、離れるわけにはいかない……っ」
　レキはゴーレムと共に、バリケードの前に立つ。
「エネルギー室も天井も……破壊されるわけにはいかないアル」
　機晶姫が擲弾を発射した瞬間。
　光学迷彩で隠れていたチムチム・リー（ちむちむ・りー）が、機晶姫の手に上部からポイズンアローを撃ち込んだ。
　放たれた擲弾はレキの手前の床に落ち、爆発を起こす。
　床が損傷するが、穴までは開かなかった。
　先の戦いで、これより上層は吹っ飛んでしまったため、エネルギー室を守るのは勿論のこと、天井を破壊されるわけにもいかないのだ。
「大丈夫ですか？」
　退いたカムイがレキにヒールをかける。
「うん、大した怪我じゃないよ」
　ゴーレムに守られ、レキは軽傷だった。
　擲弾を放った機晶姫が下がり、次の機晶姫がチムチムのいる方向を機晶姫用レールガンで攻撃。
　チムチムや付近の契約者にダメージを与える。
　更にもう一体現れ、エネルギー室へと攻撃をしかけてくる。
「キリがないな……でも泣き言は言ってられないんだよな」
　機晶姫のコアの場所は分からないが、頭を潰せば稼働できないはずだ。
　荒神は最低限の攻撃で仕留められるよう、急所と思われる部分を狙っていく。
「……っ！」
　再び、グレネードランチャ―を構えた機晶姫が現れる。
「やるしか、ないな」
　荒神は一旦武器を捨てると、床を蹴って跳び、特技の武術で機晶姫の腕と、顔面を殴り飛ばし、後方へと跳ぶ。
　別の機晶姫からの攻撃により深い傷を負うが、擲弾の発射はひとまず止められた。
「どうみても、突破を優先してるよな。エネルギー室の制圧じゃなく、破壊することが目的か」
「そのようじゃな。例え降伏しても敵は攻撃をやめないじゃろう」
　荒神に近づいて、ミアが命のうねりをかける。
　荒神はリカーブボウを拾い上げて、バリケードを盾に遠距離攻撃に戻る。
「侵入を早く阻止しないと正直きついな……頼むぜみんな……」
　放たれた矢が機晶姫の首に直撃。頭が落ち、機能が停止する。
　その後ろから現れた機晶姫は機晶キャノンを発射しながら、駆け込んでくる。
「ここが先に落とされたら、他の場所の防衛にも支障が出るからね。敵もきっとそれが解ってて攻めてきてるんだっ！」
　カレンが天のいかづちを放つ。
「一機たちとも近づけさせん！」
　ジュレールが機晶姫用レールガンで弾き飛ばす。
　ドーン
　敵機晶姫が通路の壁を破壊し、空間を広げた。
　更なる銃口が、契約者達に向けられ、エネルギーがバリケードに雨のように降り注ぎ、バリケードの奥の皆をも傷つけた。
「これより先は、怪我を治してる暇も精神力の余裕もないかもな」
　ミアは命のうねりで仲間を回復した後、敵にブリザードを放った。
　敵の攻撃が一瞬弱まる。
「剣の花嫁の力を、エネルギーとして利用する装置が残っているのなら、僕はその覚悟もあります」
　仲間には聞こえないほどの小さな声で言って、カムイはバリケードから飛び出し、チェインスマイト。そして即座に、バリケードの裏に戻って自分をヒールで回復。
　精神力はもう尽きかけている。
「隠れている場所がなくなったアル。感情はなくても知能はあるアルね」
　チムチムもまた、光学迷彩で姿を見えにくくしたまま、バリケードの後ろに避難し、攻撃のチャンスを伺う。
　破壊しても、次々に現れる機晶姫は、じりじりとこちらに迫っている。
「何でボク達の邪魔をするんだよ！？」
　レキは機晶姫に問いかけてみた。
「マスターノ命令ニヨリ、ハカイ、スル」
　そんな言葉が返ってきた。
　レキは攻撃を一旦仲間に任せて、銃型ＨＣで状況の連絡を入れる。
　届いている情報は……厳しいものばかりだった。