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【創世の絆】超巨大イレイザーを討伐せよ!

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【創世の絆】超巨大イレイザーを討伐せよ!

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なななと一緒にイレイザーにGO

  一角で行われている破壊活動が、この場所には、ごごごご……という地響きとなって届いていた。
「誰かが派手にやってるみたいね」
 地響きのする方に目を向けて、リカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)がぽつりと呟いた。
「小暮君かな?」
 並んで歩いていた金元 ななな(かねもと・ななな)が慌てた様子できょろきょろする。
「いやあ、小暮を見付けたらみんなすぐに引き上げたいと思ってるだろうから、派手に戦うってことはないだろう。
 しかしさ、超生命体ともなるともう頭なんて飾りに過ぎないのかもしれないなぁ。
 ……ヘクトルさんも首切り落としても平気だったりして」
「……アホなことを言うではない」
 気楽な調子でアキラ・セイルーン(あきら・せいるーん)が軽口をたたき、ルシェイメア・フローズン(るしぇいめあ・ふろーずん)がベシっとその頭を叩く。どつき漫才をスルーして、リカインが生真面目な表情でなななに問いかけた。
「ところで、ななな君は今回何かきちんと考えはあるのかな?」
「……んっと……とにかく小暮君を助けなきゃって思って……」
なななが歯切れ悪くぼそぼそと返事をする。沈思黙考や論理的思考は、なななのもっとも不得意とする事項なのだ。リカインはため息をついた。
(このイレイザーを倒すにせよ、秀幸君を救出するにせよ、内部に突入することに変わりはないわけで……。
 そのためにも構造の把握や情報の共有化は必須。情報科であるななな君が音頭を取らなきゃなはずなんだけどね)
「ただ……危険はあると思うから……その……みんなで協力していかないとね?」
「行動指針をまだ持っていないなら、勢いで突入することは勧められないよ」
「わかってる……でも、助けなきゃ……このままじゃ……だから行かなくちゃ。
 そのためにも、皆さん情報についてや、なにかあれば……ご協力をお願いします!」
なななの頭はショート寸前。しかししどろもどろになりつつも、行くという意思だけははっきりしているらしい。リカインは少し考え込んだ。なななはそろそろ自分の肩書、立場、行動の指針などを。冷静に判断して行動出すべき時期にきている、とリカインは考えていた。もし無策のまま闇雲に突っ込むつもりなら、ただ静観しようと考えていたのである。逆にきちんとした指示があれば責任もってサポートに当たろうと考えていた。助けを求めてはいるものの、以前ほど独立独歩というわけでもない。大甘にみて、辛うじて及第か……。が、声に出してはこう言った。
「……護衛はするわ。何がいるかわからないしね」
「ま、なんとかなるでしょ。俺ら皆で一緒に小暮を探しに行こう」
アキラはけろりと言い放った。それまで黙っていた紫月 唯斗(しづき・ゆいと)が、重々しい口調で問いかける。
「……で、どこから行くんだ?」
「喉から入れたら普通に考えると胃にたどり着くだろ?
 イレイザーが普段なに食ってんだかわかんないけど、イレイザーが食べたものの残骸とかがあると思うんだよね。
 それをちょっと調べてみないか? うまくすればイレイザーの生態が少しは解明されるかもしれないし……」
唯斗の顔が激しく引きつった。以前入り込んだイレイザーの体内の寄生あるいは共生していた生物が出す毒ガスや、消化器官のとんでもない異臭、それに伴う仲間たちの冷淡な反応とが鮮明にフラッシュバックする。
「……悪いことは言わない。それだけはやめよう」
「どうしてじゃ?」
ルシェイメア・フローズンが無邪気に問う。
「強烈な異臭があるんだよ……あの臭いはもう嫌だ! 皆からの扱いが酷い上、脱臭がものすごく大変だったんだ!」
「そ、そうか……それは知らなかった……。別の進入口を探そうじゃないか」
青ざめ、震えながら力説する唯斗を見て、アキラは即座に提案を引っ込めた。
「そこまでひどいのか……」
「そ、そうね……体に染み付くほどの異臭って……」
ルシェイメア、リカインも身震いした。
「ともあれ……たぶん目印となるものがないじゃろうし、方向感覚も失いやすい。
 つまりは迷いやすいということじゃで、しっかりマッピングをせねばな。
 魔界コンパスにて方角の確認を怠らないようにし、いざとなれば即脱出できるようにしようぞ」
「即脱出は大事だな」
アキラがうんうんと頷いた。
「それなら、遺跡の方から行こうか……」
なななが妙におとなしい口調で言い、4人はまずイレイザーの背中の遺跡へと向かいかけた。そこに清泉 北都(いずみ・ほくと)リオン・ヴォルカン(りおん・う゛ぉるかん)クローラ・テレスコピウム(くろーら・てれすこぴうむ)セリオス・ヒューレー(せりおす・ひゅーれー)らと駆けつけてきた。
「おーい、ちょっと待って!」
ななならは足を止め、4人が追いつくのを待った。
「イレイザーの内部で小暮氏が消息を絶ってから時間も経っている。
 ゆえに彼を知る人……なななさんに小暮さんの話を聞こうと思って来たんだ」
「私にはグレーターヒールがありますし、光条兵器ならもし小暮さんが人質になっていた場合、敵だけ切れます。
 お役に立てるのではないかと」
北都の言葉に、リオンがあとを継ぐ。クローラがなななに向かって懸念の表情をかすかに浮かべて話しかける。。
「金元少尉は類まれなる第六感を有していると聞く。その力で俺達を小暮に導いてくれ。
 あいつは責任感強すぎるからな。心配でならん……」
「ど、どのくらい役立つかはわかりませんけど……がんばりますっ!」
「ヒールだけじゃ、体力の回復は仕切れないと思うんで、こいつを持ってきたぜ」
セリオスがアンパンを片手の上で弾ませる。
「気が利くなぁ。食べ物とは考え付かなかったよ」
アキラの言葉にセリオスはにやっと笑った。
「だろ? ……お茶も完備だぜ」
 以前の攻撃で千切れた触手が遺跡の建造物の残骸に絡みついている。リオンがだらりと下がった、牙つきの触手の傍を通るときにちょっとした感想を漏らす。
「動かないってわかってても、近くを通るのは躊躇しますね……」
「ちょっとした柱ほどもあるのう……」
ルシェイメアが頷いた。
 あたりは大量の砂でいっぱいだった。乾燥しておりひどくホコリっぽい。しばらく行くと損壊した建物の床下に大きな穴が開いており、床がナナメに垂れ下がっている箇所があった。アキラがLEDランタンにロープを付けて下ろし、中の様子を見る。穴はさほど深くなく、イレイザーの体内の床と思しきところまで傾斜路ができていた。床の強度に問題はなさそうだと見て、そこから一行はイレイザーの内部に下りてみることにした。中は乾燥しており、生物の体内という感じではない。むしろ黒い趣旨種子内部のような素材でできた古代の地下迷宮のようになっている。ひどく薄暗いが、何か光源があるのか真っ暗ではない。体組織っぽくないと解った唯斗は、目に見えて安堵していた。
「よし!さっさと核を目指そう! しかし……前に入った奴と違って生物的じゃないというか……。
 ……ナマっぽくなくて良かったけど」
ルシェイメアが随所で魔界コンパスを用いて方向を確認し、北都がHCのほか、万一を考え紙でのマッピング作業も行っている。クローラは小暮の携帯に連絡を取ってみたが、何の反応もない。
「テレパシーの反応はどうだ?」
セリオスは遺跡進入後から各所に触れてサイコメトリーでの小暮の存在の痕跡がないか調べたり、10分おきに小暮の意識にテレパシーでの接触を試行し続けていたが、ゆっくりと首を振った。
「今のとこ、こっちも何の反応もないな……」
「なななさん、なにか感じ取れませんか?」
リオンの言葉に、なななはうなだれた。
「なななにはぴぴっと来ない……」
彼女は感性タイプであり、小暮は論理タイプである。対極にある属性を持つ同士では、同調波は生じにくいだろう。感じ取るのも難しいかもしれない。リオンはそんな危惧を抱いた。